Journal

サン・クロレラの取り組みや
サポートするアスリートたちのTOPICS。

Find out about Sun Chlorella's corporate activities and sponsored athletes

official site
Vol.73
教えることを学びあう。
〜スポーツ指導者と管理栄養士。ふたりのコーチ同士によるコーチング・ダイアローグ〜

大北照彦(アイスホッケーコーチ/Okita Hockey School)

教えることを学びあう。 後編
2024/07/09

アイスホッケー元U20日本代表監督などを歴任し、Okita Hokey Schoolの代表兼ヘッドコーチとしても活躍する大北照彦さんと、アスリートフードマイスターであり、管理栄養士としてサン・クロレラでアスリートへの栄養セミナーなどをおこなってきた板津。プロスポーツと栄養学。それぞれの持ち場で互いに指導者という立場でアスリートの身体づくりに関わってきたふたりが語り合うコーチ同士によるコーチングダイアローグ。
後編では近年海外での遠征やプログラムを活発化させてきた大北さんから板津へ、とくに海外における栄養管理や健康管理、家庭での食事の摂りかた、子どもと食にまつわるコミュニケーションなどについて忌憚のない対話を繰り広げた。

家庭での栄養管理は、焦らず、ムリせず、できることからでいい。

大北「いまは共働きの家庭も多く、保護者の方々もみなさんお忙しい。そうすると、どうしてもおかずの品数が少なかったり、栄養価が偏ったりしがちです。キャンプでサン・クロレラさんのご協力のもと実施している板津さんの栄養講座には、子どもだけでなくその先にいる保護者の方にも話が伝わるようにしたいと思い、興味のある保護者の皆さんは一緒に聞いてくださいと参加を促しています。みなさん、やはり食事については苦労されているようなのですが、毎日のご家庭での食事はどうすればいいでしょうか?」

板津「私自身も共働きで、時短勤務で働いていますが、やはり平日に毎日ごはんと味噌汁とおかずを3品揃えるというのはむずかしいと感じています。ですから、いわゆる『時短料理』だったり、炊飯器でごはんと一緒におかずもつくれるようなものを活用しながらやりくりしています。冷凍野菜やお惣菜に頼ることもあります。ただ、やはりお子さんがスポーツをされている家庭のお母さんのなかには意識が高い人もいらっしゃいます。それゆえに添加物を気にして全て手づくりしようとする結果食事づくりが苦痛になってしまうこともあると思うのです。私はお惣菜でもレトルト食品でも、便利なものや使えるものはどんどん使ってほしいと思いますし、毎日100点でなくていい。ときには60点くらいでもいいくらいの気持ちでいてほしいですね」

大北「あまりムリせず、でもあきらめず、できる範囲のベストをめざそうということですよね」

板津「そうですね。まずはそこからでいいと思います」

大北「たしかにぼくらも最初は五大栄養素がどうとか、食事にはどんなおかずを揃えなきゃいけないかといった話を中心にしていたのですが、最近は例えば子どもたちがコンビニでなにを選べばいいのかといったテーマにだんだんシフトしてきています。1000円を持っていたとして、アイスクリームやチョコレートを買うのかおにぎりを買うのか、炭酸ジュースを買うのかそれとも100%オレンジジュースを買うのか。そういったことを子どもたち自身に考えてもらう。そういうことも栄養講座としてやっています」

板津「自分が食べるものを自分で選ぶって大事ですもんね。いっぽうで子どものころから完璧な食事をしないとアスリートにはなれないと思われている保護者さんもいらっしゃると思いますが、決してそんなことはありません。栄養バランスの取れる補助食などを利用して補うのもいいと思います」

大北「もちろんプロアスリートは効率よく自分の身体を鍛えなきゃいけないし、回復させないといけない。その最優先事項はやはり食事と睡眠の質を求めていくことです。うちのアイスホッケーチームの選手がサン・クロレラの製品を飲み続けているのも、やっぱり回復のためで、睡眠の質と身体の状態が飲んだことによっていい状態にあることをみんな実感しているからだと思うんです。アスリートは食事でもサプリでもプロテインでも、摂取したものに対して身体がどんな反応をしているかということにはとても敏感ですから。とくに朝起きた瞬間にもっとも感じます。ぼく自身はサン・クロレラを摂った際のスッキリして体がシャープになる感覚が気に入っています」

板津「スクール生の皆さんはいかがですか?パウダーは大人でも初心者は苦手という方もいますから、ましてや子どもさんだとやっぱり苦手そうでしょうか?」

大北「オレンジジュースに混ぜたり烏龍茶に混ぜたり。水で飲んだり、みんな自分に合った飲みかたを工夫しています。またそれでも苦手という子の場合はタブレットを飲んでいます。じつはそれで余ったパウダーをその子の保護者の方が飲んでいるという話を伺っていて、ある保護者の方はぼくに「調子いいんですよ」って報告してくれるんですよ(笑)。ちなみになんですけど、子どもが飲む場合は飲みかたとか分量など、とくに気をつけることはあるのですか?」

板津「いえ、クロレラ自体は生後半年くらい、離乳食を始めたころの赤ちゃんでも飲んでいただけます。もし離乳食期のお子さんが飲む場合は、パウダーを水で練ってペーストにしてあげるといいと思います。あとはコップで水分が摂れるようになったら、牛乳やジュースに混ぜたり、本人の呑みたい飲みかたで飲んでもらって大丈夫です。子どもは大人より身体が小さいので、初めはタブレットなら5粒くらいで様子を見て、分量を調整してあげたほうがいいかもしれません」

大北「うちのスクールにはタブレットをラムネみたいにしてぽりぽり食べている子もいますよ」

板津「うちの子もボリボリ食べています(笑)」

大北「昨年の11月にカナダのカルガリーに子どもたちを連れて行って、そこでサン・クロレラさんに栄養の部分でサポートしていただいたんですけど、食事の前後に食べてねって言ってたにもかかわらず試合を見ながら小腹空いたといってみんなラムネみたいな感覚でボリボリ食べてました(笑)。やっぱり子どもって慣れるのが早いんだなと思いました」

板津「苦味はまったくないのですが、見た目が緑なので抵抗があるという大人もいます。でも子どもは先入観がないぶん、受け入れやすいのかもしれないですね」

大北「そうなんです。ある一定期間を超えて飲み続けると、みなさんそこからはやめないですね」

自分で調べて、体感して、海外での食事を貴重な学びの機会にしてほしい。

大北「2018年にカナダのカルガリーでのプログラムをスタートして、昨年も小学校5,6年生を中心に行ってきました。やはり環境の違う場所でコンディションを整えるうえで食事の問題は外せません。どういうタイミングで食事を摂ると、よりコンディションが整うのかとか、環境が変わるから水分もこういうふうに摂る方がいいよなどのアドバイスがあれば教えていただけますか?」

板津「食事に関してはできるだけ普段と変えないこと。せっかく海外に来たのだから現地の食事を楽しむ経験も、とくに子どもたちにとっては必要だと思いますが、スポーツの大会など目的があってコンディショニングを優先したいのであれば、できるだけ日本にいる時と変わらないようにすることが重要です。たとえばホテルの近くの、どこで水が手に入るのか、どこで食材が手に入るかといったことを知っておくことが大切ですね。できればそれを子どもたち自身で調べること。そうした経験は今後の役にも立つと思います」

大北「ただ、どうしても現地では手に入らないものもあったりしますよね?」

板津「その可能性が高いものはあらかじめ日本から持っていくようにしてほしいですね。その際も現地調達できないものはなにか?飛行機やその国に持ち込めるのと持ち込めないのがあること、あるいはお水ひとつとっても硬水や軟水、炭酸水などいろんな種類のものが売っていますので、それらがどういった表記で売られているのかを、子どもたち自身で調べてもらって、知ってもらう。そういったこともすごく子どもたちにとっては重要な学びになります」

大北「なれない飛行機や海外での移動による緊張やストレスによって、食欲が落ちる子もいるのですが、そういう場合にはどうすれば良いですか?」

板津「あまりムリには食べずに現地に到着してから食べやすいものをちょっとずつ食べるとか、ストレスで消費されるビタミンCを多く摂るといった工夫が必要になると思います。実際に海外遠征の際の食事はどうされていますか?」

大北「基本的に朝は滞在先のホテルで摂ります。昨年のプログラム開催時には、パンは食パン、マフィン、ベーグルのいずれかを選べました。あとはウインナーと卵。卵も生卵、目玉焼き、スクランブルが選べるようになっていました。それにチーズ、ヨーグルト、フルーツあたりは揃っていましたので、基本的にはそれを食べてそこにクロレラを追加で摂取していました。昼は大会の主催者側で用意してくれることもありますが、基本的にはレストランで食べることになるのでぼくが店とメニューを選んでいます。」

板津「アイスホッケーは北米やヨーロッパの都市部で盛んなスポーツで遠征先もそういう地域が多いと思いますので、普比較的に和食レストランや日本の食材も揃いやすいですよね」

大北「食に関しては北米よりもヨーロッパの方がいい気がします。北米はどうしても味も油も濃いタイプのものが多いので野菜を摂るのが大変です。晩ごはんはピザ一枚で終わりみたいな人も現地ではいますので」

板津「なるべく消化のいいものを選んで、油を控えた食事をしようとしてもそれが難しいですよね」

大北「子どもたちもウンザリして『またピザですか』とか言ってきます。そういうときはあちこち探して日本食レストランに行きます。日本人コミュニティの方がおにぎりを差し入れしてくれることもあって、みんなおいしいおいしいって喜んで食べています。一人前に『やっぱり日本食が最高だね!』とか言っていましたね」

板津「ふだんあたりまえに食べている日本食がいちばんおいしいと感じることも、海外で経験をしたからこそのことだと思うので、そういう発見も大事ですね」

時差ボケへの対応も食事のタイミングも人それぞれだから、自分の身体の声に耳を澄まそう。

大北「たとえば時差ボケを早く解消する食事の摂りかたというのはあるのでしょうか?こまめにちょっとずつ摂ったほうがいいのか、食べたい時に食べて大丈夫なのか?とか、時間をなるべく守ったほうが慣れやすいのかとか、早く現地時間に慣れる食事の摂りかたはありますか?」

板津「なるべく朝ごはんは起きてから1時間以内に食べたほうがいいですね。とくに炭水化物とタンパク質は身体の熱を上げるために欠かさず摂るようにしてください。ただし、食べ過ぎると消化にエネルギーを使ってしまって逆に身体の回復に使うためのエネルギーを奪ってしまうのでムリに食べないこともポイントです。食欲はないけど、どうしても食べておかないといけないシチュエーションの場合は、日本から持ってきた食べなれたものを少しずつ食べてもらう。到着後の数日間はそのほうがいいですし、できれば機内食の段階からそれは気をつけていただきたい点です。もちろん水分はこまめにしっかり摂ってください。食は極めて個人的なものなのでやはりどうしても個人差があり、合う合わないもあります。実際に子どもたち自身がなにをどのように食べたら体調が良くなったり悪くなったりするのかを経験してもらい、身体の声に耳を澄まして、自分で最適解を見つけてもらうことも大事なのかなと思います」

大北「たとえば朝は散歩などをして身体を目覚めさせてから食事を摂ったほうが、より時差ボケ解消になるというようなことはありますか?」

板津「それも人ぞれぞれだと思います。もちろん時差ボケ解消には朝一番に太陽の光を浴びることは大事です。でも部屋の窓を開けるだけでもいいかもしれませんし、朝はまだエネルギータンクは空っぽの状態ですからあまりハードに身体を動かしすぎても疲れてしまいます。ちょっと近くをお散歩したり、部屋で軽いストレッチなどの体操をしてそれから食事へ、くらいの流れがいいかもしれないですね」

今回の対話を通じてあらためて感じた、「食」はメッセージであるという思い。

大北「アスリートには必ずいつか引退の時がやってきます。そして競技の成功と人生の成功は必ずしも同じものではありませんが、いずれの成功にとってもベースとなるのは健康です。子どもたちはアイスホッケーに興味があってOHSに来てくれていますが、そこでアイスホッケー以外のこと、身体づくりや栄養学などの大切さを伝える機会をいただいて、またそこに板津さんはじめサン・クロレラさんにも関わっていただけることにはすごく感謝しています。やればやるほど子どもたちや保護者の意識も変わっていってることを日々実感しています」

板津「そうですね。やはり栄養バランスを考えて作っても子どもが食べないと、食事づくりが負担になってしまっているご家庭もあると思います。でも出し続けることに意味があると私は思っています。子どもは本能的に初めての食材を避けてしまったり、それで偏食になってしまうこともある。だけど、食べものを食べるまでのステップには4段階あると言われているそうで『知る』『興味を持つ』『触れる』『食べる』となっています。ですから食卓で繰り返しそのおかずを見続けていると少しずつ馴染みが出てきて、知っている食べものになっていきます。そこからやがて食べるという結果につながることもあると思います。食べるに至るまでの期間も個人差があり、時間がかかる子もいますし、年齢によっても違いますが」

大北「食べなくてもおかずを出すことが大事なんですね。それはやはり親から子どもへのメッセージという意味合いもあるのでしょうか?」

板津「もちろんそうですね。食卓に並んでいた食事は、たとえ子どもが食べていなくてもその子の食経験になっていきます。いつかその子が大人になったとき『うちの夕飯にはこんなのを出していたな』とか『自分の健康を考えて作ってくれていたんだなあ』と気づく日が来ます。だからそのときはお腹に入らなくても将来それが知識となって役立つことがあるのかなと私は考えています」

大北「じゃあ子どもが食べなくても、親はあまり落ち込まないでいいということですね」

板津「はい。ですから栄養セミナーを一回だけ受けて終わりではなく、前回スクールでやったような実践的な栄養講座を定期的にさせていただいて、親子で一緒に考えていく時間が必要なのかなと思いますね」

大北「その通りですね。楽しさを伝え続けるとその子がトップ選手にならなくてもその子が親になった時に自分の子供にもホッケーをさせたくなると思うんですよ。でも自分が現役時代にイヤイヤやらされてたら自分の子供にやらせないと思うんですよね。それと同じじゃないかなといまの話を聞きながら思いました。今日はありがとうございました」

板津「こちらこそ、ありがとうございました」

社会が多様化したことで、正解が見えにくくなっている時代。教育現場での子どもへの指導や家庭における教育も難しくなっています。そのいっぽうでインターネットを検索すれば簡単に「答え」らしきものが見つかるようになったことで、子どもだけではなく親も指導する先生もが膨大な情報に振り回され、どのような選択をすればいいのかわからなくなってしまうこともある。
しかし、スポーツにせよ家庭での食習慣にせよ、ベースは実体験。自分の身体で感じたこと。それがもっとも重要なファクトであり、判断基準となる情報であるはず。親もコーチも自分の方針に過信せず、目の前にいる子どもと向き合って、ごはんを一緒に食べたり、試合に負けて泣いたり、喜びや感動を分かち合ったり、そうした時間を共有しながら、根気よく対話を重ねていくこと。今回のおふたりのダイアローグで語られていたのは、「親やコーチが子どもたちから学ぶ姿勢」の必要性だった。
OHSとサン・クロレラは互いに学びを重ね、学びで得た経験や知見を共有しながら、今後も子どもたちの健やかな成長をサポートする取り組みを続けていきたいと考えている。