滋賀レイクス 野本大智・游艾喆・長谷川比源
バスケットボール
2024年、台湾の国立政治大学を卒業したばかりの新星。FIBAバスケットボールワールドカップ2023アジア地区予選にもチャイニーズ・タイペイ代表として出場し、日本との試合でも活躍したアジアで注目の逸材だ。そして昨シーズン、オーナーである中山太社長による直々のオファーにより、滋賀レイクスで日本でのプロキャリアをスタート。台湾では大学選手権4連覇個人タイトルも総なめというまさに無双状態だった游艾喆(ユウ・アイチェ)選手。初めての日本でのプレー、そして初めてのプロのシーズンを終えてみて、いまの率直な思いを語ってもらった。
プロ選手として日本で戦えることに、喜びと誇りを感じた1年だった。
海を超え、異国の地である日本で自身のプロとして初めてのシーズンを迎えた游選手。さまざまな戸惑いや不安もあったなかで、10月のレバンガ北海道戦では18ポイント9アシストと大活躍。その後もトレードマークになりつつあるノールックパスなどの高いテクニックでチームにもフィットしていった。得点力も上がってきて、ますますその存在感が高まっている彼のプレー。本人に今シーズンを振り返ってもらった。
游「チームの成績はあまり望んだ結果が得られず、それに対しては失望しているし、残念だったと感じています。なによりブースターに申し訳ないという思いがあります。ただ、自分にとってはとてもいいシーズンだったと思っています。初めてプロのバスケットボール選手としてプレーできたこと、それもBリーグというアジアで強いリーグでプレーすることができたことは、自信にもなりましたし、すごくうれしいことでした。もちろん反省点はたくさんあります。反省点ばかりといってもいいかもしれません。シーズンを通して自分のパフォーマンスが安定していなかったことは否めないでしょう。しかしそれでもチームのスタッフやチームメイト、そしてブースターのみなさんが私のことをずっと応援し続けてくれたこと、私のことを諦めなかったことに心から感謝しています」
初めてのプロ、初めての日本でのプレー。とくに最初は日本語が話せないことで、コミュニケーションの課題を感じていたという。ただレイクスには外国人選手も多く、普段から英語でコミュニケーションする環境もあったので、英語で話すことで少しずつチームにもフィットしていけたという。そして彼は続けて、プレー面における個人の課題についても語ってくれた。
游「台湾時代はまだ大学のリーグでしかプレーしたことがないので単純な比較はできませんが、それでもやはりディフェンスにおけるフィジカルの強さやひとつひとつのプレーの強度が、台湾の大学時代とは比較にならないほどはるかに強いと感じました。その差をなんとかして埋めるために、とにかく毎日ハードな練習とフィジカルトレーニングを自らに課してきました。とくにいちばん身近にいる野本選手をお手本として、学び、競いながら、できるだけ野本選手のレベルに追いつきたいと、その思いを持って日々の練習に取り組んでいました」
隣でその話を聞いていた野本選手は「へえ。それは知らなかったです」と笑い、これからも手本にしてもらえるように自分もさらにがんばらないといけないですね、と游選手に声をかけた。口数は決して多くはないが背中とプレーで引っ張るタイプの野本選手と、言葉がわからない外国出身の游選手。タイプの異なるふたりによる無言のリスペクトとコミュニケーションは、いまのレイクスのスタイルを象徴するエピソードなのかもしれない。
オフの日は散歩や台湾の家族との電話など、リラックスすることに努めている。
日本に来た当初は食文化の違いにも戸惑ったという游選手。しかしそれもすぐに慣れ、いまでは日本の食べ物が大好きだという。とくに焼肉とラーメンが大好きで、以前は長谷川比源選手といっしょに練習場近くのラーメン屋さんに食べに行ったりもしていたという。多様で素晴らしい食文化を持っている日本食が大好きで、苦手なものはとくにないという彼だが、食生活を含めたふだんの栄養管理やコンディションづくりについて、課題や取り組んでいることがあるという。
游「じつはちょうどまさに日本に来るというタイミングでインフルエンザに罹ってしまい、体重がかなり減ってしまった状態でチームに合流したんです。だから当時はトレーナーの方に、とにかく毎食たくさん食事を摂るように言われました。いまもふだんはプロテインをしっかり摂るようにしたりして、身体の大きな選手や強度の強いプロの選手たちに負けない身体づくりを心がけています。あとは毎朝、朝ごはんの後にサン・クロレラパウダーを水に溶かして飲んでいます。WUBSのサン・クロレラがスポンサードしていたので実は大学時代からサン・クロレラのことは知っていました。ただ飲み始めたのは日本に来てからです。身体の中の老廃物を排出して、腸の健康を維持できると聞いて飲み始めました。でもなにより心の中で安心感があることがいちばん大きいですね」
またオフの日の過ごし方やリフレッシュ方法を尋ねてみたところ、オフの日は家で静かに過ごすことが多いのだそうだ。「家から琵琶湖が見えるので、家で音楽を聴きながら琵琶湖を眺めたりするのも、リフレッシュできて好きな時間です」と教えてくれた。ほかには台湾にいる家族とテレビ電話で話したりすることも、家での楽しい時間なのだという。じつは彼には兄と弟がいて、ふたりともバスケットボール選手なので、YouTubeでライブ配信されているレイクスの試合を見てもらって、その日の試合のパフォーマンスについて良かったことダメだったことなどを話し合ったりする。故郷から離れてひとり異国で暮らす彼にとって、心を許せる家族とのなにげない会話こそが、最大のリフレッシュの時間になっているのだろう。
【ブースターからの質問への回答】目標の選手/おすすめの台湾料理
Q1 目標とする選手はいますか?
游「河村勇輝選手は憧れの選手です。日本代表での彼のプレーを見て、自分も日本でプレーしたいと思ったので。また彼も自分と同じように身長の低いポイントガード。年齢も同じだし、とても共通点が多かったので台湾にいるときから彼のプレーには注目してきました。あとは彼に限らず日本のポイントガードは能力高い選手がたくさんいるので、学ぶところがいっぱいまだあると感じています」
Q2 故郷・台湾の料理で游選手おすすめのものはなんですか?
游「ルーローハンですね。甘辛いタレで煮込んだ豚バラ肉をごはんにのせて食べる、台湾料理の定番のメニューです。とってもおいしくてボリュームもあるのに価格も手軽なので、私は大学時代には週に3回くらい食べていましたよ」
異国から来た自分に優しく接してくれたブースターに、勝利を届けられるシーズンに。
昨年、台湾を離れ、日本に来たばかりのころは、やはり食べ物や気候など、いろんな面で慣れていないことも多く、戸惑うこともたくさんあった。しかしチームの選手やスタッフが親切に接してくれたこと、とくに街を歩いているとブースターから優しく声をかけてもらえたり、周囲の人がみなファミリーのようにあたたかく接してもらえたりしたことで、まるで地元にいるみたいな気持ちになれたのだと彼は語ってくれた。
游「試合や練習のある日も、オフの日も、毎日を安心して過ごせるようになったこと。それが自分にとって大きかったと思いますし、みなさんに感謝したいと思っています。そしてだからこそ、来シーズンは日本のみなさんの目の前でもっと多くの時間プレーしたいと思っています。そしてチームとして1試合でも多く勝利という結果をブースターのみなさんと共有すること。そのために自分の全力を尽くしていきたいと思っていますので応援お願いします」
4年連続大学選手権優勝をはじめ、MVPなどあらゆるタイトルを獲得し、台湾では英雄との名をほしいままにしてきたスタープレーヤーだった游艾喆選手。当初はプロのフィジカルの強さに苦戦しながらも、シーズンが進むにつれてその高いポテンシャルを見せつけてきた。来季さらに得点力がアップすれば、レイクス雪辱の来シーズン、チームの躍進を牽引するキーパーソンになることは間違いないだろう。さらなる躍進に期待したい。