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2021/06/29
アスリートフードマイスターに聞く!Vol.13 アイスホッケー編 佐藤優 選手

【アスリートフードマイスターに聞く!Vol.13 アイスホッケー編 佐藤優 選手】

アイスホッケーの世界最高峰とされるNHL(ナショナルホッケーリーグ)を目指し、海を渡った一人の若武者がいる。USHL(アメリカジュニアリーグ)のリンカーン・スターズに所属する佐藤優選手、18歳。埼玉県に生まれ、わずか3歳のときに地元のアイスホッケーチームに入団し、キャリアを踏み出した。海外を意識し始めたのは、小学5年生の時。11歳でロシア(モスクワ)へ留学。モスクワトップリーグで5年間プレーした後は、フィンランドやカナダで技術を磨いた。実力は国内トップレベルで、これまでにU20(20歳以下)日本代表に選出され、2020年1月に開催された世界選手権でディビジョンⅡ優勝に大きく貢献した。「外国人に当たり負けしない体をつくりたい」と意気込む佐藤選手。管理栄養士とアスリートフードマイスター1級の資格を持つ奥村(生産開発部研究開発グループ所属)は今回、コンディションを維持するために必要な食事などについてアドバイスを送った。

1日の食事記録をチェックする

 はじめにアンケートの結果を整理すると、佐藤選手の身体測定値は175㌢、75㌔(空腹時)。トレーニングは週4~5日の頻度で、1日の野菜摂取量は小鉢1杯程度。間食にはプロテインバーやスナック菓子を食べています。1日の食事記録は以下の通りです。

食事をする際に栄養については「意識していない」との回答でした。「サポートしてくれる人がいない」、「知識がない」という環境下で、栄養管理について考えることは難しいと思います。
ただ、パフォーマンス向上や第一線で競技を続けていくためには、コンディションを整え、けがや体調不良を防ぐことが重要です。そのためにはしっかり睡眠を取って休養し、栄養バランスがとれた食事を継続しなければなりません。そこで今回は、はじめにコンディションを維持するための食事の考え方についてお話したいと思います。

5大栄養素について考える

食事の栄養面を考えるうえで、必要な「5大栄養素」と呼ばれる栄養素があります。

糖質は体を動かすエネルギーをつくり、たんぱく質は筋肉や骨、臓器などの体の組織をつくります。脂質は細胞や臓器、神経などを保護する成分をつくる働きがあり、ビタミンやミネラルは体の機能を正常に維持します。
それぞれの栄養素を多く含む食物をみていきます。まず糖質は米やパン、麺類、シリアルなどの穀類。たんぱく質は肉、魚、卵、大豆。脂質は炒め物で使う油やドレッシング、マヨネーズなどで、ビタミンとミネラルについては野菜や果物、牛乳・乳製品が挙げられます。
1日の食事の中では穀類やたんぱく質のおかず、野菜は毎食、果物は2品、牛乳・乳製品は3品を目安に食べることが理想的です。

ビタミンC、カルシウムの摂取量を増やすには

朝食:パン、りんご、ヨーグルトサン・クロレラAパウダー/昼食:パスタ/夕食:鶏肉のトマト煮込み

5大栄養素の考え方を踏まえた上で、アンケート結果や食事記録を基に佐藤選手の栄養管理をチェックしていきます。上は佐藤選手の1日の食事記録の写真です。
まず、パスタ、パンと糖質を多く含む食品を毎食摂っていて、りんごやヨーグルトを食べていたのは良いと思います。またビタミン、ミネラル源となる野菜を食べていませんが、代わりにビタミン・ミネラルを含むサン・クロレラAパウダーを利用されていたことは良かったと思います。ただ、全体的にビタミンC、カルシウムの摂取量が少なく感じます。
ビタミンCは疲労物質を軽減してストレスや風邪などの病気から体を守る働きがあると同時に、骨や筋肉を保つのに重要な栄養素でもあります。また、カルシウムは骨づくりのほかに筋肉の収縮、そして細胞間の情報の伝達に欠かすことができない大事なものです。
ビタミンCとカルシウム。いずれもアスリートには積極的に摂ってほしい栄養素なので、これらを含む食品を意識して摂取してほしいです。ビタミンCは例えば、ブロッコリーやピーマン、キャベツなどの野菜、オレンジ、マンゴー、イチゴ、柑橘系のジュースに多く含まれます。そのため、サラダや果物ジュースを毎日摂るように心掛けてみてください。
特に葉物野菜は食物繊維を含みます。食物繊維は血糖値の上昇を抑制して脂肪の蓄積を抑えてくれる働きもあり、脂っこい料理を食べる際には一緒に食べることをお勧めします。
カルシウムは牛乳やヨーグルト、チーズに含まれており、牛乳・乳製品は1日に3品摂ることが理想的です。今回チェックした食事記録では、朝食時にヨーグルト、昼食時にパスタの粉チーズを食べていたので、あと1品を追加で食べることができれば良いと思います

補食をプラスしてエネルギーを確保する

次に食事のタイミングについてお話します。
アンケートの結果で気になったのは、週4~5日で夜食にスナック菓子を食べている点です。午後9時以降の夜遅い時間に食べると、消化に負担をかけてしまい、消化が続いた状態で就寝すると睡眠の質が落ちる原因になります。
そのため、油で揚げたスナック菓子は、夜食に選ぶことを控えるのが望ましいでしょう。一方で、夜食のスナック菓子を控えると体を維持するのに必要なエネルギーが不足してしまい、疲労回復が上手くできず、注意力や集中力が低下してケガにつながるリスクが高まります。対策として、朝・昼・夜の3食で食べるパンやパスタの量を増やしたり、3食にプラスして補食を摂ったりすることをお勧めします。
補食を食べるタイミングは、運動前後が特に良いとされています。
運動前に補食を食べるメリットは、運動中にエネルギー不足を起こさないことです。補食のメニューは、すぐにエネルギーとなるおにぎりやパンなどの糖質を多く含む食品がお勧めです。ただ、運動前に食べ過ぎると、消化不良を起こして体の動きづらさを感じてしまうかもしれません。
目安としては、運動する1時間前にサンドイッチやベーグルなど胃腸に負担をかけにくい脂質の少ないパン1個ぐらいを食べることが望ましいでしょう。
もし運動直前に摂るとすれば、胃腸に負担をかけない消化吸収の早い糖質を含むスポーツドリンクやゼリー飲料などでエネルギー補給をしてください。
運動後に補食を食べるメリットは、エネルギーを消費して疲れた体を回復できることです。練習後1時間以内に一定量を食べることが望ましいですが、難しい場合はバナナやシリアルバー、プロテインバーを1本食べるほか、先程紹介したサンドイッチやベーグルなどのパンもお勧めします。
佐藤選手の食事記録を見ると、13時30分に氷上練習を終え、15時に昼食を摂っています。例えば午前中のトレーニングが終わってからパンを1個、氷上練習後にシリアルバーを食べてから昼食を摂るなど、おなかの調子に合わせて補食を適宜取り入れてほしいと思います。

食事のタイミングで睡眠の質も変わる

最後に、就寝時間が午前1時と遅いので、疲れている時は午前0時までには就寝することをお勧めします。さらに良質な睡眠をとるために、午後9時までにはなるべく食事を終わらせることを意識づけてみましょう。
昼食はチームメートと外食し、それ以外の食事はホームステイ先で提供されているとのことなので、自分で食材を買う機会があまりなく、選択肢が少ないかもしれません。その中でも穀類やたんぱく質のおかず、野菜、果物、牛乳・乳製品が1日の食事でどれくらい摂れているのかを意識してみてください。また食事のタイミングにも気を配り、質の高い睡眠をとって、日々のコンディションを維持してほしいと思います。

 氷上の格闘技と呼ばれるアイスホッケーで、高いパフォーマンスを発揮するためには強靭なフィジカルが土台になる。今回のアドバイスを受けて、佐藤選手は「コロナ禍に加え、アメリカでの初のホームステイ生活で思うような食生活ができず悩んでいました」と悩ましい胸中を告白。それでも、5大栄養素の観点からビタミンCやカルシウムの摂取量を増やすことや、食事のタイミングや補食などについて改善点が見つかり、「すぐにアドバイスを取り入れて、目標に向かって精進していきます」と前を見据えて、言葉に力を込めた。海を渡った若きアスリートは、“金言”をしっかりと胸に刻み、成長の一途をたどっていく。

佐藤優選手が飲んでいるサン・クロレラAパウダーはこちら

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