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2020/08/03
アスリートフードマイスターに聞く!~スポーツのための食事~ Vol.4 バスケットボール編 臼井隆浩選手

【3人制バスケットボールの臼井隆浩選手の食生活習慣をチェック】

東京五輪の正式種目に採用されるなど、近年人気が高まっている3人制バスケットボール、通称「3×3(スリーエックススリー)」。今回、食生活習慣をチェックする臼井隆浩選手(32)は京都に本拠地を置くプロチーム「KYOTO BB.EXE」に所属し、着実に力を付けているチームの中心プレーヤーとしてひときわ強い存在感を放つ。掲げる目標は「3×3で日本一」。卓越した技術を持つプロのアスリートにおいても、食生活習慣の改善によりレベルアップが可能となる。臼井選手へのアンケート結果などをもとに、奥村(生産開発部研究開発グループ所属)がさらなる飛躍の秘訣を分析した。

「糖質量増やして集中力アップ」

はじめに、事前にご回答いただいたアンケートや食事記録のデータを整理します。臼井選手の身体計測値は身長192㌢、体重95㌔(早朝空腹時)。トレーニング頻度は週4、5日。食生活習慣については、野菜の1日摂取量は小鉢2~3杯で、果物は週4~5日、牛乳や乳製品はほぼ毎日摂取されているとのこと。なお夕食時は炭水化物を控えており、夕食時間が午後9時を過ぎてしまう日が週2~3日。また、臼井選手の「1日の食事例」は以下の通りとなっています。


※プロテインは脂質2.2g、タンパク質22.9g、炭水化物5.0g。スポーツドリンクは1日当たり1.5L

さて、以上のデータを整理した上で、まず素晴らしいと感じたのがカルシウムが多い牛乳を毎日摂取し、昼のお弁当でもビタミン、ミネラルを摂れるよう数種類の野菜を摂られているところです。

逆に気になった点は、摂取している糖質※1の量が少ないことです。糖質は体を維持するために必要なエネルギー源です。糖質の摂取量が少なければ、体をつくるたんぱく質からエネルギーがつくられてしまいます。その結果、筋肉量や筋力を低下させてしまう恐れがあります。また糖質量が不足することで、脳に使われるエネルギーが不足し、注意力や集中力が低下してケガにつながるリスクも高まってしまいます。

※1糖質は脂質、たんぱく質と並ぶ3大栄養素の1つとして米や小麦などに含まれます。糖質は体のエネルギー源です。また、糖質と食物繊維を合わせたものを炭水化物として総称。

「必要な糖質量475gをどう摂取するのか」

食事記録からは、ごはんやパン、麺等の糖質を多く含む食品の摂取が少ないように感じました。国際的にコンセンサスが取れたアスリートの糖質摂取の推奨量※2によると、「継続時間が中程度で低強度のトレーニング」の場合、体重1kgあたり5~7gを目安とされています。つまり最低でも、体重1kgあたり5gの糖質量の摂取を意識することをお勧めします。臼井選手は体重(95㌔)から算定された必要な糖質量は475g。糖質は、ごはんやパン、麺類以外にも野菜、果物、牛乳・乳製品、菓子、飲料等にも含まれており、475gを摂る場合は下記のイメージになります。

▽1日で475gの糖質を摂れる食品の例

さて、そこで臼井選手の食事記録をもとに、糖質を多く含む食品から推定で算出したところ、糖質量は下記となります。

▽現在摂取している食品に含まれる糖質量

つまり、臼井選手に追加で必要な糖質量は239g。トレーニングの日に必要な糖質量475gを補うためには、さらに下記の食品を追加していただきたいと思います。

▽追加摂取をおすすめする食品に含まれる糖質量

これらの食品を追加する場合、糖質を多く含む食品を摂られていない夕食でも、ご飯を摂っていただいた方が良いかと思います。また、食べる量を朝・昼・夜の3食に限らず、トレーニング後に補食を追加することで、効率よく糖質を補うことが可能です。例えば、臼井選手は夜9時以降に夕食を食べられる日が週に2~3日あり、昼食後に時間が空いているのが気になります。そこで、午後3時のトレーニングが終わってから夕食までの間にハムのサンドイッチ1個とバナナ1本を補食として補ってみてはいかがでしょうか。

普段足りていないと思われる食事の摂取量を増やしたことで、体重が増えることは問題ありません。体重の増量は筋肉をつけるためにも必要で、バスケットボールなどのコンタクトスポーツでは当たり負けしない体づくりも重要な要素の一つです。気をつけていただきたいこととして、夕飯後の夜21時以降にアイスを食べられている場合、消化に負担をかけてしまうので、脂肪分の多いアイスは控えてください。ご自身の活動状況に合わせて食事での糖質量を増やせるよう心掛け、さらなる競技パフォーマンスの向上につなげて欲しいと思います。

アドバイス実践し「疲労感がましになった」

栄養相談を受けて以降、さっそく奥村のアドバイスを実践したという臼井選手。指摘をもとに必要な糖質量を確保するために食事量を増やした結果、以前までの疲労感は感じなくなったという。「自分には何が足りないのかを考える良い機会になった。食事を見直すきっかけにもなり、アドバイス内容も実践しやすかった」と納得の表情で語った。今後、目標の「3×3日本一」に向かって日々研さんする上で、今回の食生活習慣チェックが大きな分岐点となるのかもしれない。

※2国際的にコンセンサスが取れたアスリートの糖質摂取量の推奨量
出典:L.M.Burke,et al. Carbohydrates for training and competition. Journal of Sports Sciences, 2011;29(S1):S17-S27

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