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2022/11/30
アスリートフードマイスターに聞く!Vol.20バスケットボール編 岡田麻央選手

【アスリートフードマイスターに聞く!Vol.20バスケットボール編 岡田麻央選手】

今回は、3人制のバスケットボール「3×3」(スリーエックススリー)のプレーヤーとして活躍する岡田麻央選手(33)にスポットライトを当てる。バスケットボール女子日本リーグ(WJBL)でトヨタ紡織サンシャインラビッツの中心選手として活躍し、2015年に現役を引退。2018年に「3×3」の選手として現役復帰すると、『3×3 JAPAN TOUR 2021 EXTREME』のシーズンチャンピオンを決めるFINALでは頂点をつかみ、自身も大会MVPに選ばれた。競技と仕事の両立を図りながら今後さらなるステップアップを期する岡田選手に、管理栄養士とアスリートフードマイスター1級の資格をもつ奥村(生産開発部研究開発グループ所属)は、主食、主菜、副菜のバランスなどについてアドバイスを送った。

1日の食事記録をチェック

 はじめに、回答いただいたアンケート結果を整理します。岡田選手の身体測定値は身長165.5㌢、体重56㌔(空腹時)。トレーニング頻度は週4~5日。1日の野菜摂取量は小鉢2~3杯で、果物を食べる頻度は週1日以下です。練習は19時から21時半ごろにあり、夕食は練習が終わってから食べ、かつ21時以降になる夜食(おにぎり)を摂る頻度が週4~5日とのことでした。岡田選手自身が感じている問題点として「練習が夜なので時間が遅くなる」「添加物がなく栄養のあるものを食べたい」といった内容を挙げています。一日の食事・活動記録は次の通りで、今回はこれらの情報を総合的にチェックしてアドバイスをしたいと思います。

主食、主菜、副菜がそろったバランスの良い食事

日々の食事において重要なのは、「主食」「主菜」「副菜」をきちんと食べることです。この3品を意識すると自然に栄養バランスが整いやすいとされています。
主食とは、エネルギーのもとになるもので、米、パン、うどん、そば、スパゲティーなど、炭水化物を主に含むものが挙げられます。次に主菜とは、体をつくるもとになるものです。筋肉の材料となるたんぱく質を主に含む肉、魚、卵、大豆製品などがあります。最後の副菜は、体の調子を整えるもので、ビタミンやミネラルを主に含む野菜、きのこ、いも、海藻などがあります。
これを踏まえたうえで、岡田選手の3食の内容をみていきます。

左:昼食、右:夕食

競技と仕事の両立で忙しい日々を送っている岡田選手ですが、主食、主菜、副菜の3品は毎食欠かさず摂ることができています。
主食はご飯やパン、スパゲティーがあり、主菜はかまぼこやささみ、肉団子、白身魚フライ、卵、焼き鳥、冷奴と肉、魚、卵、大豆製品からまんべんなく摂れています。副菜に関しても、ごぼう、もやし、キャベツ、人参、大根、レタス、ブロッコリーなどの野菜や、しめじなどのきのこ類、ひじきなどの海藻類を食べていてます。弁当や外食では野菜が少なくなりがちですが、野菜が入った味噌汁やサラダをプラスしているのはとても良いと思います。
また、夜遅くまでトレーニングをしていることから、適宜間食も摂っています。岡田選手は毎日体重を測定しているので、一日の食事量が適切かどうかこまめにチェックしていると思います。念のため、今回の食事記録からエネルギー計算した結果、一日の活動に必要なエネルギーは適切でした。

“色”が偏らないよう野菜を食べる

野菜は体の調子を整えるビタミン、ミネラル、腸内環境を整える食物繊維が含まれるのが特徴です。また、その特徴は野菜の色である程度判別することができます。
例えばほうれん草やブロッコリー、ピーマン、トマト、にんじん、かぼちゃなどの「色が濃い」と言われる緑黄色野菜はβカロテンやビタミンCといった抗酸化物質を多く含み、疲労の原因となる物質を軽減する効果が期待できます。また、キャベツ、レタス、ごぼう、もやし、大根などの「色が薄い」と言われる淡色野菜は水分や食物繊維を多く含み、腸内環境を整える効果が期待できます。
健康的な生活を送るために厚労省が推奨している野菜の摂取量は1日350gで、その内訳は緑黄色野菜120g、淡色野菜230gです。これを献立で考えると、野菜料理や具だくさんの味噌汁、お浸し、煮物やサラダなどの小鉢1杯の野菜料理で約70gを摂ることができるとして、小鉢5杯の野菜料理が目安とされています。もちろん、この小鉢5杯は淡色野菜、緑黄色野菜に偏らず、食べることをお勧めします。
忙しくて時間がない岡田選手の場合、冷凍野菜のブロッコリーやほうれん草、ミニトマトなど下処理の手間がなく、比較的簡単に食べられる野菜を常備していると良いと思います。

練習前に食べる補食

岡田選手は15時ごろに間食しています。練習前に空腹でなければ追加する必要はありませんが、もし小腹が空いたと感じる場合はエネルギー源である糖質を多く含む食品を補食としてプラスしても良いと思います。なお運動前に補食を食べることは大切ですが、運動前に食べ過ぎてしまうと練習中動きづらくなってしまうため、食べる時間やメニューには注意が必要です。
例えば、運動30分前の補食にはすばやく消化される液体系のスポーツドリンクやゼリー飲料が推奨されています。このほか運動1時間前であれば、おにぎりやあんぱん、カステラなどの脂質の少ない和菓子がお勧めです。この場合、摂取量は1個ぐらいが適切です。夜の練習が19時半からあるので、次に説明する21時以降になる夕食のことを考えると、練習2時間前に軽く食事を済ませるのが理想的です。ただ、スケジュールの都合で軽く食事を摂ることが難しい場合は補食を活用してください。

まずは22時までに食事を済ませる

岡田選手が自覚している問題点として「練習が夜なので時間が遅くなる」といった内容がありました。良質な睡眠を取るためには基本的に21時までに食事を済ませたいところです。しかし、岡田選手の場合は21時ごろまでトレーニングがあるため現実的ではありません。
仮に21時以降に普段通りの食事を摂ると、消化に負担がかかるだけでなく、22時から26時の時間帯で脂肪の蓄積に関わる遺伝子の働きが活発になることが知られており、太る原因になるとも言われています。21時以降の夕食の摂り方として、練習前に食事を軽く食べることで分食する方法もあります。ただ、無理に生活スタイルを変更するとストレスをかけてしまいます。事前のアンケートでは24時ごろに食事をしていることもあるとのことでしたので、まずは22時までに食事を済ませることを心がけてみてください。
なお夕食のメニューとしては、血糖値の上昇や脂肪の吸収を抑えるためにも、食物繊維が含まれる葉物野菜やきのこなどを一緒に摂ることが望ましいです。

今回、野菜摂取のポイントや夜遅い時間帯での食事についてアドバイスをもらった岡田選手は、「更に意識が高まった。特に練習前後の食事はいつも難しかったので、遅い時間になる時は葉野菜やきのこを意識的に摂っていきたい」とさっそく改善に向けて動き出している。競技と仕事の両立で多忙な日々を送るなかでも、「日本一」の目標が揺らぐことはない。「プレー環境の変化や年齢による体の変化に対応して、いつまでも元気に動けるよう取り組んでいく」と、モチベーションはさらに高まったようだ。