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新しい伝説の序章 後編
2021/09/24

2019年、アメリカに次ぐバスケ大国スペインへ、わずか15歳で単身乗り込み、マドリッド州の強豪チーム「Zentro Basket Madrid(セントロ・バスケット・マドリード)」でバスケット武者修行を続けている岡田大河選手。彼は2年のシーズンを通じて、ヨーロッパで求められる質の高いプレーや高度な戦術を、文字通り肌で感じ、その身に刻みつけていった。わずか17歳の少年が異国の地で体感した濃密で高純度なバスケットライフ。日本はもちろん本場アメリカにもないスペインバスケならではの魅力や、彼に続けとこれから海外での武者修行をめざす少年たちへのアドバイス、勝負の年と位置付ける3rdシーズンへの抱負などを語ってもらった。(前編はこちら)

バスケIQの高い選手であることが成功の必須条件。

スペインでの2シーズンを経て、3年目のシーズンに向けた新たなプレーテーマとして掲げた「チームを勝たせ続けられる選手になる」。この目標を達成するために必要なスキルこそが、スペイン留学を志すきっかけとなった「バスケIQの高い選手」になることだった。この気づきは、彼が若くしてスペインでの挑戦を選んだことと、そこで辿ってきたプロセスが正しかったことを、言外に証明しているといっていいだろう。スペインでの実践と経験によって得た新たな視界が、日本にいては得られないと直感して飛び出した2年前の原風景とつながったのだから。では「バスケIQの高い選手」とは、いったいどんな選手のことを指すのだろう。

岡田大河「具体的なプレーでいえば、たとえばピックアンドロールのあと、自分がなにをすべきなのか?どこをケアして、どう動けばいいのか?味方はどこにいて自分にどんなプレーを要求しているのか?そうしたことを瞬時に判断して、正しくムーブできるスキルのことです。しかもそれは対戦チームのフォーメーションや相手選手の特長によっても異なりますし、選手交代ごとに逐一変化していきます。フィジカルで不利な日本人選手であれば、なおさらこうした高度な戦術理解とそれを実現できる精緻なプレー精度が求められるでしょう。連携の練度、ゲームの流れを読む勝負勘も必要になりますから」

それらを支えるのが『バスケIQ』、すなわち頭脳を駆使した『考えるバスケットボール』なのだ。スペインでは年少のカテゴリからすでに戦術を中心としたチームづくりがなされている。ゆえに結果を出している選手はみんな自分の頭で考える力が自然と身についている。とにかくゲームメイクがうまいのだ。

岡田大河「え?そこにパスを通すの?とびっくりするような意外性のあるプレーも、じつはちゃんと戦術的に理にかなっていることが、スペインのチームで2年間一緒にプレーしてわかってきました。それこそが日本にもアメリカにもない、スペインバスケならではの魅力でもありますしね」

勝負を決める局面で仕事ができる選手であるために。

バスケIQ以外の面でも、スペインで過ごした2年間のタフなシーズンによって、岡田大河選手は確実に進化を続けている。フィジカルトレーニングも強化し、スペインに来た当時と比べて身長は5cm以上伸び、体重も10kg増えた。また、ポイントガードとしての自身の最大の武器だと位置付けるシュート力も、誰にも負けない練習量を誇る個人練習のなかで磨いてきた。なぜシュート力が必要なのか?理由は彼のようにフィジカル面で不利な選手でシュート力がない場合、相手はスペースを取ってディフェンスができるので守りやすくなる。逆にシュート力があれば相手はシュートディフェンスのために距離を詰めざるを得なくなり、揺さぶりをかけやすくなるのだ。また精神面での成長も著しい。日本にいた頃は、ミスをしたときの悔しさや失望の感情を顔に出したりボディアクションで表現したりしてしまうことが多く見られた。しかしこの2年の間にそうした負の感情をすぐにリセットし、次のプレーに集中できるようになったという。15歳での単身海外留学、ハイレベルなリーグでのハードワーク、さまざまな国から集まったグローバルな友人たちとの寮生活、そして日本とは比較にならない過酷さをきわめたスペインでのコロナ禍。ふつうの高校生では経験し得ないようなタフな状況が、彼をあらゆる面で強くしていったのだろう。それでも彼は浮ついたりせず、地に足つけ、足元の目標を一歩一歩、着実に歩もうとしている。

岡田大河「もちろんいずれはスペインリーグはじめ、プロとしてヨーロッパのリーグやNBAでプレーしたいという夢はあります。でもいまはまず与えられているステージで与えられた役割をきちんと果たし、結果を出すことしか考えていません」

そのためにもチームを勝たせることができる選手になること。まずはそれに向かって必要なスキルの習得やバスケIQの向上をめざして練習やトレーニングを続けていこうと、日々取り組んでいる。それに彼はまだ17歳で発展途上にある。スペインに来たことで周りを生かすプレーも学び、自身のプレースタイルもスペインに来たことで少しずつ変化してきたと感じているという。そのうえで「大事な局面で確実に点を取る」という彼がもっとも大事にしている信念だけは決して曲げない。自身の個性や独自性を活かしつつ、スペインで学べるところは学び、貪欲に取り込んでいく。そのふたつを融合してバランスを取りながらトータルで成長していくことができれば、彼が欧州でスポットライトを浴びる日が来ることになんら疑いの余地はない。

ローティーンでの海外挑戦という新機軸の開拓者。

かつて田臥勇太というパイオニアがいた。彼は身体の小さい日本人でもスピードとテクニックでNBAの舞台に立てることを証明してくれた。時を経た現在、NBAのトップ選手相手にフィジカルでも決して負けない八村塁や渡邊雄太というスタープレーヤーが登場した。そしてその成功に続くのが、近い将来、日本のバスケットボール界に新しいタイプのサクセスストーリー誕生の予感に満ちたフューチャーヒーロー、岡田大河選手である。彼は、日本の高校バスケというステージを経ずに海外へと挑戦し、ヨーロッパや本場NBAで結果を出すという、これまでになかったキャリアに先鞭をつける偉大なゲームチェンジャーとして日本のバスケットボール史に、長くその名が刻まれることになるかもしれないのだ。

岡田大河「いま13歳〜15歳の子たちにも今後どんどんスペインに限らず海外に出ていって挑戦していってほしいなと思います。ぼくにだってやれたのだから、きっとできると思います。海外で成功するためには、もし八村塁選手や渡邊雄太選手のようにフィジカルも強く身体能力も高い選手であれば、アウトサイドもインサイドもできてチームのために尽くすことが求められると思います。逆にぼくのように小柄な選手なら、さっきも話した高いバスケットIQが必要になってくるでしょう。もちろんいまでは日本でも高度な技術を身につけることはじゅうぶん可能です。でもそれを達成するには私生活を含めてきちんと自己管理をする必要があるでしょう。やはり知り合いもいない、言葉も通じない、文化も異なるという環境に身を置くことで、視野も広がると同時にバスケに集中できるので、そうしたスキルもより早く習得できるんじゃないかと、自分の経験からは感じています」

いずれにせよ、つねに試合のシチュエーションを想定した練習をしておくということ。バスケットボールというゲームは結局のところチームが点を取って勝つことが目的であるがゆえに、勝つために必要なプレーをつねに正しく選択できれば、チームにとって欠かせない選手になれるというわけである。

さあ、いよいよ新シーズンが始まる。日本中のバスケファンや関係者が、その一挙手一投足に目を凝らすことになるだろう。なぜなら、彼自身のステップアップがそのまま日本バスケ成長のバロメータでもあり、彼が開拓するフィールドの大きさが日本バスケの裾野拡大にも直結しているからだ。高鳴る期待とひそやかな鼓動に満ちた、岡田大河17歳の3rdシーズン。次世代スター覚醒の瞬間を見逃すな。(※2021年9月20日スペインリーグ4部EBAにてプロデビューを果たした。)