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Vol.77
スペイン2年目で見えた新しい景色、3年目で切り開く新たな地平
20歳のフットサル日本代表、世界最高峰リーグで挑む世界最高選手への道のり

原田快/プロフットサルプレイヤー

スペイン2年目で見えた新しい景色、3年目で切り開く新たな地平 前編
2024/10/10

世界に名をとどろかせるFCバルセロナのトップチームで、日本人選手がプレーする。そんな漫画の中のような夢物語を、現実として歩む選手がいる。原田快、20歳。サッカーと同様に世界的名門であるフットサル部門に招かれて、日本人選手として初めてトップチームの一員となった。スペインに渡って2年目での快挙だったが、決して順風満帆なシーズンではなかった。だが、そこで目にしたこれまで見たことのない景色を力に変え、スペイン挑戦3年目からの新たな地平を切り開こうとしている。

スペインでの2年目を前に掲げた目標

原田選手は、自らのチームを「B」と呼ぶ。愛称バルサの「B」ではない。トップチーム昇格を目指して若手が切磋琢磨する「Bチーム」のことだ。FCバルセロナ・アトレティックという正式名でスペイン2部リーグを戦っているが、あくまで選手たちは「Aチーム」、つまり世界の頂点を争うトップチームに入るべく、研鑽を積んでいる。バルサBでスタートしたスペインでの2年目、2023-24シーズンを前に、原田選手もそのための道筋を思い描いていた。

原田快「1年目はできなかった、トップチームに関わることをひとつの目標にしていました。そのために、自分のチームであるBで、ちゃんと活躍するということを目指しました」

ルーキーイヤーの2022-23シーズンには、すぐさま主力に定着して5得点15アシストという結果を残すことに成功した。「Bだったら、15得点15アシストくらい」と設定した目安も、2部リーグを1年間戦い抜いた肌感覚からすれば、決して高すぎるものではなかっただろう。

Bチームの選手たちにとっては、毎日がオーディションだ。「Aチームの監督はBの試合を見て、誰をトップに引き上げるとか、練習に参加させるかを決めます。それもあって、試合での活躍を意識しますね」と、Bチームの日々を振り返る。

率直に語って、初年度のような好スタートは切れなかった。だが、「その時」は突然訪れた。

原田快「Aチームで、急にケガ人が増えたんです。Bチームも同じ状態だったんですが、突然『ココロ、トップの練習に行くぞ』と言われて。それからAチームとBチームの練習を行き来していました」

トップチームで体験した「異次元」

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同じクラブでありながら、トップチームでは練習から「異次元」が広がっていたという。

原田快「レベルが全然違います。練習中にもオーバーヘッドでゴールを決めたりするんです。驚くようなプレーが多くて、最初の頃は『うまいな、どうやったらできるんだろう』と思いながら見たり、一緒に練習していました。
映像もよく見て、技術を盗もうとしていました。1対1の技術など攻撃のバリエーションを増やしたかったので、うまい人の真似をして、自分もうまくなろうとしていました。その技術をBの練習でも試すことで、だんだんと何をやっているかが分かっていきました」

AとBの行き来を続けて4週間後、さらなる朗報が届く。正式に、トップチームの試合のメンバーに入ることが決まったのだ。

原田快「ある日の練習後、『今週、試合のメンバーに入るぞ』と言われました。めちゃくちゃうれしかったですね。そうしたら、責任者の方が冗談が好きな人で、『ユニフォームの在庫がないんだ。Bチームと同じ5番か、それとも0番のどちらがいい?』と聞かれたんです。0番というのはベンチ外、という意味なので、『5番でいきます!』って答えました(笑)」

バルサBの試合は、練習で使っているアリーナを会場として使用する。2部リーグということもあり、観客は多くても300人程度だというが、トップの試合になると、まさに“ケタ違い”となる。約7500人収容の「パラウ・ブラウグラナ」が人々の熱気で埋まるのだ。

原田快「観客席から見るのと、実際に中に入るのとでは、聞こえてくる歓声も全然違いました。最初の試合ではまったく出られなかったんですけど、あり得ないくらいに緊張しました。会場に向かうバスの中で、チームメイトに『オレ、緊張してる』って言ったら、『使ってもらえなくなるから、絶対監督にそんな話はするなよ』って笑われました。基本的に緊張することなんてないから、たぶん人生で一番緊張したと思います」

「世界一の選手」になるため必要なもの

試合が始まってからも、新たな驚きと発見があった。

原田快「練習中とは、全然プレーが違うんですよ。練習からプレー強度は高いんですけど、ケガをしないようにやるので、まだ本気じゃない感じはありました。でも試合になると、一気に強度が上がるんです。トップで試合に出るようになっても、ボールに一切触れられない時期がありました。足手まといというか、やりづらかったと思うんですが、最初はまったくボールが回ってこなかったんです。先ほど話したように、盗むように技術を学んで、プレーのタイミングも周囲とまったく同じように真似することで、だんだんとプレーに入れるようになっていきました」

出場はかなわなかったものの、欧州の頂点、つまり世界一を決めるUEFAフットサル・チャンピオンズリーグの決勝トーナメントも体感した。

原田快「チャンピオンズリーグではファイナル4に残る前から帯同していて、そのリーグ戦もすごかったんですが、決勝ラウンドになると全然雰囲気が違うんです。皆、本気で勝ちにいく、負けちゃいけない、という雰囲気を醸し出していました。そういうものを感じることができました」

バルサのトップチーム、つまり世界最高峰を体感することで、自身の大きな目標である「世界一の選手」への距離感もつかめたようだ。

原田快「足りないものは、いっぱいあります。ゴールに向かう意識や攻撃のバリエーション、体の強さとか…。体の厚みが全然違うんですよ。体幹がめちゃくちゃ強くて、バンと体をぶつけられても倒れない。そういうものを、僕も取り入れたいなと思いました。僕自身、攻撃面は平均よりも上だと思うんですが、ディフェンス能力が足りません。例えば、相手に裏に走られた時に腕を使って止めるとか、僕が全然できない点をトップチームの選手には何度も指摘されました。そういう守備ができるようになれば、あのレベルでも戦っていくことは可能なのかなと思います。でも、全然Bチームと違うと思ったのは、ゴールに向かう姿勢ですね。トップチームだったら、ボールが空中にあろうが、どんな体勢でもゴールに向かうんですよ」

原田選手もまた、自分のゴールから目をそらすことなく、前進を続けていく。