滋賀レイクス 野本大智・游艾喆・長谷川比源
バスケットボール
いまから5年前のこと、グローボーラーズの記念すべき第1期生として選ばれた才能豊かな少年。それが長谷川比源選手だった。コロナ禍で海外渡航ができなかったため、アメリカの高校進学は叶わなかったが、その才能によってみるみる頭角を表し、強豪ひしめく関東大学バスケットボールに属する神奈川大学に進学。U22日本代表にも選ばれた。その彼が大学でのキャリアに別れを告げ、プロの世界へと足を踏み入れたのが昨年のこと。衝撃デビューから半年経ったいま、プロへの想いと来季に向けた抱負を語ってもらった。
大学を中退して、シーズン途中から加入した次世代ヒーローが体感した、プロの凄み。
身長202cmのビッグマンは、苦境にあえぐ滋賀レイクスの救世主となるべく、シーズン途中であった昨年12月に神奈川大学を中退して加入した。サイズが足りないレイクスにとって彼の加入によってリバウンドの回収などの面で大きな改善が見られた。結果こそ出なかったものの、彼の存在がチームとしての方向性と、飛躍への期待感を高めていたことは間違いないだろう。
大学を中退し、シーズン途中からいきなりプロの世界に飛び込んできた。若干ハタチの長谷川比源にとって、そうしたハードなプロの環境への適応は、生やさしいものではなかったに違いない。そのあたり率直な思いを伺ってみた。
長谷川「大学を中退してプロの世界に入って、まずいちばん驚いたのはひとつひとつの試合に入るまでの準備の入念さ、それから1試合にかける熱量の高さ。それがプロとアマチュアの最大の違いだと感じました。自分はどの試合も準備は学生時代からかなりやってきていたほうだとは思うのですが、それでもかなりの差を感じました。プロはやはりバスケが仕事ですし、なにより人生がかかっている。だから、あたりまえといえばあたりまえかもしれませんが、選手ひとりひとりの目つきが学生とはまったく違いますよね。練習の段階でひとりひとりの熱量がものすごく高いですし、なによりまずその部分でアジャストするのが出遅れたと感じました」
そう語る長谷川選手は英語が話せることもあり、チームでは昨年の得点王だったブロック・モータム選手と積極的にコミュニケーションをとることにした。ブロック・モータム選手の練習を見ていて彼が気づいたのは、時間的にはそこまで長くないいっぽうで、動きながらのシューティングなど、つねにゲームを想定した具体的なシチュエーションを意識して練習していた。そういうトップ選手によるレベルの高いプレーや練習を間近で見たり、コミュニケーションをとったりすることができたことで、彼自身のプレーや練習への意識を変えることができた。それが最大の学びだったと彼は語ってくれた。
そしてそれは、やがて結果にもつながっていく。大事な場面でシュートを任されるシチュエーションが増えていき、チームからの信頼を勝ち得ているのが実感できた。シーズン後半戦ではダブルダブルも達成し、着実に成長を遂げることができたプロファーストシーズンだったと彼は振り返る。
長谷川「プロの世界ではやはり頭を使う場面も多かったし、もちろんフィジカルも強度も高いので、いつも以上に疲れました。あと、自分はこれまでのバスケット人生においてスタートから出るのがあたりまえだったのですが、ベンチスタートも経験しました。その際に、自分がベンチから出てすぐに活躍するには何が必要なのか?あるいは逆に自分がスタートで出た際に、交代で出てくる選手に自分はどうすればいい影響を与えられる?かなど、スターターとリザーブの両方の視点からゲームを見ることが学べたシーズンだったと思います」
すでに中学生の頃から愛飲しているという、サン・クロレラパウダー歴5年のベテラン。
キャプテンの野本選手同様、長谷川選手も睡眠時間はすごく大事にしていて、ふだんは10時間寝るようにしている。しかし野本選手のようにきっかり眠る時間を決めているわけではなく、その日によってバラバラなのだそうだ。寝過ぎても良くないといった意見も散見されますが、彼の場合はとにかく寝れば寝るだけ身体の調子がいいということで、たとえばオフの日だと半日くらい寝ていたりすることもあるのだという。
長谷川「睡眠のほかには、やっぱりサン・クロレラも健康管理やコンディショニング調整のうえで欠かせないアイテムのひとつです。とくに自分はグローボーラーズの第1期生だったこともあり、中学生のころからサン・クロレラのことは知っていたし、中学3年生のときからもう4、5年ほどサン・クロレラパウダーをオレンジジュースで割って飲むことが、ぼくの毎朝のルーティンのひとつになっていますから」
そんな長谷川選手のオフの日のリフレッシュ方法は散歩。以前は游選手と同じく琵琶湖のそばに住んでいたこともあり、湖の美しい風景を眺めながら、ぶらぶら散歩してリフレッシュに努めていたという。また夜、眠りに就く前に瞑想する時間を設けているのだそうだ。目を瞑り、1日振り返る。反省すべき点、明日なにをなすべきか。自分と向き合い、自分に問う、リセットの時間である。瞑想時間はとくに決めず、自分が納得するまで続ける。それによって翌日の練習に、明確な課題を持って臨むことができるというわけだ。こうしてみるとアスリートの日常は意外とシンプルでストイック。華やかな舞台での活躍は、こうした地道なルーティンの積み重ねによって生み出されているのだ。
【ブースターからの質問への回答】プロになって始めた趣味
Q1 プロになってから新たに始めたことはありますか?
長谷川「いまはバッシュを集めています。自分の好きな色やデザイン、派手なものからシンプルなものまで、いろんなタイプのバッシュを履いてみたいなと思ったので。シューズはやっぱり試合中に自分の個性を出せる数少ないアイテムだと思うので、これからもできるだけいろんなバッシュを履いてみたいなと思っています。いまいちばんのお気に入りは“コービー6”と呼ばれているもの。デザイン的にもすごくオシャレでカッコいいし、次また同じシリーズの新しいアイテムが出る予定なのでそれを狙ってます(笑)」
いよいよ初めてフルシーズンの戦いに挑む来季にかける、若き天才プレーヤーの思い。
そして、来季。長谷川比源選手にとっては初めてフルシーズン戦うことになる1年間でもある。チームスタッフやチームメイト、そしてブースターに向けて、自身がワンシーズン通してチームに貢献できるプレーヤーであることを証明するためのシーズンでもあるのだ。そのことは本人も百も承知だ。しかしそれでもなお、来季への抱負を尋ねると彼の口から出てきたのはチームとブースターへの思いだった。
長谷川「来季はとにかくひとつでも多くゲームに勝つこと。それが目標です。なぜなら自分は途中加入ではありましたが、それでもやっぱりチームとしてはいろんな面で悔しい思いをしたシーズンだったことは間違いないからです。でもそのなかでも収穫は少なからずあったし、ほんのわずかな差が勝ちにつながらなかったゲームも多かった。だから悲観していませんし、来季はブースターの皆さんと、より多く勝利の瞬間の喜びを分かち合いたいと思っています。そして自分はまだ若く経験も少ないですが、年齢やキャリアに関係なく、発信できることは発信して、チームとして勝つことに貢献していきたいと思っています」
静かな口調でシンプルではあるが、強い想いと決意を感じるメッセージだった。リーグ最下位という悔やしい経験をしたメンバーこそが、率先して来シーズン引っ張っていかないといけない。そして誰より自分自身がチームを勝たせられる選手にならないといけない。そうした強い決意を感じた。まだ20歳になったばかりの彼ではあるが、すでにレイクスを引っ張っていく存在になりつつある。身長202cmで未だ成長中とのことだが、身体だけでなく精神面で大きく成長した彼の、来季のアリーナでの活躍がいまから待ち遠しい。