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2020/11/06
アスリートフードマイスターに聞く!~スポーツのための食事~ Vol.7 トライアスロン編 杉原有紀選手②

【流通経済大トライアスロン部の杉原有紀選手の食生活習慣をチェック~第2弾~】

今回、奥村(生産開発部研究開発グループ所属)がチェックするのは、流通経済大トライアスロン部に所属し、2019年日本学生トライアスロン選手権(インカレ)3位の実績を誇る杉原有紀選手(21)。彼女は5月にも食生活をチェックしており、今回が2度目になる。前回、奥村がアドバイスしたのは「練習と練習の合間のおにぎり+1個」と「緑黄色野菜の1品」の2点。その後、食生活習慣は実際にどのように変化したのか。経過を追った。

前回のアドバイスで食生活習慣は良化

まずはじめに、今回あらためて杉原選手に回答いただいたアンケートから、前回のアドバイスに基づき前向きに取り組まれていることがうかがえます。具体的には食事は1日の活動に合わせて補食とブランチを積極的に取り入れています。その中で、乳製品を食べる頻度は前回は週4~5日でしたが、今では週6~7日にまで食べる頻度を増やし、夜食を食べる頻度は前回は週2~3日でしたが、現在は週1日以下に減らすなど、食事への意識が高くなられています。杉原選手の1日のスケジュールは以下の通りです。

▽1日のスケジュール(練習内容・食事内容を含む)

さて今回は、新たに実施したアンケートで回答いただいた内容を踏まえ、杉原選手の現在の食生活習慣と前回のアドバイスとを照らし合わせながら、確認していきたいと思います。

「練習と練習の合間のおにぎり1個」のアドバイスに対して

前回のアドバイス時には、杉原選手はエネルギー源となる糖質が多く含まれるご飯、パン、麺などの摂取量が少なかったため、糖質の摂取量を増やすためにも、「練習の合間におにぎり1個を摂る」ことをお勧めしました。それに対して、現在は補食としてグレープフルーツやアセロラを追加し、糖質だけでなくビタミンCの摂取も意識されている点が素晴らしいと思いました。
杉原選手は練習時間が5時間と長く、疲労が蓄積しやすく、十分なエネルギー補給が重要になります。十分なエネルギー補給には最も重要なエネルギー源となる糖質の摂取が不可欠。前回のアドバイスで紹介した「国際的にコンセンサスが取れたアスリートの糖質摂取の推奨量※」では、継続時間が「中程度」、トレーニングの強度が「低い」場合、糖質量を体重1kgあたり5~7gを目安としているので、最低でも体重1kgあたり5gの糖質量の摂取を意識するようにお伝えしました。
上記、1日のスケジュールの食事記録から、糖質摂取量を推定算出したところ217.5g程で、目標の糖質量245gに対してあと27.5g程不足しています。そこで、午前中の練習時に、不足分の糖質量をスポーツドリンクで補うことをお勧めしたいと思います。杉原選手は朝食のバナナ1本でバイク練習を100分した後、補食を摂らずに続けてランの練習に取り組んでいます。つまり、ランの練習でエネルギー不足による疲れが懸念されます。そこで、バイクとランの練習の合間に糖質が4~6%含まれるスポーツドリンク約250mlを飲むことで、エネルギーを少し補給でき、ランの練習をさらに集中した状態で臨むことができると思います。強度の高いバイク練習は汗でミネラルも排出されてしまうので、スポーツドリンクを飲むことで糖分や水分と併せてミネラルも補給することができます。
また、ランの練習後も疲労回復のために早めに糖質を摂ることも重要なポイントです。ここでも同様に、スポーツドリンク250mlぐらいを飲むことが望ましいでしょう。練習前後でスポーツドリンク計500mlを飲むことで30gの糖質量を摂ることができ、目標の糖質量を補うことができます。
前回のアドバイスでは、食事の糖質の摂取量を増やす上で多く摂られているたんぱく質の量を調整するようお伝えしていましたが、今回の食事記録では推定で体重1kgあたり2gの量で調整できていました。引き続き、継続してみてください。

「普段のサラダに緑黄色野菜を1品プラス」のアドバイスに対して

前回のアドバイスで抗酸化作用のある緑黄色野菜を1品プラスするようアドバイスしていました。そこで今回の食事記録を見ると、ブランチや夕食でプチトマトを食べられていて、しっかり反映されていると思います。プチトマト以外にほうれん草、にんじん、ピーマン等の食材も栄養価が高いので、緑黄色野菜も幅広く摂られることをお勧めします。

毎日の体重測定

今回のアドバイスとしては、体重を測定されるのが週に数回でしたので、毎日体重測定されることをお勧めします。なぜなら、習慣的に摂取するエネルギーが適切かどうかを細かく確認することができるからです。体重の測定は1日1回、食事や脱水の影響を受けにくい夕食前や入浴前など毎日タイミングを揃えて測定することが良いでしょう。体重を測定して、良い状態でパフォーマンスを発揮できる適正な体重の範囲になるようコントロールしていきましょう。そして、これからも補食を取り入れた栄養バランスの取れた食事を続けていただきたいです。

 前回の奥村の2点のアドバイスを受け止め、しっかり実践していた杉原選手。そして2回目のチェック内容を、こう振り返った。「前回のアドバイスを参考に練習前の補食や補給を意識していたが、少し糖質量も不足していたことが分かったので、今後は練習前後の補給やスポーツ中にはゼリーやスポーツドリンクも活用し、引き続き緑黄色野菜やビタミンは積極的に摂取します。栄養相談のアドバイスを活用し、今後のレースに向けて頑張ていきます」。そう力強く語ってくれた杉原選手のパフォーマンスに、期待せずにはいられない。

※国際的にコンセンサスが取れたアスリートの糖質摂取の推奨量
(出典:L.M.Burke,et al. Carbohydrates for training and competition. Journal
of Sports Sciences, 2011;29(S1):S17-S27)

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