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Vol.40
優しさこそ、真の強さなり。
厳しい師弟関係ではなく、和やかな友情で結ばれた、バスケ界のレジェンドと未来のスターたち。

陸川章(監督) 大倉颯太(4年) 佐土原遼(4年) 八村阿蓮(4年)
バスケットボール/東海大学男子バスケットボール部

優しさこそ、真の強さなり。後編
2021/12/06

もっとも多くのBリーグプレーヤーを輩出し、幾度となく全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)を制してきた東海大学バスケットボール部・シーガルス。前編では、旧来の上意下達を中心としたいわゆる体育会系の部活とは一線を画す、先進的でフラットなチーム作りについて紹介してきた。
後編では、選手の意識を変えた陸川監督の言葉やターニングポイントとなったゲームについて振り返りながら、プレー面のみならず、ひとりの人間として成長を遂げた選手たちの軌跡を通じて、陸川監督の人心掌握術を語ってもらった。

選手たちの責任感を覚醒させた、リクさんの言葉。

「怒鳴らない指導」で若い才能を開花させ、2部に上がったばかりのチームをインカレで連覇を果たす常勝軍団へと導いてきた陸川監督。ひとりひとりの表情や心理の変化に気づける細やかな目配りと、選手の心をピンポイントで貫ける的確な言葉選びにあるという。陸川監督からかけられた言葉のなかで印象に残っているものについて、それぞれのシーンを振り返りながら語り合ってもらった。

大倉選手「あれは2年の時のリーグ戦の最終節でした。フィールドゴールを15本打って1本しか入らない。絶不調だったんです。結果としてぼくのミスでチームを負けさせてしまった。試合後は下を向いてもうバスケをやめようかと考えていました。自分自身に対してもフラストレーションを溜めていたし、責任も感じていましたから。でもそのとき、リクさんから「チームリーダーのお前がシュートを打つことをやめたら、チームはもっと良くない方向に行く。明日も躊躇せずシュートを打ちなさい」と言ってくれて、気持ちが楽になったんです。次の試合も調子は悪かったけど、それでもいいシュートが打てて、そこからインカレに向けていい流れに乗れた。やっぱりリクさんについてきてよかったなと実感できた瞬間でもあって、そのときのことは今もよく覚えてますね」

陸川監督「いやあ、言ったほうはあんまり覚えてないんですよね(笑)。ただ、そのときはめずらしく落ち込んでいたので、それで声をかけたんだと思います。そのことはよく覚えています。やっぱり、これからがある選手なのでね」

佐土原選手「自分は、今年の夏合宿のときに言われた言葉でした。去年のインカレでは自分が声を出すことでディフェンスの士気を高めていたのが、トーナメントではできていなくて結果的にディフェンスが緩くなり、士気も下がってしまっていました。するとリクさんが『やっぱりお前の持ち味は大声を出して、チームを鼓舞したりカバーしたりするところだから、そこを伸ばすことを忘れるな』と言ってくれました。それでリーグ戦ではつねに自分が声を出すことによってディフェンスの士気もチームの士気も1段階も2段階も上がった。もしリクさんに言われていなかったら、そうした自分の役割に気付けていなかったと思うので本当に感謝しています」

陸川監督「これは覚えてます(笑)。とりわけ春は颯太(大倉選手)もケガでいない状況で、彼は得点も自分が取らなきゃいけないと考えてくれたんだと思います。でもその結果、彼のいちばんの良さである周りを助けるディフェンスの声かけや、手を大きく広げてカバーリングするプレーが足りなくなっていた。だから『自分の持ち場に戻れ』と。そこに専念していいんだよ、と声をかけました」

八村選手「ぼくはやっぱり相手チームに身体の大きな留学生がいるときにリクさんがすっと寄ってきて言う『頼んだぞ』ですね(笑)。いつも試合の直前に言われるんでプレッシャーではあるんですけど、まあやっぱりそれはぼくの責任だし、ぼくの役割だという自覚はあるので。プレッシャーでもありつつ、信頼されているんだな、という実感も湧いてきて、『よし!がんばろう!』と思わせてくれる言葉なんですね」

陸川監督「これも覚えてます。やっぱり上位に勝ち上がってくるチームはフィジカルの強さもプレーの質の高さも違ってきます。とりわけ身体の大きな留学生はチームの要であることが多い。彼らを抑えるにはフィジカル面で負けない阿蓮(八村選手)に『頼んだぞ』って託すしかなかった(笑)。でも彼のポテンシャルの高さ、彼が100%の力を出してくれたら彼のほうが誰よりも強いと私は信じています。だからこその『頼んだぞ』になるわけです」

ひとつひとつの言葉そのものは金言・名言の類とは異なり、強く印象に残るような鋭い言葉ではないかもしれない。しかしそれでも、選手の心のいちばん深いところに届き、しっかりと刻まれている。そして選手の気持ちを切り替え、行動を促していく。それはやはり選手の個性に目を配り、その瞬間の心理状況に寄り添いながら、そのとき考えうるもっともポジティブな言葉をかけているからだろう。それができる“リクさん”は、やはり名将と呼ぶにふさわしい偉大な指導者なのだ。

その陸川監督にこのチームで印象に残っている試合を訪ねてみると、彼らが2年生になったばかりの新人戦だという。いまでは彼らの口から当たり前に語られる「責任」という言葉。それが芽生えたのが、その新人戦だったのだと、陸川監督は目を細めながら振り返る。

陸川監督「そのゲームで初めて勝たなきゃいけない責任感を背負って戦っている姿を見せてくれました。準決勝ではものすごく点差が離されていたにもかかわらず後半に追いついて勝ちましたし、決勝もかなりのタフゲームだったんですけど意地を出して勝ち切った。この代の強さはコレだって感じました。その当時はまだチームと呼べる状態ではなかったんですけど、あの大会でグーっとみんながひとつになっていったんです」

プロ意識を植えつけたサン・クロレラとのパートナーシップ。

サン・クロレラと東海大学バスケットボール部・シーガルスは、2021年8月からパートナーシップを結び、サン・クロレラ商品の提供やチームスポンサーとして活動のサポートを行っている。なぜサン・クロレラとのパートナーシップ契約を締結することになったのか。陸川監督はこう話してくれた。

陸川監督「理由は3つあります。まずは中山社長のお人柄ですね。バスケット愛がすごくて、なんて情熱のある方なんだと感激しました。ふたつ目は学生というのはどうしても栄養バランスに偏りが出る。サン・クロレラさんの商品を上手に活用すれば、そういう偏りを調整できるんじゃないかと感じました。最後にサン・クロレラさんの企業ミッションに『ステークホルダーに対する笑顔と感動を持続的に提供する企業でありたい』とあった。まさに私たちも周りの人に応援され、愛されるチームでありたいと願っていますので同じ思いを共有できると考えたことがきっかけですね」

さらに陸川監督は、大学生が企業と触れ合うことのメリットを強調する。学生スポーツではどうしても大学の中だけで生活が完結してしまいがちだが、企業とスポンサー契約を交わすことで、社会との接点が生まれ、視野が広がるという。実際にチームのユニフォームやウェブサイトに企業ロゴが入ることで、彼らの中にいままでにない責任が芽生えてきているのだそうだ。やがて彼ら3人はみなプロに行く選手たち。プロチームになれば当然のこととしてスポンサーがついている。つまり、いずれは背負っていかなきゃいけないことなのだ。陸川監督は、そういう応援してくれている人を大事にするという気持ちをいち早く育ててくれていると期待を語ってくれた。

陸川監督「いずれにしても彼ら3人とも、間違いなくこの先日本を背負って行くことになると思います。そのときに忘れて欲しくないのは、やはりここで学んだこと。ひとつはどんなチームに行ってもまずは自分の持ち味を発揮してほしいということ。そして、チームが勝つために自分は何ができるかを考えてプレーすること。そしてとくに言いたいのは、負けが続いたり、気持ちやモチベーションが下がったりしたときにも、絶対にそこで下げ切らないこと。自分を支え、自らを鼓舞し、自力で刺激を与えたり引っ張りあげたりできる選手であってほしいですね」

カテゴリが上がれば上がるほど、ひとりでは乗り越えられない困難な局面が必ずやってくる。やはりそのときには、仲間やチームメイト、ブースターやスポンサーからのエールが必要になることだろう。陸上競技出身だった陸川監督だからこそ、その孤独を誰よりも身にしみて実感しているのだという。チームスポーツの良さ、大学スポーツの良さは、まさに仲間と一緒にチームを作り上げ、支え合い、励ましあいながら、ともに成長していくことにあると陸川監督は語る。「私でさえ、まだまだ発展途上ですから」と笑う陸川監督。この記事が出るころには最後のインカレに挑むこのチームの勇姿を、そしてその後それぞれの進路を歩む若きバスケットヒーローの未来を、ぜひ一緒に見届けてほしい。