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Vol.76
果たされた約束
B2優勝・1年でB1復帰という「絶対目標」を掲げ、見事ブースターとの約束を果たした“青き勇者たち”の記録。

滋賀レイクス

果たされた約束。前編
2024/09/30

いまからちょうど1年前、B2降格という思いもよらぬ屈辱を味わうこととなった滋賀レイクス。選手たちやコーチ・スタッフはもちろんのこと、なによりブースターたちにも大きな動揺と深い失意が広がっていた。しかしチームはいつまでも立ち止まってはいなかった。すぐに顔を上げ、前を向いた。昨秋にはスペインで初めての海外キャンプに取り組むと、「B2優勝」「1年でB1昇格」という目標を掲げた。これは彼らいわく「絶対目標」であり、自分たちの努力次第で必ず成し遂げることが可能な、いわばブースターとの約束でもあった。B2で他のチームを圧倒して、1年であの舞台へ必ず戻る。その決意が、チームとブースターをさらに盛り上げ、結束させたのだった。
前編では決意の1年との思いで臨んだB2での今シーズンにおいて、苦しんだ序盤とその後の連勝街道を経て、ついにリーグ優勝を成し遂げるにいたった選手たちが、なにを考え、どんな思いで戦い続けていたのかについて、野本大智選手、江原信太朗選手に、それぞれくわしく話を伺った。

絶対目標の公言と、決意のスペイン合宿がもたらした勝利への確信。

滋賀レイクスにとって2022-23シーズンは、まさにジェットコースターのような激動の一年だった。誰もが予想し得なかった、まさかのB2降格という屈辱。そのいっぽうで夏にはワールドカップでのアカツキジャパンの活躍でバスケットボール人気が空前絶後の高まりを見せ、日本代表の一員だったレイクスの川真田紘也選手にも注目が集まっていた。選手もブースターもそのコントラストに戸惑い、悲痛な思いに沈んでいた。

しかし、チームはすぐに再スタートする。10月に開幕する2023-24シーズンをB2で戦うために必要なことに意識をフォーカスし、「勝率8割」「B2優勝」「1年でB1復帰」という3つの「絶対目標」を掲げて、前を向いていた。そんななかで実施されたのが、スペイン・マドリードにおけるチーム初の海外キャンプだった。チームは初めてのB2シーズンを戦うにあたり、新規加入選手も多くいるなかでチームビルディングの重要性を感じていたという。その一環として就寝以外の時間をほぼ共に過ごし、バスケットボール以外の話も含めてコミュニケーションを取り続けているという状況はふだんなかなかな体感することのない海外キャンプならではの環境。だからこそ今回のキャンプは本当に貴重な体験であり、異国の地でいろんな文化に触れながら、新しい選手と情報共有し、これからどう戦っていくのか?というヴィジョンについて意思疎通をしっかりできたと振り返る。

野本「ぼくはもともと人見知りをするタイプで、初対面の人にガツガツこちらからコミュニケーションを取っていけないところがあったんですけど、そのスペインキャンプでは、柏倉選手も話していたように、ほとんど寝るとき以外はつねに一緒にいる状況だったので、おのずとコミュニケーションを取る時間も長くなり、次第に深く踏み込んだ話もできるような関係づくりができました。それによってシーズンに入ってからも互いに気を遣うことなく、言いにくいこともきちんと指摘し合える関係になれたことが、ぼく個人にとってもチームにとってもすごく大きかったと思います。なにより短期間で深い信頼関係を築くことができたので、シーズンが終わってB1昇格を決めたいま、あらためて振り返ってみても、やはりすごく大きな意味を持ったキャンプだったなと思います」

チームの目標は「1年でのB1復帰」「B2優勝」と明確であり、そのことは当然メンバー全員が理解しているのは自明である。しかしそれをどう表現するか、細かな戦術面やゲーム中のコミュニケーションにおいて、めまぐるしく展開するバスケットボールというスポーツにおいてスピーディーかつ的確に判断するためには、やはりより深い段階での共通認識が必要になってくる。環境が一変する海外で寝食をともにする期間を共有できたことは、チームのケミストリーを高めるのに大きな効果をもたらしたようだった。

苦しい序盤戦にあっても、揺らぐことはなかった自分たちへの信頼。

決意のシーズンに向けて準備万端、B2優勝はもとより、他チームを圧倒して「勝率8割」というハイレベルな目標を掲げていた彼らは、当然のこととして開幕からのロケットスタートを目論んでいた。しかし、開幕戦は黒星。そこからも序盤は苦しい展開が続き、いいゲームを繰り広げながらもなかなか勝ち星に恵まれない状況が続いた。このままでは勝率8割はおろか、B2優勝、ひいては1年でのB1復帰まで危うくなるのではないか。しかし周囲の心配をよそに、選手たちをはじめチームは意外にも冷静だったという。なぜなら、あくまでその時点でのレイクスのチーム状況は最低ライン。いっぽうでライバルチームはほぼ100%に近い状態に仕上げてきていた。つまり、それだけ完成度に差がある状況でタイゲームを惜しくも落とすという競ったゲーム展開だったので、いずれ自分たちの状態が上がってくれば問題なく勝っていける、という確信を持って戦うことができていた。だからこそ、焦りなどはまったくなかったというのだ。

野本「もちろん苦しい時期ではありましたけど、むしろ自分たちがやっていることは間違っていないと信じることができたし、『このままやっていけば大丈夫』という安心感はチーム全体の雰囲気としてもありました。それより『もっとこうしたほうがいいんじゃないか』とか『次はこうしよう』とミーティングでも試合中でもつねにポジティブに、それも本心で言い合える関係にあったこと。それもスペインキャンプでの成果だと思いますが、それをシーズン中ずっと継続してできたことで、『チーム全員が同じ方向を向いてプレーできた。だから焦りや迷いなどなく自分たちを信じられた要因だったとぼくは思っています」

通常であれば、高い目標を掲げた「決意のシーズン」として臨んだ開幕序盤に、想定外の負けが続いたことで、チーム内を重苦しい空気が支配するケースも少なくない。しかしふたりとも共通して語っていたのは、明確な絶対目標がチームに共有されていて、それを自分たちなら必ず実現できるという信念に揺らぎがなかったからこそ、焦りにつながることなく前を向き続けられたということだった。野本選手は今シーズンを「負けから学んだシーズンだったし、個人としてもチームとしても、これまで以上に成長させてくれたシーズンだった」と総括してくれた。

東海大学から特別指定選手として加入した江原信太朗の存在感。

苦しい時期を乗り越えた滋賀レイクスはようやくチーム状態も向上。安定して勝ち星をあげていた。そんな矢先の2023年12月、チームに新しい戦力が加わる。全日本大学バスケットボール選手権(インカレ)でチームを決勝へと導くなど、バスケットボール界でも若きエースとして期待されている東海大学の江原信太朗選手が、特別指定選手として加入することが発表されたのだった。
江原選手はチームへの合流前にすでにホームゲームを観戦。そこでの印象として、雰囲気のいいチームであること、そしてなによりバスケットスタイルが好きだったことを挙げ、「早くこのチームに合流して、一緒に練習やプレーを楽しみたい」と語っていた。

江原「もともと東海大学でやってきたバスケットボールがヨーロッパスタイルのものだったのですが、滋賀レイクスのコーチがヨーロッパのスペイン出身で、戦術もヨーロッパのものだったので、すぐにチームにフィットできました。また自分の持ち味である3ポイントシュートを活かすこともできて、プレー面では合流した当初からかなりやりやすいと感じていました。またプレー面以外でも、いい意味で上下関係がなく、若手もベテランも関係なく全員がお互いに気を遣わずになんでも気軽に話せる環境だったので、それがコートのなかでのコミュニケーションにも繋がっていたのかなって思います」

2023年最後のゲームでのデビュー戦となった対ベルテック静岡戦では、相手ボールを何度も奪い、ディフェンス面で多大な貢献したほか、得意の3ポイントシュートを2連発で決めるなど大活躍を見せた。若きタレントの躍動も重なって、チームはその後も好調をキープ。連勝に次ぐ連勝を重ねていった。

連勝街道から優勝へ爆進するチームを支えた「全員リーダー」という思想。

年が明けてからもチームは連勝街道をひた走っていた。2月から3月にかけては8連勝を記録するなど、西地区優勝へ向けて順調に勝ちを積み重ねていた。ただ、そうした順調なときにこそ無意識の油断や慢心からくる綻びが生じたりするのもチームスポーツの難しいところであるのが通例だ。しかし今季の滋賀レイクスにはそうした油断の付け入る隙はまったくなかったといい、だからこそ「絶対目標」の達成につながったのだと、ふたりとも口を揃えて語った。

野本「今シーズンの目標を達成できた要因のひとつは団結力。そしてその団結力を引き出していたのは全員がリーダーシップを持って戦っていたことだと感じています。もちろんコーチも厳しく言うべきことは遠慮なくしっかり伝えてくれる。さらにいろんな選手がアンテナを張ってチームの緩みや綻びを見つけた瞬間に発信して引き締めてくれる。誰かが言葉かけてくれたことで助けられ、だからこそ自分もそうした声かけをして誰かの助けになろう。互いにそう思いながら同じ高みを目指してこれた。それが結果につながったと思います」

勝ちを積み重ねていると当然チームの雰囲気は良くなるのだが、そのいっぽうで慢心も出てくる。そういうときに気持ちを引き締める役割の選手がつねにいて、チーム全員がどれだけ勝っていても満足せず、さらなる成長を遂げるために練習に取り組む姿勢を誰ひとり忘れなかったことが今年のレイクスの強みだったと振り返る。監督やコーチ、キャプテンに限らず、チームの誰もが「練習がダラけてるから集中してやろう」といった声がけを、自ら発信してくれる。そういうチームこそがいちばん強いチームなのだろう。

江原「ぼくが印象に残っていて、今年のレイクスを象徴していると思ったのが、レギュラーシーズン優勝が決まった後の試合。ふつうなら心に余裕ができて、多少なりともダラけてしまうこともあると思うんですけど、でもレイクスは全員がまだもっといける、もっと勝ちたいというハングリー精神がありました。このチームの強みはとにかく慢心も過信もせず、もっともっと上を狙っていこうという貪欲さを持っていることだと感じました」

初の海外キャンプに始まり、コミュニケーションの深まりとヴィジョンの共有、若きタレントの補強や全員がリーダーともいうべき統率のとれた団結力の高いチーム。それが今シーズンの滋賀レイクスだった。そしてそのすべてが「B2優勝」「1年でのB1復帰」という「絶対目標」を掲げて挑んだことによるものであることは疑いの余地のないことだろう。

いよいよ後編ではB2プレーオフ進出からB1昇格を決めた瞬間にいたるまで、レイクスを支えてきたブースターと一緒にたどり着いた最高の景色について語っていく。