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Vol.12
八隅家には、テレビもお菓子もジュースもありません
父は日本最強グラップラー 息子はジュニアレスリング期待のホープ 八隅家の個性を育むユニークな教育法

八隅士和(しな)
八隅孝平
レスリング/ロータス世田谷

八隅家には、テレビもお菓子もジュースもありません 後編
2019/10/11

日本ジュニアレスリング界のホープ・八隅士和(しな)は現在都内の中学に通う1年生。放課後には都内にある自由が丘学園高校レスリング部への出稽古を欠かさない。指導者は2018年アジア選手権で優勝したグレコローマンスタイル55㎏級の田野倉翔太さんだ。

士和:いつも(自由が丘学園高の)高校生の方たちとやっています。僕と同じように都内から参加している中学生も結構いる。

八隅:士和が小6の時、田野倉先生から「練習に来てもいいよ」と声をかけてもらったんですよ。小学校上級生という身分で、高校の練習に混ぜてもらえる機会なんてそうそうない。「ちょっと行ってみよう」ということで足を運んだら、練習の質が高かった。それに練習時間も2時間でスパッと終わるので、これはいいなと。おかげで、最近士和は強くなった気がしてならない。高校生に触れることで、中学生のあたりは大したことがないと感じているんじゃないですかね。

士和:確かに中学生と高校生ではフィジカルが全然違う。ちなみにいま自分の身長は150㎝で、体重は44㎏くらい。

八隅:中1なので、まさに成長期。これからさらに大きくなる。僕は169㎝なので自分より大きくなってほしいけど、まあ変わらないくらいまで成長するのかな(微笑)。

士和:大きくなれるところまで成長したい。

──現在はどんなサプリメントを?

八隅:減量していない時にはプロティンとクロレラ。減量中はBCAAとアルギニンが混ざったものとクロレラをとらせています。クロレラは飲んですぐに良さを感じるものではない。自分も試しに飲んでみたけど、オナラが臭くなくなった(微笑)。

──クロレラをとっているアスリートからは「疲れが残りにくい。とると、翌朝が楽」という声もある。

士和:海苔みたいな味だけど、体が楽な時があるので効果はあると思う。実際、朝の目覚めがよくなったし、試合以外で学校を休んだことがないです。インフルエンザが流行って学級閉鎖になったときも大丈夫でしたね(笑)

──ところで田野倉さんの専門は下半身への攻撃が禁止のグレコローマンスタイル。将来的にはどちらのスタイルをやりたい?

士和:僕はフリースタイルをやりたい。逆転できるところがいい。得意技はがぶり返しで、田野倉先生に投げ方を教えてもらいました。

八隅:がぶり返しは首を決めて投げるので小学生の大会では反則。でも、中学生の大会からは使ってもいいと聞いています。

──ここで、士和君のプロフィールをおさらしいしたいと思います。全国少年少女レスリング選手権での優勝は?

八隅:全国選手権は初参加となった小1から1位でした。小2と小4でも優勝したけど、小3、小5、小6では準優勝に終わっている。

──でも6年連続決勝に進出したわけですよね。それはそれですごい記録ですよ。

八隅:全国少年少女選抜選手権は小4から小6まで3連覇を達成しています。小5の時には吉田沙保里杯の小5~6の部でも優勝していますね。その時、決勝を争ったのが1学年上の佐藤秀磨選手(三島市立北上中)で、今年の全中(全国中学生レスリング選手権)では(士和も出場した)男子41㎏級でチャンピオンになっています。

──憧れのレスラーは?

士和:とくにいません。

八隅:僕はセルゼイ・ベログラゾフのような選手になってもらいたい(※ロシア人。2度のオリンピックを含め計8度も世界一に輝いたレジェンドのひとり。現在はアメリカでコーチを務めている)。そして投げる時にはタックルだけではなく、柔道技のような投げも使ってほしい。

士和:いまは大内刈りとか、お父さんに習った技も使っています。

八隅:僕はレスリングではそんなに強くなかったけど、知識の積み重ねはある。高校の時に教えてもらったテクニックも、「こうやればかかるんじゃないか」といった感じで頭の中のメモリーに入っている。ウチの方針は選手がひとつの型にハマらないように、いろいろなテクニックをまんべくなく教えること。案の定、ウチには側転をしながらバックをとったり、個性的な動きをする子が多い。本当はそういう技を教えたらダメだと思うけど、僕は否定したくない。その子がやりたいなら「どうぞ」と背中を押してあげたい。

──自由な発想のもとにレスリングに接してもらいたいわけですね。そのエッセンスは間違いなく士和君にも受け継がれていると思うけど、お父さんが似ていると思ったことは?

士和:お父さんの試合を見ていると、なかなか点数をあげないところが強いと思う。だけど、似ていると思うところはないですね。

八隅:僕もジムでは士和は別の人間だと思って接している。だから実の息子だからといって猫可愛がりすることもない。

士和:そうだね。お父さんはあまりベタベタしてこない。それでも褒められたらうれしいけど。

──負けず嫌い?

士和:ハイ。負けたら悔しい。明日からまた頑張ろうと思います。

八隅:僕だったら、すぐ諦める笑、というのは冗談で僕も勝負するところは勝負する。そういうところは似ているかもしれない

──来年はいよいよ東京オリンピックイヤー。自分がシニアの大会で活躍する姿を想像することは?

士和:(今年の世界選手権で五輪出場枠を勝ち取ったフリースタイル65㎏級の)乙黒拓斗さんはいま20歳。僕も20歳くらいで世界選手権に出られたらいいと思います。

八隅:僕はあまり大きなことを言いたくない。いまは中学で勝ってほしい。

──これからの活躍を期待しています!