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Vol.60
華麗なる逆襲。
春に不調で苦しんだ今年のチームが、インカレ王座を奪還できた本当の理由。

陸川章(監督) 松崎裕樹(4年) 黒川虎徹(3年) 金近廉(2年) ハーパー・ジョン・ローレンスJr(2年)
バスケットボール/東海大学男子バスケットボール部

華麗なる逆襲。 後編
2023/02/15

4年生だった大倉颯太、佐土原遼、八村阿蓮が卒業し、さらには2年生だった河村勇輝がプロ入りで離脱と、飛び抜けたタレントが名を連ねるまさにスター軍団だった昨年から、一気に主力が抜けた今年の東海大学バスケットボール部「シーガルス」。このピンチから立ち上がり、錚々たるスター軍団でさえ成し遂げられなかったインカレ優勝を果たした。それはまさに「華麗なる逆襲」と呼ぶにふさわしい偉業だったといっていいだろう。(シーガルスの過去の記事はこちらから
後編では4年生でキャプテンだった松崎裕樹選手、3年生で次期キャプテンとなることが決まっている黒川虎徹選手、2年生でインカレ得点王にも輝いた金近廉選手、同じく2年生のハーパー・ジョン・ローレンスJr選手に話を伺い、その偉業を成し遂げるに至った経緯やその理由などについて、秘められたエピソードとともに語ってもらった。

去年のインカレ敗退が、チームの絆を強くした。

春先からチーム状態が上がらず、関係者からの評価も決して高いとはいえなかった東海大学。夏以降、試合経験を積むなかでディフェンスの強度を高めると、並々ならぬ決意とチーム力でインカレ優勝を勝ち取った。はたしてなにが彼らを奮い立たせたのだろうか。

松崎選手(4年)「去年のインカレで負けてすぐ、Bリーグのチームから特別指定のお話をいただいていたんです。でも辞退しました。もし優勝していたらもちろん行っていたと思います。でもあの決勝戦での負けが、自分がこれまでバスケットをやってきたなかで、いちばん悔しい出来事だったんです。もうこんな思いだけはしたくない。だから来年、自分の代では必ず自分たちがインカレで優勝するんだという思いが強かった。そのためにもまずは自分のキャリアのことではなく、キャプテンとしてリクさんのもとでバスケットをやってきて学ばせてもらったことや自分の経験、また去年の4年生が残してくれたことなどをチームに浸透させることが、このオフシーズン最初に自分がやらなきゃいけないことだと思っていました」

金近選手(2年)「ぼくも去年のインカレ決勝での負けがずっと悔しかった。自分だけでなく他のメンバーもそうですし、なにより4年生の先輩たちが悔しがっていた。なんとしても今年は勝ちたい。でもその思いとは裏腹にリーグ戦当初はうまくいかない苦しい時期が続いていました。それでも4年生たちはミ―ティングを重ねてチームを少しでも良くしようと引っ張ってくれていました。その姿をぼくらもこの一年ずっと見ていたので、だからこそインカレでは3年生はじめ下級生が下から押し上げることがすごく大切なことだと思いました。Bチーム含めベンチに入れなかったメンバーの応援が、コートに立っている自分たちの力になっているのがわかっていましたから。だからテツさん(黒川虎徹選手)が3年生以下を集めてミーティングを開いてくれたことはすごくよかったと思います」

黒川選手(3年)「あれはインカレの2,3週間前でした。3年生以下の選手だけを集めたミーティングを開いて『ここまで苦しい時期を耐えて、ぼくたちを引っ張ってきてくれた4年生を男にするぞ!』という話をしました。とにかく4年生をバスケットボールだけに集中させるためにオフコートと練習の切り替えをもっと早くしていこうとかそういうことも含めて、インカレでは個じゃなくてチームで戦うぞということを伝えたかったんです。そうすることで、みんなのなかに『勝ちたい』という個人の思いだけでなく『4年生を勝たせたい』というチームへの強い思いが生まれました。その思いがチームのまとまりにつながって、メンバー全員がチームファーストで物事を考えられるようになったと思います」

ハーパー選手(2年)「ふだんのテツ(黒川選手)は、あまり面と向かってみんなにそういう話をしないんですけど、あのときは彼がみんなを集めて、すごく真剣に話をしてくれた。あれで自分も熱くなりましたね。チームがひとつになれた。あのミーティングがあったからこそ、インカレ優勝できたんじゃないかなとぼくはいまでも思っています」

チーム全員で勝ち取ったインカレ優勝だから価値がある。

インカレでは優勝という栄冠とともに、MVPに松崎選手、得点王に金近選手、アシスト王も黒川選手が獲得するなど、個人タイトルも総ナメにした。しかし選手たちから口々に上がったのはケガで離脱した選手や控え選手を含めた、チーム全員での勝利という言葉だった。

松崎選手(4年)「もちろん自分のすべてを賭けて臨んだインカレで優勝できたことも、その大会でMVPを取れたこともうれしいんですけど、まずは自らうち立てた目標に向かって1年間やるべきことをやり切れたことがなによりうれしかった。今年のチームは誰が出ても同じ強度でバスケットを続けられるチームだと思っていて、練習から妥協せず、ずっとコミュニケーションを取り続けてきましたし、練習後の寮でのミーティングも全員が毎回参加していました。そういう積み重ねが同じ強度で全員がやり続けられるバスケットボールをチームメイト全員で体現できたのかなと思っています」

黒川選手(3年)「ぼくはこの2年間ケガに悩まされてきたので、応援席から見るインカレとコートで見るインカレは、やはり風景がまったく違うのだなと感じました。プレーできるよろこびや楽しさというものをこのインカレであらためて感じることができた。そして試合に出てコートでプレーする側の人間となった以上、チームを勝たせる責任がありましたから。それがその景色をさらに違うものにしていたと思います。最終的にインカレでの優勝とアシスト王という結果もついてきたので、本当にここまでがんばってきてよかったなと思っています」

金近選手(2年)「リーグ戦の後半に正亮さん(張正亮選手)と幹太(前野幹太選手)がケガをしてしまい、ビッグマンの部分の層が薄くなってしまったこともあって、自分が身体を張らないといけない局面が多くなっていました。インカレでもディフェンスの部分で不安があったんですけど、それでも東海大学にはチームで守るというコンセプトがあるので、ぼくが留学生のところを一対一でまずは抑えつつ他の選手がしっかりカバーするということがしっかりできていたと思います。オフェンスでは、もちろん得点王をとれたこともうれしいんですけど、個人的には日大戦での最後4クオータの残り1分くらいでのタイムアウトのときに、リクさんからぼくが最後にシュートを打つかたちでのプレーメイクをしてくれて、その期待に応えて自分がしっかりと決めきることができた、あのプレーがすごく印象に残っていますね」

ハーパー選手(2年)「2年生になり今シーズンはかなりプレータイムも増えました。自分はディフェンスが武器なので相手チームのエースにつくことが多く、中央大学戦では渡部琉選手についていました。最初はやられていた部分もありましたけど、後半はしっかり修正して抑えることができたのはよかったと思います。逆に課題は中央大学戦から決勝までスリーポイントシュートのアテンプトが多かったんですけど、そこで決めきれなくてチームに勢いをもたらすことができなかった。今後はそこの精度を上げていきたいなと思っています。ぼくは自分の気持ちやモチベーションを高めるために、いつもバッシュに文字を書いてゲームに臨むんです。以前は「Bet on yourself(自分に賭ける)」と書いていました。それは小さい頃からずっと父が言ってきた言葉。自分に自信を持って何事にも全力を尽くしてプレーしようという思いを込めて書いていたんです。今回のインカレでは「I want all the smoke(すべてを捧げる)」と書きました。それは颯太さん(大倉颯太選手)がぼくによく言ってくれた言葉でした。だからこのフレーズには、今年こそぼくらが颯太さんたちのぶんも勝つんだという思いが込められていたんです」

松崎選手(4年)「同期の4年生はもちろん3年生以下の選手もみんな自覚を持ってやってくれていたので全然苦労しなかったですね。ぼくとしてはチームをいかにポジティブにするか?結果がついてこない時期でもみんなが東海のバスケットボールを信じ切ることができるか?というマインドを全員に浸透させることが自分の仕事だと思って1年間ずっと心がけていました。とにかく去年と同じ場所で同じ相手に負けるわけにはいかないという思いは自分も持っていましたし、去年の4年生を勝たせきれなかったという悔しさは1年間ずっと持っていました。それを自分だけではなくみんなが同じ熱量を持ってやり切ってくれた。みんなを信じて、みんなを巻き込んで、去年と同じインカレ決勝の舞台で同じ白鴎大学を相手に勝てたのは本当にうれしかったです」

世界レベルのディフェンス強度をめざすためのWUBS。

サン・クロレラ社がスポンサードした大学バスケットボールの世界大会「WUBS(World University Basketball Series)」昨年から始まったこの大会は、アジアを中心に世界の競合や有力選手と対戦できる貴重な機会として注目を集めている。昨年2位だった東海大学はインカレ優勝という最高のかたちで今年も出場を決めている。選手にその意気込みを伺った。

黒川選手(3年)「まずは世界の強豪チームと戦えたことが自分たちにとって、インカレに向けてすごくいい経験になりました。あの経験からチームが浮上したという印象もあったのですごくポジティブなイメージを持っています。やっぱり海外選手はフィジカルが強く、リバウンド、シュートに行くまでのコンタクトの強さ、ファールされても決め切るところが違うなと感じました。またゲームの考えかたやIQの部分でも自分たちとはまったく異なる面を持っているので、そういうチームと試合できることはとても得るものが多い大会だと思うので、いまからとても楽しみにしています」

金近選手(2年)「ぼくはワールドカップやチェコ遠征など海外の選手とマッチアップする機会は他の選手に比べるとあるほうなのですが、それでも海外の選手とプレーできる機会はすごく限られているので、来年も出場できることをうれしく思っています。ワールドカップでもそうだったんですけど、日本の試合ではディフェンスに当たられるとすぐにファールをとってくれたりするんですけど、海外ではあまりファールをとってくれないのでしっかり強いプレーをしないといけない。だから海外のチームはディフェンスの強度の部分で日本より断然強く、フィジカルを活かした強いディフェンスを積極的にやってくる。ぼくらも強度の高いディフェンスが得意なチームなので、練習のなかでWUBSで対戦する海外選手を意識してやってきたいなと思っています」

ハーパー選手(2年)「ぼくも海外の選手相手に自分がどこまでやれるか試してみたかったのですが、去年のWUBSでは体調を崩してしまって万全な状態で出場できなくて悔しい思いをしました。今年もWUBSへの出場が決まったので、ぜひその悔しさを今年のWUBSで晴らしたいなと思っています」

信じれば必ず叶うことを学んだ彼らが語る今後の夢。

インカレでの2連覇、Bリーグでの活躍、世界の舞台への進出、そして日本代表。直近の目標から将来の夢まで、思いはそれぞれにある。しかしこれまでと違うのは、どれだけ難しいと思えたことでも、自分を信じて努力を続ければ、夢は必ず叶うことを実際に体験したこと。その彼らの口から語られる夢にはどこか確信めいた決意が覗いていた。

金近選手(2年)「今回のインカレで初めて『日本一』を経験できました。すごくうれしい瞬間だったので、来年も続けて経験できればと強く思っています。そのためにもまずはオフシーズンの期間にいい準備をすること。あとチームづくりの部分では上級生になるので自分のことだけじゃなくてチームのことも気にしながら、エースとしての自覚を持ってチームを引っ張っていきたいと考えています。また個人の目標としては日本代表選手になること。リクさんからも日本代表として2024パリ大会をめざしてほしいと言われているので、選考の機会がもしあればアピールしていきたいですし、選考に呼んでもらえるよう大学での試合でしっかりと活躍して、来シーズン1年間通していいプレーができたらなと思っています」

ハーパー選手(2年)「ぼくはまだあと2年あるので、3年生、4年生いずれのインカレでも優勝したいと思っています。卒業後はBリーグに進み、Bリーグのトップ選手になって、いずれ最終的には海外にも挑戦したい。自分の憧れの選手であるシェーン・ラーキン選手のようにユーロリーグで活躍できる選手になりたいですね。また同じ福岡第一高校出身で同じ東海大学の先輩でもある河村勇輝選手をいつか超えるバスケットプレーヤーになりたいと高校入学以来ずっとその目標を持ってやってきました。まだまだ超えられていないので、これからもっとレベルアップして勇輝さんを超えられるようがんばりたいです」

松崎選手(4年)「ぼくは卒業してBリーグの横浜ビー・コルセアーズに入団することが決まっているので、まずはチームメイトやスタッフ陣から信頼をしっかり得ること、そしてしっかりと結果を出すことを目標に取り組んでいきたいです。またバスケット選手である以上、日本代表をめざしてやらなきゃいけないと思っているので、そこの目標は忘れずにいたいですね。次のチームにはインカレ2連覇という目標があります。これはすごく難しいことで、去年のぼくらがそうだったし、今年の白鴎大学もそうだったけど、プレッシャーや背負うものが他のチームより大きくなるはず。そこで気負いすぎないで、今年のチームがそうだったようにまずは春のトーナメントやリーグ戦といったひとつひとつの試合のプロセスを大事にしてほしい。あまり先のことを見すぎるんではなくて、目の前の1試合1試合で「東海大学のバスケット」を出し切ること。それを目標に全力で戦ってほしいと思います」

黒川選手(3年)「新チームのキャプテンとして、やっぱりインカレ2連覇が目標になってきます。ただし、松崎さんもいってくれたように今シーズンいかにプロセスが大事かということが身に染みてよくわかったので、あまり意識はせず、結果はプロセスが良ければついてくるという気持ちで臨むつもりですし、泥臭く戦っていくだけだと思っているので、あまりプレッシャーは感じていません。そういう意味でも自分たちの年代では原点回帰の年と位置づけ、東海大学のアイデンティティである「ディフェンス・リバウンド・ルーズボール」を徹底したいと考えています」

春の花が咲く頃には早くも新人戦やトーナメントが控えている。目の前の結果に一喜一憂することなくプロセスを大事にしていこう。この誰もが当たり前のように口にする言葉も、彼らにとっては陳腐な慣用句ではなく、実体験に基づく真理なのだ。目標はインカレ2連覇、ただひとつ。すべてはそこへと続く道なのだ。そしてその道は昨年の大倉颯太、佐土原遼、八村阿蓮、河村勇輝を擁したスター軍団の敗退、その前年の世代のインカレ優勝、さらにはその前からつながる長い歴史のなかで受け継がれてきた道でもある。はたして2023シーズンの新チームが私たちにどんな景色を見せてくれるのか。そして一年後の彼らの成長と活躍を楽しみにしたい。