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Vol.50
改革の本懐
プレミア・ラクロス・リーグ (PLL)設立に込めた願い
改革の本懐 前編
2022/05/31

選手のプレー環境向上のために

「地上最速の格闘球技」ともいわれるラクロスは、とくに米国で最も人気があるスポーツの一つに挙げられる。1980年代後半からプロリーグが誕生していたが、2018年10月にラクロスという競技の歴史を大きく作り変える一大プロジェクトが始動する。それが、プレミア・ラクロス・リーグ(PLL)の新設だ。画期的なポイントはいくつもあるが、まず一番特徴的なのは、どのチームもホームスタジアムを持たず全米12の主要都市をツアーで周り、ポイントポイントで試合を行うという点だ。このようなツアー形式はテニスやゴルフといった個人競技やフォーミュラ1で採用されており、団体競技では画期的な試みといえるだろう。このツアー形式によって、各チームはスタジアムの維持管理費などのコストがかからなくなり、その分だけポイントごとの試合環境や雰囲気作りに資本を最大限集中させることができる。プロジェクトの発起人は、ラクロス界のスーパースターであるポール・ラビル。彼の兄弟であり、起業家兼投資家でもあるマイク・ラビルとタッグを組み、ラクロス界の改革に踏み切ったのだ。

当時すでに存在していたラクロスリーグの一つであるMajor League Lacrosse (MLL) は2001年に開幕。ポールは2008年のドラフトでボストンキャノンズから1位指名を受けて入団した。MLLでプレーする選手の収入は平均して1シーズン8,000ドル(日本円でおよそ90万円)で、多くの選手がラクロスとは別にフルタイムの仕事を掛け持ちしながら生活費を捻出している状況だった。そうした厳しい環境のなかで、ポールはスポンサー契約やトレーニングキャンプの実施による収入を確保しつつ、YoutubeやSNSを駆使した情報発信によってブランディングに成功。別の仕事を掛け持ちすることなく、ラクロス1本の生活を実現した最初のプロ選手の一人である。

「ラクロスだけに集中して取り組むのが難しい状況でも、選手たちはみな真摯に取り組んでいましたね。だからこそ、今後は若い選手たちがキャリアに不安を感じることなくプレーに集中することができ、そして観客も常にエキサイティングな試合を見ることができる環境づくりが必要だと感じたのです」

ポールはこの言葉通り、リーグの改革をMLLの役員に提言したものの要求が通ることはなかった。こうしてPLL設立の計画が本格的に動き始めたのである。MLLはサラリーキャップ制で、新人の場合は1試合1000ドル以下でプレーしており、リーグ最高の年俸は1万6000ドル程度とされていた。一方で、PLLは支払限度額を設けていない。選手の健康面も保証され、これまで月曜から金曜まで別の仕事をしていた選手にとっては魅力的なオファーといえるだろう。これまでと比べてはるかにプレー環境は向上するのだ。

運営に必要不可欠な資金調達を図るうえで、大きな役割を果たしたのが起業家兼投資家のマイクだった。PLL共同創設者兼CEOであるマイクは、PLL設立を思い立ったときのことを感慨深げな表情で語る。

「サンフランシスコの自宅アパートで、PLLのアイデアを思いついたのです。それからさっそく米国内を横断する長距離フライトを繰り返し、ニューヨークの投資家に私たちのアイデアを提案しに行きました。ラクロス選手たちとの数千にもわたって電話で連絡を取り合い、打ち合わせが急に入ることも珍しくありませんでした。しょっちゅう近くの無料オフィスに駆け込んでいましたね。我々の提案に対して数えきれないほどの『ノー』も突き付けられましたが、最近では『イエス』をもらうことの方が多いですね。ただ、それら一つ一つの経験が教訓となり、どんなに大変な時でも落ち着いて行動に移し続けることの大切さを学びました」

放送およびストリーミング配信

2019年に設立されたPLLの開幕シーズンのハイライトの一つに、全試合を放送したNBC スポーツとのパートナーシップが挙げられる。大手テレビ局のサポートによってPLLの露出が増え、最も大きな収入源を確保することに成功。「選手のために」という理念のもと、ラクロスをメジャー競技に成長させるというPLLの目標実現に向けて大きな一歩となったことは間違いない。NBC スポーツとの3年間契約の後、PLLはESPNとの4年間契約を発表。2022年シーズンはABC、ESPN、ESPN2、そしてESPN+にて独占放送される予定だ。

もちろん、設立後のリーグ運営が順調続きとはいかなかった。当初はMLLとパートナーシップを組んで運営していく方針もあったが、MLLから断れることとなった。その後はPLLの戦略やビジネスモデルに賛同する投資家が集まり、サン・クロレラも2020年にオフィシャルサプリメントサプライヤーとして契約を結んだ。マイクは「もちろん苦労はありました。ただ、頼もしいパートナーが味方についてくれていることでなんでも成し遂げられると思います」と力強くうなずく。

一方のポールは、PLL発足後も選手と共同設立者という二足のわらじを履いており、その両立が大変だったという。「とくに2020年におけるバブル方式の導入時には、選手としても共同設立者としても今まで以上に集中することが求められていました。選手でありながら共同設立者でもあることによって様々な葛藤も抱えていました」。その苦労を乗り越え、2021年のシーズン後に現役引退を発表。「今は本部運営業務にエネルギーを集中できていますよ」と笑う。

「エキサイティング」な試合展開を生む独自ルール

画期的なリーグ運営のもと、レベルの高い選手が集うPLLだが、競技ルールも既存と一線を画している。まず「ボールを保持してから●秒以内にシュートをする」というショットクロックが52秒に定められている。このショットクロックは規定が主催によって分かれており、NCAA(全米大学体育協会)では80秒と長く、国際試合ではショットクロックそのものが存在しない。なぜ、52秒なのか。「ゲームのペースを速めることで選手やファンも楽しめるための最適な環境やルールを作りたいのです」とポールは狙いを明かす。

このほかにもゴールサークルの中心から半径15ヤードに2ポイントラインを設けており、これはプロ試合特有のルールである。さらにPLLでは、クリース(ゴールを囲う半径三メートルの円でオフェンスチームが入ってはいけない)へのダイブが認められている。これによりダイビングシュートが可能で、ハイライトになるような得点シーンが生まれやすくなるのだ。また、大学や高校のフィールドは110ヤードであるのに対し、PLLは100ヤードのフィールドでゲームを行う。これもゲームスピードを速めてファンをより興奮させたいという意図が込められている。

二人の兄弟によって誕生したPLLは、まさしくラクロス界に革命をもたらした。ラクロスをもっとメジャーに、面白く──。ポールの言葉に力がこもる。

「私たちは、ラクロスの一番エキサイティングなバージョンをつくりたい。PLLの試合は、間違いなく、観ていて面白いのです」