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Vol.82
頂点を目指す、東海大学シーガルスのリアル
個性と覚悟が交錯する、轟・十返・渡邊──それぞれの現在地。

轟琉維・十返翔里・渡邊大翔
バスケットボール/東海大学男子バスケットボール部

「孤高のスコアラー」から「勝利のトリガー」へ ——十返翔里、進化の現在地
2025/08/20

高校バスケ界でその名を知らぬ者はいなかった。東海大学1年、十返翔里(とがえり しょうり)。彼の名を全国に轟かせたのは、言うまでもなく高校時代の圧倒的なスコアリング能力だ。ウィンターカップでは“ゴールマシーン”“孤高のスコアラー”など、数々の異名を引っ提げ、試合ごとに驚異的な数字を残してきた。しかし今、東海大学シーガルスのユニフォームに袖を通す彼の姿は、少しずつ変わり始めている。プレーだけではなく思考、姿勢、——そのすべてが、すでに未来を見据えている。

覚悟——手にいれた経験と課題

「ウィンターカップの福岡大学付属大濠高校戦は、一番心に残っています。3年間の集大成。結果は伴わなかったけど、悔いはない。」

その言葉からは、単なる“負け”に留まらない、濃密な時間を戦い抜いた者だけが知る清々しさがにじむ。高校3年生の時にU18日本代表として海外遠征も経験し、フィジカル・球際の執着心・細部に宿る意識の違いを痛感した。「対戦相手から学ぶ感覚だった」と彼は語るが、それは同時に、自身の課題を真正面から突き付けられる機会でもあった。

高校時代の彼は、点を取ることでチームを牽引する存在だった。その才能は疑いようもない。だが、点を取るだけでは勝てない——そんな現実に気づいたのは、たった1カ月半のプロチーム特別指定選手期間だった。

「プロの選手は“家族を支えるために”バスケをしているという覚悟が見えました。彼らにとっての勝利は、数字や目立つプレーのもっと先にある。1本のリバウンド、1秒のディフェンスにさえ、自分や家族の生活が懸かっている。食事も睡眠も、1日のすべてを“勝つため”ではなく“生き残るため”の行動のように感じたんです。」

高校時代の自分は、試合で点を取ってチームを勝たせることが正義だと思っていた。シュートが決まれば、仲間が沸き、会場が沸いた。それが“勝利への貢献”だと信じて疑わなかった。だが、プロの世界で見たのは、華やかさよりも、もっと静かで厳しく、粘り強いものだった。

「自分がこれまでやってきた“勝ちたい”という気持ちは、言ってしまえば、自己満足に近かったのかもしれません。プロの選手は“負けられない”という覚悟を背負っていた。そこの違いが、本当の意味での次元の差なんだと痛感しました。」

自身を甘やかしていたわけではない。ただ、プロの本気度は、「上には上がいる」と実感させるに十分だった。

融合——攻撃の本能と守備の伝統

東海大学を進学先に選んだ理由。それは、これまで向き合うことを避けてきた自分の“短所”の部分に、正面から向き合うためだった。

「東海大はディフェンスに重きを置くチーム。そこに惹かれました。正直、自分はオフェンスが武器なので、 “点を取ればOK”って思ってたところがあったんです。でも東海大のバスケは、ディフェンスがすべての起点なんですよ。1人じゃなくて、5人で守るという考え方。誰かが抜かれても、次がカバーしてくれるし、自分も誰かをカバーしにいく。その感覚がだんだん当たり前になってきて、今ではディフェンスでも流れを作れる選手になりたいと思うようになりました。東海大ではディフェンスができなければ試合に出らませんから。」

そう語る口調に、かつての攻撃一辺倒な自分を恥じる気配はない。むしろ、いま彼の中で起きている変化を楽しんでいるようにも見える。

「先輩によく言われるのは“東海大の選手ならディフェンスで魅せろ”という言葉です。点を取るだけじゃダメ。相手のエースを止めて、相手に嫌がられる存在になる。それが東海大のバスケだと教えられました。僕たち1年生がそれを継承し伝えていく番だと思ってます。」

そう言いながらも、自分自身の役割を尋ねると、迷いなくこう答えた。「やっぱり自分の仕事は点を取ること」。オフェンスの本能は、まだ彼の根幹に確かに息づいている。しかしその才能を、勝つためのトリガーとして捉え、自分自身をさらに磨き上げようとする冷静な視点が今の彼にはある。

熱狂——仲間とファンと共に描くバスケ

今年(2025年)に入部した1年生は少数精鋭だがバランスの取れたハイレベルな顔ぶれがそろった。

「本当にいいメンバーが集まったと思います。それぞれが強みを持っていて、自分も刺激を受けています。」

そう語る彼にとって、この環境はまさに“勝利のための共同体”だ。孤高でいた高校時代とは違う。勝つために必要な要素を、仲間、そしてファンと共有することの大切さを、今まさに体感している最中なのだ。

「東海のファンの皆さんは、プレーの細かいところまでしっかり見てくれているなと感じます。得点だけじゃなくて、ディフェンスでの頑張りやこぼれ球に飛び込むところにもちゃんと反応してくれるのが嬉しいです。そんな応援があるからこそ、もっと頑張らなきゃって思えます。今年の1年は個性的な選手が多いので、これから魅せられるプレーをたくさんして、ファンの皆さんにもっと喜んでもらいたいです。観ている人が“面白い”と思えるバスケがしたいし、個性的なメンバーがそろっているので、必ず魅せられるチームになると思っています。」

言葉の端々から、彼が「個」で輝くだけでなく、「チーム」としての成功を見据えていることが伝わってくる。

変革——進化するスコアラー

彼の変化を、経験豊富なシーガルスのコーチ陣も驚きをもって見つめている。

「うれしい誤算です。十返はもっと手のかかる子だと思っていました。高校でのプレーを見る限り、ある程度は覚悟しようと。でも裏切られましたね。彼はもっと狡猾で貪欲です。勝つための成長を止めない才能がある。聞く耳があるスコアラーがいるチームは強くなりますよ。」とGMの木村真人氏は話す。

高校時代、得点力に突出した“孤高のエース”が、いまではチームのために変化を恐れない選手へと進化を遂げつつある。その背景には、プロチームに帯同した特別指定選手期間、海外遠征、そしてディフェンスへの意識改革など、積み重ねた経験と明確な意志がある。十返が東海大学に行きつくまでに選んできた道、そのすべてが彼を成長させたのは言うまでもない。

食事や身体管理にも意識が及ぶようになったのは、その一例だ。スポーツニュートリションセミナーに参加し、栄養の重要性についても学んだ。

「学生のうちは食事に気を使うのが難しい。でも、できる限り良いものを取り入れたい。クロレラという選択肢を知れたのはありがたいですし、良さを体感できている、この環境は願ってもないことです」

プロの世界は、才能だけで生き残れる場所ではない。身体の管理も、思考の整理も、自己研鑽もすべて「戦う力」になる。十返はそのことを知り、すでに動き始めている。

勝利――トリガーを引く覚悟

「やっぱり、自分の武器はオフェンス。どんな舞台でも、それだけは忘れたくない。」

その言葉には、単なる“得点力への自信”ではなく、“自分らしさを手放さない覚悟”が込められている。成長の過程で、周囲から求められる役割は少しずつ変わっていく。守備や声かけ、チームプレー——どれも大切だと理解している。それでも彼は、試合の流れを変える“一撃”を持っている自分であり続けたいと願う。

「苦しい場面ほど、点を取ることでチームを引っ張りたい。自分がそういう選手じゃなくなったら、意味がないと思うんです。」

オフェンスは彼にとって、単なる技術ではない。自己表現であり、チームへの責任であり、何よりも“居場所”そのものだ。どれだけスタイルが変わっても、勝利の形が多様化しても、彼は自分の原点を忘れない。だからこそ——未完であることに意味がある。進化を止めない“点取り屋”は、変わり続けることで、揺るぎない覚悟を浮かび上がらせている。

孤高のスコアラーだった少年は、いま「勝つための選手」へと歩みを進めている。自らの得点力を、チームに捧げる勝利のトリガーへと変換しながら。