中山太
(株式会社サン・クロレラ代表取締役)
BANG LEE
(オーガナイザー)
MARU
(プレーヤー兼オーガナイザー)
トライアウトを終えたばかりの3人に取材したのが3か月前のこと。それから東京・大阪・福岡などでのトライアウトや、強豪の高校チームおよびプロバスケチームのU15などとの対外試合を経て、このたびGLOBALLERSとして最初のシーズン終了を迎えることとなった。
そこでふたたび3人にあらためて話を伺い、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックという世界的に困難な状況の中で迎えた船出と、そのなかで見つけた新たな希望などについて語ってもらった。
シーズン1を終えたGLOBALLERS、その軌跡と展望。
――GLOBALLERSのファーストシーズンが終了しました。いまの率直な感想をお聞かせください。
中山:プロジェクトをスタートさせた直後に、新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響を受け、当初の計画を大きく変更せざるを得なくなりました。しかし、そのなかでもGLOBALLERSやSun Chlorellaブランドの日本バスケ業界における認知を広めることはできたし、業界からの反響を肌で感じる機会が数多くありました。GLOBALLERSの今後の可能性に期待を持てた1年目となり、一定の達成感はありました。
MARU: ぼくもそれは実感していますね。やはり先が見えないなかで活動を開始したわけですが、関係者のがんばりと多くの皆さんの協力のおかげで、無事に全日程を終えることができました。
BANG LEE: 新型コロナウイルスの影響で、1回のトライアウトに参加できる子どもたちの人数に制限がかけられたんですね。その結果トライアウトの回数もかなり多くなり、毎週本当にバタバタでした。なので、あっという間に時間が過ぎ去っていったという印象はあります。
MARU: あともうひとつ残念だったのは、今年は子どもたちをアメリカでプレイさせてあげられない状況となったこと。しかし、世界を見据えた高い志のある選手たちと出会えたこと、指導させてもらえたことは、ぼくにとっても貴重な経験になったし、今後子どもたちが世界に飛び出すきっかけにつながってくれればうれしいですね。とにかく多くの方々にこの活動が広がったという手応えは感じているので、2年目に向けて準備していきたいと思います。
中山:ここにいるおふたりをはじめ、スタッフや運営メンバーのおかげで、GLOBALLERSの活動内容に対して多くの業界関係者から賞賛の言葉をいただけました。そしてなによりも参加してくれた子どもたちがハッスルできる機会をつくれたのがGLOBALLERSの1年目における最大のハイライトだと思います。たしかにアメリカへの挑戦という目標は実現できませんでした。しかし“いま”できることを全力でやり切ったという自負はGLOBALLERS運営メンバーのみんなにあると思います。
――強豪校との練習試合を経て、海外で通用する部分や足りない部分は見えてきましたか?
中山:ええ。決定的に足りていないと感じるのは、やはりコミュニケーションスキルでしょう。アメリカではIQの低い選手は試合に使ってもらえません。コーチに言われたことを即座に理解し、コートで実行する力がアメリカでは求められるからです。コーチやチームメートと積極的にコミュニケーションを取り、チームのプランを実行する力が足りていないと感じています。もちろんフィジカルも足りていませんが、それは環境が変われば改善できる部分。やはりコミュニケーションスキルの向上のほうがより重要な課題だと思います。
BANG LEE:同感ですね。とくに海外では現地の人たちに対して言葉が通じないと思うので、コミュニケーション能力は絶対に必要だと思います。それはバスケットだけでなくオフコートでも同じです。ただコミュニケーション能力の不足については、今回参加した子たちに限った話ではなく、多くの子どもたちに共通の課題であり、しかもそれは日本およびアジア人共通の課題でもあるのかなと思います。
MARU: なかでも今回参加してくれた子たちは比較的控えめな性格の子たちが多かったので、アジャストするのに時間がかかりました。海外に出るには、やはりリーダーシップや表現力といった技術以外の部分が必要になってきますから。
BANG LEE:逆に通用する部分でいうとスピードですね。あとは真面目さ。このふたつに関しては、どの年代のどのカテゴリーでも日本人として共通した強みだと思います。
MARU: たしかに日本人の得意とするスピードやドリブル技術は世界でも通用するものだと感じています。そのいっぽうでフィニッシュのバリエーションの少なさ、フィジカルの部分はまだまだ差があると感じています。
中山:もちろん一部の選手ではありますが、スキルそのものは海外でも通用すると感じましたし、期待感を抱かせてくれました。BANG LEEさんやMARUさんのような指導者の存在は、日本の若いボーラーのスキルアップに確実につながっていると思います。
――トライアウト・練習試合を通じて、子どもたちのどういった部分がもっとも成長したと感じましたか?
中山:なにより精神面での成長を感じることができました。トライアウトの時の表情と比べ、高校との練習試合の最終戦で見せていた表情は、まったく別人のように精悍でたくましいものになっていました。 “環境”が若いボーラーに与える影響の大きさをあらためて感じさせられるできごとでした。GLOBALLERS 1期生にアメリカ挑戦する機会はつくってあげられなかったのは本当に残念なことですが、GLOBALLERS CROSSOVERを通じて海外でプレイする機会につながればと思っています。
MARU: 同じくぼくもメンタルがもっとも成長したと感じています。というのも、ふだんのチームと違って限られた練習回数のなかでチームの約束事を守りながらプレイタイムやチャンスを掴まなくてはいけないので、彼らなりにそうとう苦労したはずです。そうした状況のなかで、試合を重ねるごとに良いプレイも増えていきました。高校のステージや世界に飛び出していくために必要な心構えができたのではないかと思います。
BANG LEE:選ばれてトライアウトに参加している選手は、もともと勘が良い子ばかり。プレイにおけるアジャスト力はあの年代では速いほうだと思います。だからこそ、なおさら「自分がコートのなかでいちばん下手」という環境に早く飛び込んだほうがいいと思っています。それはユース年代で吸収力があるうちのほうが尚更いい。そういう意味では今回、自分よりも上手い人に囲まれてプレイする事がいかに大切かを学べたことが成長だと思いますし、この経験は将来海外に挑戦する時に必ず役に立つと思います。
――来季に向けて、今後の予定や目標などはありますか?
中山:「アメリカへの挑戦」という最初に掲げたコンセプトは、2年目のプランでもブレずに組みこんであります。もちろん新型コロナウイルス感染症によるパンデミックの影響がまだ収束を見せないなか、最大限の安心安全を考慮したうえでの運営は必須です。しかしそれでもやはり、GLOBALLERSとしてはつねにバスケットボールの最高峰にして世界最強のリーグを有するアメリカで、若いボーラーがチャンレンジできる環境を提供するという、みんなの夢へのチャレンジは続けていきたいと思っています。
また日本国内においては、食を通じたコンディショニングの重要性を啓蒙する活動にも、より力を入れていく予定です。というのも若いボーラーの成長には保護者の理解とサポートが必要です。スポーツと食による健やかな身体作りについても、GLOBALLERSの活動を通じて保護者の皆さんにアプローチしていきたいと考えています。
MARU: なにより多くの人たちにこの活動を知ってもらい、より選手が参加しやすい環境を作っていきたい。そのためにも今年より多くの地域でトライアウトや大会を実施していきたいと考えています。そして新型コロナウイルス感染症の状況によっても変わってきますが、海外に足を運べるタイミングが来たときのために最善の準備をしておきたいと思います。
BANG LEE:ぼくもやはり海外に選手を送り出すこと。これはもともとのコンセプトだったわけですし、そこは目標としては掲げ続けていきたい。それによって、選手たちもプロジェクトも、また新たなステージに進むことになるわけですから。国内では10月にBリーグも開幕しましたが、これまでとはまったく違う感覚の日常が突然訪れています。その暗いトンネルの先がまだ良く見えない状態で、その時その時に見合った選択を自分もプロジェクトもしていけたらいいと思います。あと具体的な目標としては、トライアウトに参加してくれる子どもたちの分母を増やすこと。これは必ず実現したいと思っています。
中山:いまBANG LEEさんがおっしゃったように、1年目より多くの若いボーラーにトライアウトに参加してもらえるようでなければなりません。そのためには、やはりGLOBALLERSの価値を高めていく必要があるでしょう。1年目に実現できなかったことを2年目にしっかりと実現できるように、準備して実行していく。それはきっと、困難に立ち向かい、夢を持ち続け、それに向かって行動し続けることの重要性をGLOBALLERSの運営メンバーの言動から若いボーラーに伝えていくことにもなるはずです。
GLOBALLERSの運営メンバーの結束力は、この1年で確実に高まりました。社外関係者も多く関わるこのプロジェクトにおいて、運営メンバーが結束し、つねに上を目指すということができている状況は、必ずやプロジェクトの今後の発展につながっていくはずです。荒波のなかでの門出となったGLOBALLERSですが、だからこそ多くの出会いと学びがあった1年目だった。私はそう確信しています。
新型コロナウイルス感染症の世界的パンデミックによって、おそらくは後世に語り継がれる年になるであろう2020年。GLOBALLERSというプロジェクトは、まさに歴史的な年に船出したのだった。予定していたルートは大幅に変更を余儀なくされ、先が見えず、刻一刻と変わりゆく状況のなか、その時々におけるベストと思われるものをチョイスしていく、という日々が続いた。
そんな困難な状況のなかにあっても、いまできることを全力でやりきろうと、いくつかの軌道修正とたゆまぬ努力を重ねてきた。思えば、奇しくもこのプロジェクトで子どもたちに獲得してもらいたいスキルとして挙げていたのは「未体験のことに挑戦すること」「ポジティブであること」「自分の頭で考え、柔軟に対応すること」だった。コロナ禍におけるプロジェクトとの遂行は、まさにその3つの課題を子どもたちだけでなく運営側にも課され、試されているかのような1年だった。
そして、その大きな試練を子どもたちも、運営側も、「結束」によって乗り越えた。バスケットスキルだけでなく、メンタル面でも強くなったチーム GLOBOLLERS。おそらく来期には、さらなる飛躍を見せてくれることだろう。