越圭司
バスケットボールプレーヤー
越圭司。今年16歳を迎える日本のバスケットボーラーなら、一度は彼の名前を聞いたことがあるのではないだろうか?琉球キングスU-15に所属し、数々の大会で高いパフォーマンスを見せてきた、この年代のNo.1ポイントガードだ。彼は、日本で実績を引っ提げ、次のステージとしてアメリカ・ネブラスカにあるConcordia Lutheran Schools of Omahaを選んだ。NBA選手を日本から輩出することを目的とした中学生年代育成プロジェクトGLOBALLERSの4期生と5期生に2年連続で選ばれ、そこから掴んだ新たなチャレンジだ。今回は渡米を控えた彼に、これまでのGLOBALLERSアメリカ遠征で感じたこと、今後の挑戦に懸ける想いを語ってもらった。
【越圭司 × GLOBALLERS】
GLOBALLERSに2年連続で選出された越圭司。1年目は“年下ながらもチームを懸命に引っ張るムードメーカー的存在”として、そして2年目は“個性派集団をまとめ牽引する”チームリーダー的存在として、それぞれの年で意識したことや感じたことは大きく違ったという。
「1年目は、自分が年下という立場でも、ポイントガードとしてチームを引っ張れるように、積極的にコミュニケーションを取ることを意識しました。2年目はさらにリーダーとしてチームをまとめることに注力しました。1年目にある程度結果が出たことで、自信にもつながりましたね」
――この成長を裏付けるのは、越だけではない。過去にGLOBALLERSプロジェクトに身を置いた選手たちの躍進が、それを物語っている。5期生だけを見ても多くの選手がユース代表候補に名を連ねたし、Bリーグ最年少出場記録がGLOBALLERSの卒業生たちによって更新されていった実績もある。また1期生の長谷川比源は、すでにBリーグで実績を積みながらNBAの試金石であるGリーグへの挑戦権も得ている。
日本の舞台で選手たちが活躍できる背景には、アメリカ遠征での刺激や経験が少なからず寄与しているのは間違いない。GLOBALLERSという“挑戦の場”が、越を含めたGLOBALLERSメンバーに与えた意識の変化は数字や記録だけでは語り切れない大きなものとなっている。
【初めて味わったアメリカの激しさ】
国内トライアウト、国内キャンプ、そしてアメリカ遠征。越圭司にとって、最も鮮烈に記憶に残っているのは、2年目のアメリカ遠征の初戦だった。
「初戦でのプレーは衝撃的でした。あんなに迫力があって、ボールへの執着心や勝ちたいという気持ちを前面に出してくる相手は初めてでした。でも、負けなかったことで自信がつきました」
越が手応えを感じたのは、自分の武器であるスピードだった。だが、フィジカルコンタクトや高さの差は、確実に課題として残った。だからこそ、筋力トレーニングを続け、自身の強みを最大限に生かすことを意識している。
昨年のアメリカ遠征を振り返れると、越はリーダーとしての役割を背負いながら全力でその責務に向き合っていた。1年目はただガムシャラに挑む姿だったが、2年目はリーダーとしての責任とプレッシャーが重くのしかかり、本来の力を出しきれない場面もみられた。
だが、越の中で新しい環境で自分を表現し仲間をまとめ、プレーで示す――この一連の経験は、どんな舞台でも通用する表現力や適応力の成長につながる。彼にとっては単なるバスケットボールの技術向上ではなく、選手として、人間としての成長のチャンスだった。
越はこの夏からアメリカに留学する。英語圏の環境下で自分を表現する経験も積むことになる。プレーだけでなく、自己表現と判断力を研ぎ澄ませることが、越の次なる挑戦――D1からのオファー――への布石となるのだ。アメリカ遠征での激しさに直面し、越圭司は自分のプレーと心を、さらに研ぎ澄ませていった。
【日本に帰ってからのプレイスタイル】
越圭司のプレーにおいて特筆すべきは、単なる技術向上ではなく、チームの中での役割を理解し、それをプレーで表現できる力だ。日本では必ずしも評価されない積極的なシュート選択や、チームを引っ張るリーダーシップも、もともと備わっていた能力をベースにアメリカでの経験を経て強化できた点である。その変化は、越自身も感じていた。
「スピードの緩急をうまく使えば、日本でも相手を抜くことができると分かりました。試合では『絶対に勝つんだ』という気持ちを前面に出すようになったことが、去年のジュニアウィンターでの成果につながったんだと思います。シュートに関しても、チャンスがあれば自信を持って打つ。外す可能性があっても、強気で打ち切る。その判断は、セルフィッシュにならない範囲で徹底しています。」
アメリカ遠征を経て、彼は確実に変わった。
体格差という現実の壁にぶつかり、打ち砕かれそうになりながらも、工夫を重ね、自ら突破口を切り開いていった。そして2年連続でGLOBALLERSに選出され、仲間を引っ張るという責任とプレッシャーを背負いながら、堂々と自らの力を示してみせた。
その経験のすべてが、帰国後の大会での躍動につながっている。
越圭司のプレーは、アメリカでの経験と日本での工夫が融合した結果だ。スピード、判断力、勝利への執念――すべてが、彼を新たなステージへと押し上げている。
【奨学生選出とアメリカでの高校バスケ】
越圭司がGLOBALLERS奨学生に選ばれた瞬間、彼の長年の夢がまた一歩、現実味を帯びてきた――。小さな頃から胸に抱き続けたアメリカでの挑戦。それがついに、目の前に現れたのだ。
「小さい頃からアメリカでバスケットをしたいと思っていたので、本当に嬉しかったです。NBAという夢に少しでも近づけたと感じました」
次の舞台はネブラスカ州、Concordia高校。
「日本人らしく謙虚に、でも泥臭く戦う姿勢を見せたいです。正PGとして州No.1になることが目標です。楽しみな気持ちの方が大きいですね」
未知の環境に飛び込む高揚感は、挑戦への意欲を加速させる。PGとしてチームの中心を担い、州の頂点を狙う。その言葉には、自信と責任感がにじんでいた。
準備は抜かりない。高身長の選手に対応するフローターやレイアップを磨き、遠距離からでも一瞬の隙を突いて放つディープスリーを習得。ステファン・カリーの映像を何度も見返し、自分の動きに落とし込む。小柄でも世界で戦うための“武器”を、越は着実に増やしてきた。そしてもう一つ欠かせない日課がある。GLOBALLERS参加後から続くサン・クロレラの活用だ。朝と寝る前、習慣として身体に取り入れることで、練習のパフォーマンスを高め、足取りを軽くし、疲労回復に必要な条件をそろえていく――。
「僕は毎日、体のコンディションを整えるために、サン・クロレラの粒タイプを飲んでいます。
クロレラに含まれている栄養素をみて『これはどんな栄養成分なんだろう?』と、少しずつ勉強しています。飲み始めてからは、どれだけハードな練習や試合があっても、『よし、乗り越えられた!』と思えることが増えました。」
――このルーティンはアメリカでも続ける予定だ。未知の環境でも、自らのコンディションを最適に保つ知恵とこだわりがここにある。
アメリカで求められるのは、単なる技術やコンディション維持だけではない。スキルやフィジカル面で致命的な弱点を作らず、チームの中で自分の役割を理解し、コート上で表現する力。何でもできる選手となりながら、その中で自分の強みを際立たせる。
3Pも打てる、スピードの緩急を駆使してフローターも打てる。圭司の“考える力”が確実に活きる瞬間だ。そして、彼の背の小ささは弱点ではなく個性になる。アメリカという新たな舞台で、越圭司にしかできないプレーを見つけ出し、磨き上げる――。その未来は、限りなく大きく、明るい。