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Vol.63
バレーボールの伝道師
イタリア挑戦を経て強さを増した髙橋藍、バレーボール界の未来へ向けて

髙橋藍
バレーボールプレーヤー/日本体育大学

バレーボールの伝道師 前編
2023/07/19

18歳で日本代表デビューを鮮烈に飾った髙橋藍。東京五輪を終えた21年12月からイタリアセリエAへ渡り、22/23シーズンは開幕からほぼすべての試合に出場を果たすほどの飛躍を遂げた。
得意の守備力に加え、世界の猛者たちとの戦いで磨かれた攻撃力。加えて、誰とでも打ち解けるコミュニケーション力という武器。日本国内のみならず、アジア圏やイタリアでも高い人気を誇る髙橋は「自分を通してバレーボールを知ってもらえたら嬉しい」「夢を与える存在でありたい」と常に未来を見据えている。
楽しさ、面白さを伝えるいわば伝道師として――。
地道な日々の積み重ねで強靭な身体をつくり、技を磨く。すべては、バレーボールのために。

イタリアでの2シーズンで得られた自信

現役大学生でありながら、主戦場はイタリア。

男子バレー日本代表、髙橋藍は世界最高峰リーグ、イタリアセリエAのパドヴァに2シーズン在籍した。

日本ではバレーボール選手の大半が、高校や大学を卒業してから日本のVリーグや海外リーグに所属するチームに進む。いわば髙橋の選択は“前代未聞”と言うべき挑戦だが、過酷な道を選んだ確固たる理由がある。

日本代表でプレーして、世界を相手にする中で自分に足りないものがよくわかりました。東京オリンピックを終えて、パリまで3年。限られた時間の中で自分を高めるために、より高いレベルの中で戦いたいと思うのは自然な流れで、自分がレベルアップできれば日本のレベルも上がる。今チャレンジすることが必要だと思って、世界へ飛び込もうと決めました」

2020年1月に開催された春高バレーで優勝、同年に日本代表登録選手に名を連ねた。小学生の頃にはリベロも担っていたという守備力を評価され、当初は主にレシーブへの期待が高かったが、レシーブからスピードのある攻撃を武器に出場機会を増やす。五輪の一年延期も髙橋には好機となり、攻守のバランスに長けたアウトサイドヒッターとしてポジションをつかみとり、21年の東京五輪に出場、29年ぶりのベスト8進出に貢献した。

19歳で遂げた飛躍、人気も知名度も一気に爆発したのだが、髙橋が見る世界はもっと先。さらなる成長を誓い、イタリアへの挑戦を決め、昨季は10月の開幕から5月の閉幕まで、1シーズンをイタリアで戦い切った。

「最初にイタリアへ来た時(21年)は途中からチームに合流したので、ポジション争いを繰り広げるところまでいくこと自体が難しかったというのが現実でした。だからこそ『次は絶対にスタートから行きたい』と思っていて、実際に最初から最後まで戦い切れた。自分の中でも自信がつきました」

最初の挑戦となった21/22シーズンは攻撃力向上など、掲げる課題は自らに向けたものだったが、2年目の昨季はさらに広がった。

「日本代表でも、今までは最年少ということもあり、引っ張ってもらう立場でした。でもパドヴァでシーズンを通して出続けられたこと、世界を舞台に戦ってきた自信がついたし、チームの軸として戦い切れた自信もあります。それはまさに日本代表でも求められていることなので、パドヴァで経験できたこと、成長できたことで1ステップ上がることができたんじゃないかな、と思っています」

コミュニケーション力に磨きをかけた語学の進化

軸になる、と言ってもイタリアリーグには世界各国から選手が集い、当然ながら飛び交う言語は違う。メインはイタリア語ではあるが、英語やスペイン語、言語の異なる選手たちと意思疎通を図るべく、特に意識したというのがコミュニケーションだ。

男女を問わず「人見知り」を自負する選手が多い日本のバレーボール界だが、髙橋はまさにその真逆。むしろ積極的に周囲を話すことを得意とする、いわば“コミュニケーションの達人”でもある。通常ならばストレスがかかるであろう異国での生活も、自分のホームに近づけるべく、周囲とのコミュニケーションを図る手段としてまず学んだのが英語だ。

アプリを用いて1日5分でも必ず英語に触れる機会をつくり、覚えた単語やフレーズは実際の会話でアウトプットする。学んだことを即座に活かせる環境で、みるみるうちに語学力も上達したという。

去年と比べて、英語力はかなり上がったと思います。たとえば代表でも(フィリップ)ブラン監督と話をする時も、去年は単語を並べて話すしかできなかったけれど、今年は話せる単語のレパートリーも増えたし、語学力自体も伸びたのでストレスなく話せるようになった。今はイタリア語も勉強し始めて、まだまだ難しいですけど監督や選手の話もちょっとずつわかることが増えてきたので、そこも少し成長できたのかな、と思いますね」

バレーボールのみならず、語学力も飛躍的な成長を遂げる。毎日重ねる勉強の成果と聞けば、さぞ勉学も得意なのだろうと思いきや、「基本的には好きではない」と苦笑いを浮かべる。

「興味があるものには集中するけれど、苦手なものは後回し(笑)。小学生の頃は真逆で、夏休みの宿題も(夏休みが)始まってすぐ終わらせるタイプだったんですけど、今は全く違います。むしろ極度のめんどくさがりです(笑)。勉強するのも同じで、英語は嫌いではなかったですけど、学生時代はテストのためだけに勉強していたので、毎日勉強するどころか、テスト前日に一夜漬けで点数だけ取る。おかげで一夜漬けは得意ですけど(笑)、そのせいで全く知識としては備わっていなかったことをイタリアで実感しました」

必要に応じての努力は苦としない。その成果がチームメイトとの英語での流暢な会話であり、現地のサポーターとも英語とイタリア語を織り交ぜながらコミュニケーションを図る。

「“自分の中でランは最高の選手だ”と言って下さる方もいて、素直に嬉しいです。子どもから大人まで、年齢や性別を問わずにいろいろな方が来て下さるし、日本やアジア圏から来て下さる方もいる。自分も子どもの頃に『こんなすごい場所に立てるような選手になりたい』という憧れがあったし、サインをもらった時も憧れの人が目の前にいる、という緊張感、高揚感を今でも覚えています。だからできる限り1人1人、丁寧に対応したいし自分も夢を与えられるような存在になりたいと思っています」

夢を与える存在になる――。

今だけでなく、髙橋藍の視界には未来の世界へとつながる、大きな夢が含まれている。