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vol.22
穏やかに、誰よりも熱く
スペインに渡った少年がゴールの先に見る夢

岡田大河
(バスケットボールプレーヤー /Zentro Basket Madrid・SHIZUOKA GYMRATS)

穏やかに、誰よりも熱く 後編
2020/09/18

バスケットボールを学ぶため、若干15歳にして海外に挑戦した少年がいる。その名前は岡田大河。近年、アメリカに次ぐバスケ大国として頭角を現すスペインに渡り、現地のクラブチーム「Zentro Basket Madrid(セントロ・バスケット・マドリード)」に所属。渡邊雄太や八村塁に続く、世界に通用する日本人プレイヤーとして成長が期待される存在だ。なぜその年齢で海外へ。そして、なぜスペインへ。まだあどけなさが残る少年の言葉には、世界へ挑戦する鉄の意志と、謙虚で内省的な眼差しが共存していた。

学校、食事、試合。スペインで暮らす少年の今

Zentro Basket Madridのオーナーと

Zentro Basket Madridのオーナーと

 世界へ挑戦するために、たった一人でスペインへ渡った岡田。現在は、現地の高校に通って寮生活をしながら、「Zentro Basket Madrid」の下部組織「カンテラ」でプレイしている。詳しく説明すると、「カンテラ」とは育成世代の意味でU-18のことを指す。カンテラの中にはU-14の「インファンテル」、U-16の「カデーテ」、U-18の「ジュニア」というカテゴリがあり、それぞれに1~3軍まで細分化。岡田は「カデーテ」の1軍に所属する。カンテラを卒業すると、チームの上部組織へ入ったり、他チームに引き抜かれるなどしてプロになっていくため、ここでの活躍が将来に直結する。

通っている高校は、スペインに住む他国の子どもが通う学校。岡田以外には日本人はいない。「語学もしっかり勉強する約束で来ているので、まずはスペイン語の授業から受けています。最初は不安しかなかったですが、日常会話程度なら言葉も理解できるようになったし、友達もできました」と言い、スペインでの生活にも慣れたという。向こうでの食事は、寮母さんが作ってくれる料理。栄養が考えられているとはいえ「やっぱり日本食が恋しくなりますね」と本音がポロリ。アスリートとして大切な体調管理には、サンクロレラ・Aパウダーが一役買っている。「牛乳に混ぜて毎日飲んでいます。毎年、冬には風邪を引いていたけど、今年は体調を崩してません」と、健康面も問題ないようだ。

 現地のバスケットのファーストインプレッションを聞くと「背が大きくて、外もできる選手が当たり前。ゴール下のレベルが桁違い」と言い、日本と海外のレベルの差を実感。ブラジル代表にも選ばれるチームメイトが日本でプレイしたら、誰も止められないレベルだとも語った。リーグ戦では、名門クラブである「Real Madrid(レアル・マドリード)」との試合も経験した。圧倒的な負けを想像していたが、岡田はその試合でチーム最多となる26点を獲得。あと2点で勝てるところまで名門を追い詰めた。傍から見れば十分な結果だと感じるが、「自分の甘さが出た試合でした」と悔しさをにじませる。「決めきれる選手になれって、いつも父から言われていました。日本では最後の2点を自分が決めて勝っていたんですが、そのときは人に譲ってしまった…」。プロの世界は結果が全て。残り1分で、最後のシュートを外すと次の機会を失ってしまう。たった2点。1本の重みを知っているからこそ、どこまでも自分に厳しい。

海を渡ってより高まる、静かなる勝利への貪欲さ

岡田大河

コロナ禍で帰国中にはスペインで得た技術を子供たちにつたえている

スペインに渡った理由である“バスケIQ”については、どう感じているのだろうか?「どの選手も状況判断が上手い。それに、ボールを持たない選手の動きを徹底的に練習します」と語り、特に「ピック&ロール」という技術の練習にかなりの時間を割くという。ピック&ロールとは、ボールを持つ選手がディフェンダーにマークされている状況で、仲間がディフェンダーの動きを妨げ、ボールを持つ選手を逃がす。その後、仲間もフリースペースへ移動して、パスを受けて攻めに入る。連携によってボールを繋ぐプレイだ。「細かくやると何十種類ものパターンがあって、瞬時に状況を判断してそのパターンを使い分ける。これがスペインのスタンダード」。特に、岡田のポジションであるポイントガードは、ゲームメイクを担うチームの頭脳。チームを勢い付かせたり、仲間を活かしたり、そのプレイが勝敗を左右する。「1対1のスキルも大切ですが、自分が止められたときに、それだけの選手になるのか、周りを活かせる選手になるのか」と言い、バスケIQを全身で吸収している。

 そのほかにも、「接戦になると白熱して、乱闘も起こるくらい(笑)。この泥臭さは日本にはないですね」と、海外選手が持つ“熱量”にも驚かされるという。とある試合でのできごと。チームメイトが相手選手にラフなプレイをされたが、審判は笛を吹かない。そのうえ、相手選手はトラッシュトーク(挑発する言葉)を吐き捨てた。「そいつは『やり返すから俺にボールをよこせ!』と言って、その後、がむしゃらに攻めてゴールを決めました。コートの中は戦場なんです」。やられっぱなしでは終わらないメンタル。勝利への貪欲さとプライド。互いの思いをダイレクトにぶつけ合うのが海外のコートだという。また、白熱するあまり、チームメイトのミスに暴言を吐く選手もいると言うが、「チームの士気が下がるだけ。人のせいにしても何も解決しないし、自分で責任を持たないと次のレベルには行けないと思う」と、どこまでも内省的だ。それは、仲間とプレイする大切さと、チームを引っ張るポイントガードの責任を自覚しているからこそ。静かなる闘志は戦場でもブレることはない。

選手として、人として、ただひたすら真っすぐに

(中)尊敬する大橋大空選手

(中)兄的な存在 大橋大空選手

 取材中、言葉を丁寧に選びながら話す姿は、15歳の少年とは思えないほど。冷静な眼差しと責任感には、大人以上のものを感じさせる。そんな彼の人格形成には、バスケットを通じて出会った人たちが大きく影響しているという。一人はミニバスケット時代のコーチ。「人として間違わないように指導してくれました。『自分一人だけでやりたいなら個人競技をやれ』、『人にやれと言うんだったら、お前もやれよ』とか、チーム競技として大切なことを教えてもらいました」と言い、今も心には多くの言葉が残る。Gymratsの先輩 大橋大空(おおはしひろたか)については、「周りへの気遣いが自分の100倍できる人」と言い、ポイントガードとして常に周りを見て、気遣いをすることの大切さを学んだ。そして、指導者でもある父からは「負けをよしとする選手は続かない、と厳しく言われました」と、負けたとしても、その負けをどう生かすか。勝ちにこだわる意思を叩き込まれたという。

 憧れの選手は、アルゼンチン代表のポイントガードであり、Real MadridでプレイするFacundo Campazzo(ファクンド・カンパッソ)。渡邊雄太や八村塁といった、海外で活躍する日本人選手についても「まだまだほど遠い存在ですが、いつか一緒にプレイしてみたいです」と、やはりその目に映るのは世界の舞台だ。「目標は海外で活躍すること。NBAでもプレイしたいですが、最初に目指すのはユーロリーグ」と、真っすぐに将来を見据える。どんな選手になりたいか?という質問には「人から応援されるプレイヤー」と即答。「いくらバスケが上手くても、人間的にダメなら誰も応援しないと思うんです。人間としても、選手としても成長していきたいです」と、おだやかな声に力を込める。

 取材の最後に、同世代へのメッセージを聞いてみた。「急がなくてもいいので、自分のやりたいことを見つけて欲しい。僕ならバスケだし、絵を描くことや音楽でもいいし、勉強だっていい。やりたいことを見つけたら、それを伸ばすことに、勇気を持って挑戦して欲しいです」。夢中になれる何かに出会うことは、実は難しい。だからこそ、見つけたときは自分に嘘をつかず、一歩を踏み出す勇気が必要だ。“バスケが好き”という、たった一つの真実を胸に、未来へ突き進む真摯なる少年。その真っすぐな言葉は、あらゆる人の背中を押すエールのように感じた。