【アスリートフードマイスターに聞く!Vol.23 バスケットボール編 岡田大河 選手】
15歳で単身スペインに渡り、マドリードの名門チーム「Zentro Basket Madrid(セントロ・バスケット・マドリード)」のジュニアカテゴリ(カンテラ)で活躍したのち、わずか17歳でEBA 4部リーグでのプロデビューを果たした岡田大河選手(19)。2023年9月にフランスリーグに属している「AS Monaco Basket U21」へ移籍し、更なる成長を目指している。
2021年2月には当コラムでも岡田選手の食生活習慣を分析し、奥村(生産開発部研究開発グループ所属)が「夕食の分食」などについてアドバイスを送った。あれから2年以上の月日がたち、岡田選手の「食」について再度スポットライトを当てた。
1週間の食事記録をチェック
はじめに、事前にいただいた1週間分の食事内容を、それぞれチェックしていきます。
※2023年5月、スペイン在住の食事です。
月曜日のメニューは、野菜の摂取が少ないように感じます。朝食のオートミールは主食ですが食物繊維が多く、腹持ちが良いので、食べる量が少なくなりがちです。一方で糖質を多く含むバナナ、オレンジ、りんごを食べているため糖質量はカバーしていますが、たんぱく質を多く含む食品があると良かったです。
火曜日に摂った野菜はピーマン、海藻サラダ、カボチャのポタージュスープと充実しており、非常に良いと思います。また、スクランブルエッグやロシアンステーキ、エビ、メルルーサなど、卵、肉、魚といった多様な食材からたんぱく質を摂れています。
1日通した食事内容を総合してもバランスが取れていると思います。
水曜日のメニューは、ホットドッグのウインナー、目玉焼き、ボロネーゼのひき肉、ロースハム、スクランブルエッグ、チキンソテーとたんぱく質がしっかり摂れています。
ズッキーニと人参、シーザーサラダ、ブロッコリーと野菜も種類が多いです。こちらも1日でバランスが取れた食事内容だと思います。
木曜日のメニューは、スクランブルエッグ、レンズ豆、エンドウ豆、メルルーサ、サーモンと卵、豆類、魚類と多様な食材からたんぱく質を摂れています。1日を通して、バランスが取れた食事内容だと思います。
金曜日は、1日のうちにバナナやリンゴ、オレンジと果物を種類多く食べているのは良いです。また、昼食と夕食でサラダを食べていて、野菜の摂取も意識できています。朝食はたんぱく質を多く含む食品をあと1品プラスできると良いと思います。例えばヨーグルト1個をプラスすることもお勧めです。
土曜日のラタトゥイユはなす、玉ねぎ、ズッキーニ、パプリカ、トマトなど多くの野菜が摂れるため、野菜を食べたい時にお勧めのメニューです。目玉焼き、チキンフィレ、ツナ、オムレツと卵、肉類、魚類と多様な食材からたんぱく質を摂れているのは良いです。1日でバランスが取れた食事内容だと思います。
日曜日は、朝のサラダパスタに、たんぱく質源となる卵やハム、ツナがあると、たんぱく質をしっかり摂ることができます。また、サラダはレタスの葉物野菜だけでなく、トマトやブロッコリーなどの抗酸化物質を含む色の濃い野菜も食べることができるとなお良いです。
ここまで岡田選手の1週間の食事内容をチェックしました。基本的にエネルギー源となる糖質はオートミール、米、麺、パン、コーンフレークなどで毎食欠かさず食べることができていました。たんぱく質を多く含む食品や、野菜も毎食欠かさず摂れると理想的です。
あらためてコンディションを維持するうえで重要な食事のポイントをこれから説明していきます。
コンディションを維持するための食事の考え方
一つ目は「エネルギー源となる糖質を含む食品を摂る」ことです。この糖質を毎日きちんと摂るためには、ご飯やパン、麺、コーンフレークなどを毎食欠かさないことが大切です。
そして、二つ目には「筋肉や骨、血液をつくるたんぱく質を摂る」ことが挙げられます。このたんぱく質は、肉や魚、卵のほか豆類から偏らずに食べることができると良いです。
最後の三つ目は「体の調子を整えるビタミン、ミネラルを摂る」ことです。ビタミン、ミネラルは野菜や果物、牛乳・乳製品に含まれており、それぞれの摂る頻度として野菜は毎食が望ましく、果物と牛乳・乳製品は一日1回摂るように心掛けてください。
また、コンディションを維持するための食事例として、下のイラストを参考にしてください。
自炊にお勧めの食材!inスペイン
次に、岡田選手は自炊をすると伺っているので、インターネットで掲載されていたスペインのスーパーの食品を参考に食事メニューを検討しました。参考までにご紹介します。
一人暮らしの自炊ですので、手軽で便利というポイントで挙げています。まず、トマトソースとツナもしくはイワシ、サバなどの缶詰があれば、パスタ料理にも主菜の一品にもなります。そして、魚の缶詰や生ハムはサラダの具材としても使えます。また、スペインのスーパーでは、調理が簡単なスパニッシュ・オムレツのほか、ハンバーガー用のお肉もあるようです。下ごしらえの手間もないので便利だと思います。
野菜・果物が食べられない時は、トマトジュースやガスパチョなどのトマトを使った飲み物や、オレンジジュースなどの果物ジュースで代用することをお勧めします。
スペインでの食事は日本と異なるところもあるかと思います。そのため大事なことは、食べた時に体調に合わない食品は控えるということです。また、試合の日は緊張で胃腸の調子も崩しやすくなるので、試合前日に食べたもので調子が良かったものや悪かったものを自分自身で把握しておくことも大切です。
パフォーマンスを維持するための補食
続いて、バスケットボールで大事なエネルギー源について説明していきます。まず、運動時のエネルギー源は糖質と脂質です。日々の食事で摂取した糖質は肝臓や筋肉にグリコーゲンとして蓄えられていますが、貯蔵量は脂質と比べて少ないことが知られています。運動時はこのグリコーゲンが使われるのですが、少なくなるとスタミナ切れや疲れを感じやすくなります。
そのため、パフォーマンスの低下を防ぐためにも、運動前はエネルギー源となる糖質を食事や補食で補うことが大事です。 また、運動後に食事がすぐ食べられない場合は補食を摂ることで、スムーズな疲労回復が期待できます。
補食の適切な摂り方として、下のイメージ図のように、15時30分から17時30分まで練習がある場合、練習までに小腹が減るのであれば、消化を考えて練習の 1 時間前までに、固形物のバナナやオレンジ、りんごなどの果物、おにぎりやパン、エナジーバーなどを食べることがお勧めです。また、運動直前は、すばやく消化する液体(スポーツドリンク、果物ジュース)やゼリー飲料を選ぶなど、自身の体調に合わせて選ぶことが大事です。
とはいえ、補食は必ずしも必要なものではありません。食事をしっかり摂れていて、練習中のパフォーマンスに問題がない場合は無理に食べなくても大丈夫です。あくまでも、自身の体調に合わせて補食を選択することが大切です。
筋肉量の維持・増加のための理想的な食事とは
最後に、筋肉量の維持や増加に良いと考えられる食事を紹介します。筋トレや運動直後は、たんぱく質を摂取することで筋肉の合成が最も高まり、さらに筋トレや運動24~48時間後も筋肉の合成が高い状態を維持します。
筋肉量の維持・増加には1日3 食ともたんぱく質を充分に摂ることが不可欠です。しかし、この時にエネルギー源となる糖質が十分に摂取できていないと、筋肉のたんぱく質が分解されてエネルギーを作ってしまいます。
さらに、エネルギーや筋肉をつくるときにはビタミン、ミネラルが必要になるので、冒頭のコンディションを維持する上での食事が不可欠になります。
上の写真は、ほかのアスリートの食事内容です。
上記の食事では3食ともたんぱく質を充分に摂ることができています。さらに、主食、主菜、副菜を毎食、果物、牛乳・乳製品を1日の中で摂ることができていて、コンディションを維持する上での食事例としても参考になります。
ここまでのアドバイスを参考に自身の体調とも相談しながら、より良いコンディションが維持できるような食習慣を継続してほしいと思います。
1週間の食事記録を見ても栄養バランスをしっかり摂れていた岡田選手。2回目となる奥村のチェックでは、自炊でお勧めの食材やコンディションを維持・向上させる取り組み方などについてアドバイスをもらった。遠く離れた海外の地でレベルアップに励む若きアスリートが、ここからさらに高みへと駆け上がっていくのが待ち遠しい。