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2022/03/23
アスリートフードマイスターに聞く!Vol.17バスケットボール編 今村 怜 選手

【アスリートフードマイスターに聞く!Vol.17バスケットボール編 今村 怜 選手】

ストリートが源流となっている3人制バスケットボール、通称「3×3(スリーエックススリー)」。2021年東京五輪の正式種目に採用され、現在世界中で人気が拡大している新興スポーツだ。今回チェックする今村怜選手(24)は京都に本拠地を置く3×3プロチーム「KYOTO BB.EXE」のメンバーとして活躍し、2021年12月、海外挑戦を理由に退団した。もともと熊本県内の高校を卒業後、バスケ留学でアメリカの大学に進学したキャリアをもち、現在は海外でプロとして活動することを目指し、日本でトレーニングを続けている。奥村(生産開発部研究開発グループ所属)は今回、今村選手の食事内容から「緑色の食品」に着目し、疲労回復などに効果がある栄養素の摂り方についてアドバイスを送った。

1日の食事記録をチェックする

はじめに、回答いただいたアンケート結果を整理します。今村選手の身体測定値は身長165㌢、体重54㌔(空腹時)。トレーニング頻度は週4~5日。食生活習慣は牛乳・乳製品をほぼ毎日摂っており、揚げ物は週4~5日で食べています。また、1日のうち野菜や果物はほぼ摂っていません。1日の食事・活動記録は以下の通りです。

「栄養バランスのとれた食事」がなぜ必要なのか

仕事と練習の両立で忙しい毎日を送りながらコンディションを維持するためには、しっかり睡眠を取って休養し、栄養バランスのとれた食事を心掛けることが重要です。ではそもそも、「栄養バランスのとれた食事」がなぜ大切なのでしょうか。
健康な体というものは食事から必要な栄養素を摂り入れなければ維持できません。その栄養素は働きごとによって大きく3つに分類され、「体を動かすエネルギーとなるもの」「筋肉や血液などの体の材料となるもの」「体の調子を整えてくれるもの」があります。
この3つの働きを持つ食品はそれぞれ「黄色」、「赤色」、「緑色」の食品と3色に分けて考えられています。



体を動かすエネルギーとなる「黄色」には、ごはんやパン、麺、いもなどの炭水化物を多く含む食品や、油やバターなどの脂質を多く含む食品が含まれます。また、筋肉や血液などの体の材料となる「赤色」には肉や魚、卵、大豆製品などのたんぱく質を多く含む食品や、牛乳・乳製品などのカルシウムを多く含む食品が挙げられます。最後に野菜、果物、きのこなどのビタミン、ミネラルを多く含む食品が、体の調子を整えてくれる「緑色」に当てはまります。

以上の3つの色がそろっている食事が、いわゆる「栄養バランスのとれた食事」と言えるのです。それぞれ1日に摂る量の目安としては、1日の摂取エネルギーが2,200±200kcalの場合、主食のごはん(中盛り)を4杯程度、主菜の肉・魚・卵・大豆料理から3皿程度、副菜の野菜料理を小鉢5皿程度、牛乳・乳製品の牛乳瓶200ml、果物のみかんを2個程度とされています。(参考:農林水産省「食事バランスガイド」より)

摂取量が少なかった「緑色」の食品

「黄色」「赤色」「緑色」から構成されている栄養バランスのとれた食事の観点から、今村選手の1日の食事を見ると野菜や果物を含む「緑色」の食品が少ないです。また、アンケートにあった<自覚している問題点>の項目にも「自宅での食事では野菜がほとんど摂れていない」と回答していました。今回摂取が少なかった「緑色」の食品は、「黄色」と「赤色」の食品と一緒に働き、体の機能を正常に維持するために必須です。摂取が足りないと「疲れを感じやすい」、「風邪を引きやすい」、「肌が荒れる」といった不調につながる恐れがあります。朝昼晩で食べることが大切な一方で、忙しくてなかなかカバーできない実情もあるかと思います。そこで今回は「緑色」の食品の手軽な摂り方について紹介します。


【朝食(左)】おにぎり2個、ヨーグルト、カフェラテ 【昼食(中)】弁当、インスタントのカップスープ【夕食(右)】ミートソースパスタ


「緑色」の食品の手軽な摂り方

まず、比較的手間が掛からないものとして、洗うだけで食べることができるミニトマトや下処理の必要がないカット野菜や冷凍野菜、野菜の惣菜などがあります。カット野菜はキャベツやにんじん、レタスなどがありますが、サラダとして生で食べるだけでなく、炒め物の具材にも使うことができます。冷凍野菜はブロッコリー、ほうれん草、かぼちゃなどがあり、レンジで解凍してそのまま食べることができるほか、汁物の具材としても使うことができます。惣菜を選ぶ場合は、きんぴらごぼう、筑前煮、野菜豆、ひじきなどがあります。

野菜にはキャベツやレタス、白菜、玉ねぎなどの淡色野菜と、ミニトマトやブロッコリー、ほうれん草、にんじんなどの緑黄色野菜があり、それぞれの栄養価に特長があります。淡色野菜は色の薄い野菜と言われ、水分や食物繊維が多く含まれます。緑黄色野菜は色の濃い野菜と言われ、抗酸化成分のβカロテンやビタミンCを多く含み、疲労の原因となる物質を軽減してくれる効果が期待できます。どちらか一方だけでなく両方を食べるように心掛けてほしいです。

果物の手軽な摂り方については、みかんやバナナ、冷凍フルーツやカットフルーツなどをお勧めします。みかんやバナナはビタミン、ミネラルだけでなく、エネルギーとなる炭水化物(糖質)を摂ることができる果物なので、練習前後の補食や間食に適しているのです。冷凍フルーツはブルーベリーやいちご、マンゴーなどがありますが、ヨーグルトに入れると美味しく食べることができます。

食事メニューの改善

ここまでの内容を踏まえて、実際に今村選手の食事メニューをどのように改善すれば良いのかを考えていきます。

まず朝食についてですが、たんぱく質とカルシウムが摂れる牛乳とヨーグルトを選んでいるのは良いと思いました。「緑色」の食品が摂れていないので、このヨーグルトに冷凍フルーツのいちごを加えると栄養バランスが良くなります。

さらに余裕があれば、おにぎりに冷凍野菜のブロッコリー小房3個ほどを付け合わせても良いと思います。朝食時にたんぱく質をしっかり摂ることで筋肉の維持・増加につながるとされているため、おにぎりに鮭フレークや鶏肉、ツナなどのたんぱく質を多く含む食品の具材を選ぶよう意識してみてください。

昼食については、野菜の入ったメニューの弁当を選んでいるのは素晴らしいです。ただ、野菜の量は少ないので、きんぴらごぼうや野菜豆などの惣菜をプラスすると良いです。惣菜を食べる気分でない場合はみかんや野菜ジュースをつけることが効果的です。

夕食においても、「緑色」の食品がないためサラダをつけましょう。例えばキャベツやにんじんのカット野菜にプチトマトを3個つけるだけでも良いです。たんぱく質を多く含む食品はミートソースに少し入っているかもしれませんが量は少ないので、ゆで卵やチキンなどをサラダにプラスすることもお勧めです。

夜9時を過ぎる夕食について 

仕事後にトレーニングを実施しているため、夕食のタイミングが夜9時を過ぎていることが気になります。基本的には良質な睡眠を取るために、夜9時までには食事を終わらせたいところです。ただ、どうしてもスケジュール的に厳しいこともあると思いますので、その場合は夜9時以降に食べる食事の量を分ける必要があります。

食事の量を分ける理由としては、普段の食事量を寝るまでの近い時間に食べてしまうと、胃腸に負担を掛けてしまい眠りが浅くなる恐れがあります。夕食はほぼ麺類を食べていますが、夜9時以降に食べる麺の量を少し減らして、代わりに夜のランニング・トレーニングを始める1時間前におにぎりやサンドイッチなどの補食を食べることをお勧めします。

もちろん、ただ単純に夜9時以降に食べる食事量を減らすと体を維持するのに必要なエネルギーが確保できず、疲れなどの体調不良の原因となってしまいます。そのため減らした分を補食で調整するようにしてください。

一般的には運動前後で補食を食べることを推奨されますが、運動前に補食を食べることで運動中にエネルギー不足で動けなくなることを防ぐことができます。運動前の補食は消化の良いエネルギー源となる炭水化物(糖質)を多く含むおにぎりやサンドイッチ、ゼリー、脂肪の少ない和菓子などが適しています。ただ、ゼリー以外の食品は運動直前に食べると消化不良で動きづらさを感じてしまう可能性もあるので、運動開始1時間前ぐらいに食べることが望ましいです。


コンディション維持に欠かせない3色がそろった食事のなかでも「緑色」の食品の摂り方についてアドバイスを受けた今村選手。自身の食生活習慣を見つめ直し、「黄色」の食品が多いと自覚し、少しずつ「赤色」の食品と「緑色」の食品を摂るようになったという。「カット野菜なども有効に使えるようになり朝のブロッコリーも習慣になってきている」と順調に改善を図っている。現在はコロナ禍の影響により海外挑戦を見送らせている状況だが、「アメリカで生活していた大学時代は、なかなか意識できなかった食事の栄養バランスをしっかり意識しつつ、これからの海外挑戦に生かしていきたい」とモチベーションは下がらない。目標である「海外での優勝リング獲得」に向けて情熱を燃やし、今は雌伏の時を過ごす。

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