【アスリートフードマイスターに聞く!Vol.24 バスケットボール編 東海大学男子バスケットボール部SEAGULLS(黒川選手、ハーパー選手、轟選手)】
今回チェックするのは、東海大学男子バスケットボール部SEAGULLSに所属する黒川虎徹選手(22)、ハーパー ジャン ローレンス ジュニア選手(20)、轟琉維選手(18)の3人。チームは2022年を含め、これまでにインカレ(全日本大学バスケットボール選手権大会)優勝通算7回を誇る強豪であり、3人とも世代別日本代表を経験している実力者だ。将来有望なアスリートたちに向けて、管理栄養士とアスリートフードマイスター2級の資格をもつ板津(株式会社サン・クロレラ)は3つのアドバイスを送った。
1日の食事記録をチェック
はじめに、アンケート結果を整理します。3人の1日の食事・活動記録は以下の通りです。
▼黒川選手…身長175㌢、体重75㌔(空腹時)
時間 | 食事内容・量 | 活動内容・トレーニング内容 |
---|---|---|
6:30 起床 | ||
7:30~9:00 | ウエイトトレーニング | |
9:00 朝食 | ごはん、目玉焼き、牛肉と玉ねぎの炒め物、サラダ、フルーツ、納豆、牛乳 | |
10:00-11:00 | 昼寝 | |
12:00 昼食 | 鶏そぼろと卵の2色丼、プロテイン300ml | |
13:30-17:00 | 授業 | |
※15:00 間食 | バナナ1本、プロテイン600ml | |
17:00-20:00 | 練習 | |
20:15 夕食 | 生姜焼き、白米、味噌汁、餃子、ハムカツ、ナムル、そば | |
21:00-22:00 | 入浴 | |
24:00 就寝 |
▼ハーパー選手…身長180㌢、体重80㌔(空腹時)
時間 | 食事内容・量 | 活動内容・トレーニング内容 |
---|---|---|
6:30 起床 | ||
7:30~9:00 | ウエイトトレーニング | |
9:00 朝食 | ごはん、卵焼き、サラダ、フルーツ、ベーコン、牛乳 | |
9:00-11:00 | 授業 | |
12:30 昼食 | ごはん、鶏胸肉の照り焼き、味噌汁 | |
13:30-17:00 | 授業 | |
※16:30 間食 | プロテイン300ml | |
17:00-20:00 | 練習 | |
20:00 夕食 | 生姜焼き、白米、味噌汁、餃子、ナムル、そば | |
21:00-22:00 | 入浴 | |
24:00 就寝 |
▼轟選手…身長169㌢、体重68㌔(空腹時)
時間 | 食事内容・量 | 活動内容・トレーニング内容 |
---|---|---|
6:30 起床 | ||
7:30 | ウエイトトレーニング | |
8:30 朝食 | ごはん、卵焼き、サラダ、フルーツ、ベーコン、牛乳 | |
9:00-11:00 | 授業 | |
13:00 昼食 | ビーフペッパーライス、ソーセージ、ベーコン | |
13:30-17:00 | 授業 | |
※16:30 間食 | 菓子パン3個、プロテイン300ml | |
17:00-19:30 | 練習 | |
20:30 夕食 | 生姜焼き、白米、味噌汁、餃子、ハムカツ、ナムル、そば | |
24:00 就寝 |
3人とも朝食は寮の食堂で、さらに夕食はチームが提携している飲食店で摂っていることもあり、「主食」、「主菜」、「副菜」、「果物」、「牛乳・乳製品」いずれもバランスよく食べています。そのなかで気になる点がいくつかありましたので、今回は「自炊時の副菜」「練習前の補食」「就寝前の食事」について解説していきます。
自炊時にも「プラス副菜」でコンディション維持
昼食は自炊することが多いということですが、3人ともに主食のごはんからエネルギー源となる糖質を摂り、さらに主菜の肉、卵などから筋肉や骨、臓器などの体の組織をつくるたんぱく質を摂れていて素晴らしいです。
一方で改善点を挙げるとすれば、体の調子を整えるビタミン・ミネラルを含む野菜、きのこ、いも、海藻などの副菜が、昼食でほとんど食べられていないことが気になります。糖質がエネルギーとして、たんぱく質が筋肉として使われる過程において、ビタミン、ミネラルは欠かせません。
そのため、昼食にもこれらを含む野菜やきのこ、いも、海藻などを使ったおかずを1~2品プラスして摂ることをお勧めします。自炊で副菜まで用意するのが難しい場合は、ひじき、きんぴら、煮物などの日持ちするチルド惣菜のほか、カット野菜やミニトマト、冷凍野菜などをストックしておくと便利です。
例えば、お好みの冷凍野菜を電子レンジで加熱し、市販の味噌汁の素とお湯を注ぐだけで、簡単に野菜が摂れる味噌汁を作ることができます。私たちの体は食物の栄養素を利用して健康な状態を維持し、その栄養素はそれぞれ支え合って働いています。
どれが欠けても健康な体を維持することはできないため、市販品も上手に活用しながら、自炊の際にも主食、主菜、副菜がそろった献立を意識することが大切です。
練習前の補食の選び方
次に練習前の補食の考え方について説明します。運動時にエネルギーが足りなくなってしまうと、スタミナ切れを起こしたり、集中力が低下したりするリスクがあります。これによってミスや怪我につながる可能性が高まるため、エネルギー切れを起こさないよう運動前にエネルギー源となる糖質を多く含む食品を補食として適宜食べることが推奨されているのです。
なお、運動前の補食は運動中に動きづらくなることを避けるためにも、下記のように食べる時間やメニューに気を付ける必要があります。
なお、練習前に小腹が減ったり、前回の食事から4時間以上が経過したりしている場合は、エネルギー切れを起こさないよう、固形の糖質を多く含む食品であるおにぎりやサンドウィッチ、ジャムパンや餡パンなどの菓子パン、和菓子、バナナなどを食べることをお勧めします。
ハーパー選手の練習前の食事記録をみると、プロテインからたんぱく質の補給はできていますが、糖質を多く含む食品は摂っていませんでした。もし練習中にも疲労を感じる場合は、前述した食品を練習前の補食に取り入れてみてもいいと思います。
また黒川選手、轟選手は練習前にバナナや菓子パンを食べていましたが、今後も練習中のコンディションに気をつけながら、適宜補食を選んでもらえればと思います。
就寝前の食事に注意して効果的なリカバリーを
3人ともトレーニング翌日は「疲労感がある」とアンケートで答えており、なかでも黒川選手、轟選手は日常生活において「時々睡眠不足を感じる」と回答しています。また、頻度はそれぞれ異なりますが、夜9時以降に夜食を食べる習慣があるとのことでした。
しかし、夜9時以降にたくさんの量や脂質の多いものを食べると、睡眠中に胃腸が消化を行うため睡眠の質が低下するリスクがあります。 質の高い睡眠は、身体の回復において不可欠です。もし、就寝前にお腹が空いて夜食を食べることが多いということであれば、夕食のご飯やおかずの量を増やしてみるのも一つの案です。また、夜食を食べる場合はスナック菓子、洋菓子、揚げ物、カップラーメン等の脂質の多いものはできる限り避けるようにしましょう。
アスリートのコンディション管理において「健康でいること」は何よりも大切です。練習はもちろん、食事や睡眠と向き合う時間も大切にし、「今の自分に必要な食事」を考え、選び抜く力を身につけてもらいたいと思います。
今回、板津から「自炊時の副菜」「練習前の補食」「就寝前の食事」の3つについてアドバイスをもらった3選手。主将の黒川選手は「これまでも栄養バランスを考えて摂っていたつもりだったが、不足している点が明らかになった。今回のアドバイスを意識して生活していきたい」と意気込みを語った。日本一を見据える常勝チームにおいて、それぞれが「自分の食」と向き合い、さらなるパフォーマンスの向上を目指している。