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Vol.85
雨のち、快晴。
苦しんだシーズンがもたらした新たな境地へ。背水の陣で挑む世界一のフットサル選手への再挑戦。

原田快
フットサルプレーヤー/FCサンタ・コロマ

苦しんだシーズンがもたらした新たな境地へ。背水の陣で挑む世界一のフットサル選手への再挑戦。前編
2025/10/03

2023年夏、原田快選手はFCバルセロナと契約。ファーストシーズンはBチームで5ゴール15アシストの活躍を見せると、翌年のシーズンではなんとトップチームデビューを果たし、日本のフットボール界を驚かせた。しかしトップチームでの出場時間は短く、コンスタントに出場できるほうが良いのではないかというエージェントの勧めもあって、昨年はショタFSにレンタル移籍。だがここでも彼が思うような結果が出せず、さらなる出場機会を求め、来季からは新天地FCサンタ・コロマへの移籍が決まっている。

この2年ほど彼にとって苦しい時期が続いているなかで迎える2025-2026シーズン。どのような思いで、どんな目標を掲げて進んでいこうとしているのか?いま現在の原田快の心境を、できるだけ率直に語ってもらった。

試合に出られないもどかしさに苦しんだシーズンを振り返って。

「想定外」。それが原田快選手にとっての昨シーズンの印象だった。出場機会を求めて移籍したはずのショタFS。しかしそこで待っていたのは、意外にも試合に出られないもどかしさだった。理由は監督からの信頼をじゅうぶんに得られなかったことにある。彼はそう分析していた。そしてその原因は、彼のスペイン語の拙さによるコミュニケーションの問題ではないかというのだ。しかし、彼はすでに3年間スペインでプレーをしてきており、基本的な会話はできる。FCバルセロナ時代を含めて、これまでのスペインでの経験で、スペイン語やコミュニケーションが問題となったことはいちどもなかったのだ。おそらくすべての選手に戦術を緻密に徹底させたい監督にとって、彼のスペイン語が物足りないと感じたのかもしれない。原田快選手は「あくまで今季のチームの監督の個性」だと語った。

原田「たとえば前の試合ですごく調子が良くて結果も出しているにもかかわらず、次の試合でのプレータイムがすごく短いということが何度かありました。前の試合で調子が悪かったり、チームとの連携がうまくいってなかったのならわかるんですよ。あるいは自分はディフェンスがあまり上手なほうではないので、大事な試合で終盤まで勝っている展開であれば、得点よりも失点しないことを優先することになるので、ぼくみたいなタイプの選手が出られないというのも理解できます。でも自分の調子が良くて、しかも負けていて得点が求められる展開であるにもかかわらず、なぜか出してもらえないゲームがあるのは納得できなかったですね。その前の年もFCバルセロナのトップチームでプレーさせてもらっていたわけなので、実力が足りないということではないはずなんですよ。だからぼくとしてはぜんぜんやれると思っていたんですけど…」

ともかくチームとしては5年ぶりのプレーオフ進出も決め、シーズン前の目標を達成できたものの、彼個人としては不満の残る悔しいシーズンになってしまったといっていいだろう。しかし彼はそうした苦しい環境のなかでも、自分のストロングポイントに目を向け、ポジティブな点も多くあったシーズンではあったと語る。とくに短い時間でもゴールに直結するプレーができたとの自己評価をしている。とにかく「1シーズンでも早くバルサに戻る」という彼自身の目標のためには、下を向いているわけにはいかないのだ。

苦手なシステムへの対応や、課題のディフェンス強化はできた。

では、それほどの苦境の中で見出した彼のポジティブな点はどこにあったのか。それはいまのチームで初めて経験した「クアトロ」と呼ばれるシステムに適応できたことだという。クアトロというのは4人全員でテンポよくパスを回しながら抜いていく戦術のこと。これまで原田選手はひとりトップを置く「3対1」のシステムを採用するチームでしかプレーしたことがなく、彼自身もそのシステムでのプレーを得意としていた。しかしショタFSではクアトロを採用していたため、最初はそのシステムに慣れるのに苦労したという。それでも試合を重ねるごとに徐々に順応し、自分のものにできたのは収穫だったと振り返る。

原田「一昨年までFCバルセロナでプレーしていたので、スペイン一部のスピードやテクニック、戦術などに対する順応はじゅうぶんできていたという自信は持っています。とくにクアトロでやれたことで、どのチームに行っても、どんな監督の戦術でも対応できるようになったとは思いますね」

またかねてより課題であったディフェンス面での手応えも感じている。これまでプレスが甘く、かんたんに抜かれてしまうことがあった。その課題を克服するため、相手より先に前に入るためのステップワークの練習に取り組んだほか、手を使ってプレスする技を習得したという。

原田「コーチなどから『もっと手で押しにいけ』と言われました。とにかくファールを恐れずに、まずは自分の手が相手の胸やお腹をさわれるくらいのポジションまで寄せろと。もちろんオフェンスでも手は使うんですけど、オフェンスは横から寄せて来るディフェンダーを手で押さえる『横』を意識した使い方が必要です。いっぽうでディフェンスの場合は正面からくる選手をまっすぐ押し返す『縦』の力が必要になります。それを意識してなんども練習しました」

手を使って相手を強く押し返す練習を重ねたことによって、結果的に速くて強い寄せを意識することにもつながったという。大きな外国人に対して、フィジカルでは負けていたとしても、スピードでは負けない自信があった。だから彼のオフェンスでのストロングポイントであるスピードをディフェンス面でも活かすことにしたのだ。一歩でも先に相手より有利なポジションに入りこみ、手を使って強く押すことで有利な体制に持ち込み、相手に自由にさせないディフェンスを習得。この成果は、もしかしたら順風満帆とはいかなかった苦しいシーズンのなかで、もがき、悩んだからこそ得られたものかもしれない。

コミュニケーションの問題で苦しんだシーズンだったが、もともと言葉の壁を感じたことはこれまでもなかった。試行錯誤したことで逆にプレーの幅は広がったし、どんな戦術であっても柔軟に対処することができるようになった。それに、どんなチームであれ、どんな監督であれ、圧倒的な結果を出すことでこのチームにいちばん必要なのは原田快だと認めさせることができれば、自ずとみんなが自分に合わせてくれるようになるはずだ。プレーで認めさせる。それ以上に雄弁な言葉はないのだから。

そして、新しいシーズンにふさわしい「ニュー原田快」がスペイン一部リーグで再ブレイクすることで、日本代表で彼が活躍する機会も自ずと増えることだろう。海外のトップリーグで躍動する彼の力が、まだまだ日本代表に必要であることに疑いはない。来季の彼の活躍に、注目していきたい。