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2020/06/05
アスリートフードマイスターに聞く!~スポーツのための食事~ Vol.2 トライアスロン編 小原北斗選手

「流通経済大トライアスロン部の小原北斗選手の食生活習慣を専門家がチェック」

「目標は五輪の表彰台」-。流通経済大トライアスロン部に所属する小原北斗選手(21)。2017年日本U19トライアスロン選手権優勝、2019年日本トライアスロン選手権9位をはじめ数々の実績を持つ若手アスリートだ。今回、サン・クロレラ社は小原選手に食事面を含め生活習慣などを尋ねる計46項目のアンケートを実施した。これを管理栄養士とアスリートフードマイスター1級の資格を持つ奥村(生産開発部研究開発グループ所属)が専門的な視点でチェック。はたして、どれほどの「伸びしろ」が見つかったのだろうか。

 

 

今回アンケートに協力していただいた小原選手は、現在、流通経済大トライアスロン部に所属する大学4年生。回答結果によると、身長162㌢、体重53・5キロ(空腹時)、体脂肪8.5%。トライアスロン競技歴は15年でトレーニング頻度は週6~7日。食事は外食することが多く、1日の野菜摂取量はおおよそ小鉢2~3杯程度ということです。果物を食べる頻度は週1日以下、間食は週2~3日でパンを食べることが多く、サプリメントは疲労回復の効果があるものを摂取しています。ご自身が生活習慣上の問題点として挙げたのは「寝るのが遅い」「外食が多い」「行動が遅い」の3点です。それでは次に、小原選手1日のスケジュールを細かく見てみましょう。

 

 

以上が、大学の授業のない場合の1日です。さて、具体的なアドバイスに入る前に小原選手に答えていただいたアンケートから得られた情報を整理します。まず、小原選手はコンディションづくりの一環として朝食は摂っていません。それを含めた上で、トレーニングを行う日に必要なエネルギー量を計約2600kcalと算出。回答していただいたアンケートに記載された食事から推定されるエネルギーは約2250kcalでしたが、適宜間食を摂っていることを考慮して1日に必要なエネルギーは十分に摂れていると考えます。また食事はほとんど外食とのことですが、毎食サラダを食べており栄養バランスを意識しているのがうかがえます。以上のことを踏まえて、私から改善点を2点アドバイスしたいと思います。

①「昼食と夕食以外に補食を2食プラスする」
1日のスケジュールを見て、小原選手は午前中の練習メニューがハードにもかかわらず、午前11時半の昼食までに食事をしていないのが気になります。実際は補食を摂っているのかもしれませんが、ハードな練習は多くのエネルギーを消費するので、練習中にエネルギー不足にならないためにも簡単な補食を摂ることをおすすめします。また、トライアスロン等の長距離競技の選手は普段から空腹の状態で練習し、脂質からエネルギーを上手につくりだすようにしていると聞いたことがあります。しかし、体内の脂質をエネルギーとして利用するためには糖質が必要です。そのため、スイム有酸素練習とバイク有酸素練習の合間にでも糖質が摂れる補食として、おにぎり、脂質の少ないサンドイッチや菓子パン、バナナなどを食べることが望ましいでしょう。なお、カツサンド、カレーパン、コロッケパンなど揚げ物を使っているパンは運動直前には消化に悪いので、避けて食べるようにしてください。
また夕食を摂る時間が午後8時以降と遅く、かつ1300kcalほど摂取されています。就寝時間に近いタイミングで多くの量を食べると、寝ている間も消化吸収活動がされており睡眠に影響が出る可能性があります。
しかし、単純に夕食の量だけを減らしてしまうと、1日に必要なエネルギーが不足してしまうため、練習後の午後6時以降に補食を摂ることをお勧めします。特に練習後はエネルギーが多く消費され、体を回復させるためにも糖質、たんぱく質、ビタミン、ミネラルを摂ることが重要になります。お勧めする補食の例としては、「鮭のおにぎり」「シーチキンマヨネーズおにぎり」「いなり寿司」「卵サンドやローストビーフのサンドイッチ」で、糖質とたんぱく質を同時に摂ることができます。また、ビタミンやミネラルの補給にはカットされた状態でコンビニエンスストアなどで販売されている果物(みかん、リンゴ、パイナップルなど)や、面倒なときは野菜ジュースで補完するのも良いと思います。ここまで挙げた補食を適切に摂ることで就寝前の夕食の量を分食することができます。練習後の疲れた体を早く回復させ、睡眠で体をしっかり休ませましょう。

②「牛乳・乳製品3品、大豆製品1品、海藻類1品、濃緑の野菜1品をそれぞれ毎日摂る」
アンケートの食事状況によると、乳製品の摂取状況が週2~3日にとどまり、カルシウムを含む食品の摂取が少ないように思いました。小原選手はトレーニングの運動量が多く、発汗に伴うカルシウムの損失量が多いと考えられます。実際の生活では気を付けているのかもしれませんが、骨密度が低下すると骨折につながります。骨の主成分となるカルシウム、さらに骨の形成に関わるビタミンDやビタミンKを含む食品を毎日摂ることをお勧めします。
推奨されているカルシウムの摂取量は1日800mg。コップ1杯(200ml)の牛乳には約230mg、プロセスチーズ1個(20g)に約113mg、ヨーグルト1カップ(100g)に約120mgのカルシウムが含まれており、牛乳・乳製品・チーズを摂ることで推奨量の半分以上を摂ることが可能です。牛乳・乳製品以外にも小魚、ほうれん草・小松菜など濃緑の野菜、ひじき・わかめ等の海藻類、豆腐・納豆等の大豆製品からカルシウムを摂れます。さらに、骨の形成に必要なビタミンDやビタミンKなどの栄養素は、さけ・さば・さんまなどの魚類・きのこ類・ブロッコリーやほうれん草・小松菜などの濃緑の野菜に含まれます。
小原選手には可能であれば牛乳・乳製品3品、大豆製品1品、海藻類1品、濃緑の野菜1品をそれぞれ毎日摂ることを心掛けていただきたく思います。これらの品が、外食で訪れた店では提供されていない場合もあるかもしれませんが、ほうれん草のお浸しやひじきの煮物などはコンビニエンスストアやスーパーで調達することもできます。

さて、ここまで大きく2点のアドバイスをしました。これを実際に取り入れようとした場合、1日のメニューがどう変化するのでしょうか。冒頭で紹介した小原選手の1日のスケジュールを基にして考えてみましょう。

 

 

以上のようになります。外食時についてはネット情報から推定のエネルギーを算出し、理想のメニューになるよう変更しました。気になっていた夕食の量についてですが、変更前のメニューでは約1205kcalも摂取していましたが、練習後の補食により夕食の量を減らすことが可能です。今回の補食メニューは計600kcalほどになります。就寝前にはなるべく脂質の多い食事は避け、野菜を十分に摂ってください。もちろん日々のコンディションに合わせた上で、1日の体の維持に必要な糖質、タンパク質を摂れる食事メニューを心掛け、さらなる競技パフォーマンスの向上につなげてほしいと思います。

奥村のアドバイスを受けて、小原選手は「1日の中でもう少し摂取した方がいいものや、何が不足しているのか、食事時間のアドバイスなど丁寧に教えていただき参考になりました。牛乳だけでなく、ヨーグルトやチーズなどの乳製品、大豆も不足していたと感じたのでしっかり摂っていきたい。自分に何が必要なのかを頭に入れて、実践していきたい」とコメント。具体的にはハードな練習前にはバナナなどの補食をしっかり摂ることなどを心掛けるという。食事の時間が遅くなりがちなことに対しても、「オフの日には午後6時ごろには夕食を摂れるようにしたい」と改善へ前向きな姿勢。目標である五輪の表彰台へ、さらなる成長のヒントをつかんだようだ。

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