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やっとたどり着いた、日々努力 後編
2020/04/17

プロデビュー以来、5連勝と破竹の快進撃を続ける女子総合格闘家がいる。いまは亡き山本”KID”徳郁が開いたKRAZY BEEに所属する「あい」だ。

「痩せたい」「筋肉を削ぎ落としたい」
レスリングを引退したあいは、普通の女の子になることばかり考えていた。その一方でずっと体育会で過ごしてきた女子ならではの悩みも抱えていた。
「何もしなかったら、筋肉は脂肪に変わる。案の定、私も結構太ってしまい、ダイエットするのに結構時間がかかりました」

アマチュア総合格闘技で打撃に開眼

とはいえ、格闘技は全く縁が切れたわけではなく、数年後には非常勤でキッズレスリングのコーチをスタートさせた。
KRAZY BEEとの出会いは別の場所でコーチをしていたところで旧知の山本”KID”徳郁から「ウチでもキッズの指導をしてほしい」と頼まれたことがきっかけだった。
時を前後して、あいは周りに誘われるかたちで”日本アマチュア総合格闘技の老舗”アマチュア修斗に出場した。
練習環境は整っていなかったので、総合の練習は一切しない形での出場だった。
レスリングで培ったテイクダウンはホンモノ。全関東選手権を制した。
「ただ単に運が良かっただけだと思います」
初めて経験する打撃は新鮮だった。
「アマチュアは防具(ヘッドギアやスネパット)をつける。だから一発殴られてもタックルで倒してしまえばいいと思いました」
続く全日本選手権の決勝では予期せぬ攻防に遭遇してしまう。対戦相手のミドルキックをボディにもろに食らうと、息ができなくなってしまったのだ。
「あっ、ヤバい」と思った刹那、あいはタックルによって相手をテイクダウンさせ窮地を凌いだ。
「おかげで、お腹の痛みを悟られることはなかったと思います。その時の相手は空手出身だったので、あの時初めて打撃に対する恐怖心が芽生えました」

復帰を促したKIDの一言

その後、プロ昇格のかかったワンマッチも制したが、そのままプロになることはなかった。その代わりヨガのインストラクターとして生計を立てる道を選んだ。あいはKRAZY BEEからも一度離れた。
新しい仕事にようやく慣れてきた頃、あいはKIDから「格闘代理戦争に出てみないか」という誘いを受けた。格闘代理戦争とはインターネットテレビ『AbemaTV』の格闘チャンネルで放送されている日本初の格闘リアリティショーを指す。トーナメント形式による試合を通して、次世代スター候補を発掘しようとする画期的な番組だった。
一度は即座に断った。しかしもう一度KIDや・朴光哲・田村一聖・矢地祐介・ジムのスタッフから「KRAZY BEEの代表として出てほしい」と懇願されると、あいは承諾した。「ジムの皆さんにもお世話になっているので、KRAZYBEEのためにやってみようかなと」
1回戦は腕ひしぎ十字固めで一本勝ち。その勢いで準決勝では古瀬美月と対戦した。結果は古瀬の腕ひしぎ十字固めで、見込一本負け。
自らタップアウトはしていないので、レフェリーの判断による”見込み一本”負けというかたちになった。
「正直、試合が終わった直後はものすごく悔しい思いでした。しかしあの負けがあったからこそ今があるのかなと思っています」
この敗北によって、あいは一層真剣に総合格闘技と向き合うようになる。その直後、RIZINからプロデビュー戦のオファーを受けると、あいは快諾した。
「やらせてください」

デビュー以来、連戦連勝の理由

 プロデビュー戦は2018年12月31日、さいたまスーパーアリーナで行われた『RIZIN平成最後のやれんのか!』。アイドルと格闘家の二足の草鞋を履く川村虹花からマウントポジションを奪うとパウンドの連打で葬り去った。あいは「純粋にうれしかった」とプロ初陣を振り返る。
「相手が誰というより一回負けてどん底を見て結構落ち込んだけど、そこから大晦日に出場するチャンスを掴み、プロデビュー・プロ初勝利をかざることができたので」
2019年も白星を重ね、同年12月29日には山本美憂とも拳を交わしたアンディ・ウィンを相手に得意のテイクダウンで試合を優位に進め、2-1の判定勝利を飾った。2019年をあいは「負けなしで来ているのは出来すぎ」と振り返る。
「本当にまわりの先生のおかげ。中でも柔術コーチを務めてくさる(元UFCファイター・元フェザー級キング・オブ・パンクラシスト)田村一聖さんのアドバイスは試合中もよく聴こえる。それがなかったら、勝ち続けることはできなかったと思う」

アンディ・ウィン戦前にはケガが発覚していたので、試合後に手術をした。現在はリハビリ中。
そんな彼女にとってサン・クロレラは必要不可欠のサプリメントだ。
「以前から美憂ちゃんがとっていたので、私も何度かとったことがありました。毎日飲み始めたのは今年になってからですね。なんといってもサン・クロレラの色は緑。この色だけでも『絶対に体にいい!』と思いながら、プロティンやBCAAと一緒にとっています」
他の選手と比べると、総合への転向は遅かったが、あいは少しも後悔していない。

 「大学卒業後すぐに総合を始めていたら、たぶんそんなに練習をしなかったと思う。そのあと、紆余曲折を経てKRAZY BEEの代表として格闘代理戦争に出たからこそ、練習をしました。
復帰戦では、成長した姿を皆様に見せれるように試合をしたい」
座右の銘は「日々努力」。かつて所属していたキッズレスリングチームの標語だ。
「子供の頃努力していたかどうかはちょっと疑問だけど、いまは本当に努力しているので自分で言ってもいいのかなと(微笑)」
小さい体に強い心。あいは盟友・山本美憂とともに、日本女子格闘技界の柱になることができるか。復帰戦に注目だ!