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Vol.62
大いなる河の、その向こうへ。
ジュニアからプロ、そして日本代表へ。拡大を続ける岡田大河のプレーフィールド

岡田大河
バスケットボール/ZENTRO BASKET MADRID

大いなる河の、その向こうへ。前編
2023/06/22

15歳で単身スペインに渡り、マドリードの名門チーム「Zentro Basket Madrid(セントロ・バスケット・マドリード)」のジュニアカテゴリ(カンテラ)で活躍したのち、わずか17歳でEBA 4部リーグでのプロデビューを果たした岡田大河選手。1年前に比べて身体もひとまわり大きくなり、プロとして1シーズンフルで出場したことで経験も重ねた彼は、いまや主力選手としてチームを勝利に導く役割を担うまでに成長した。
19歳にしてすでにスペインリーグでの活動もトータルでまる3年となり、風格さえ感じさせる彼にとって大きな飛躍となった2022-2023シーズンについて彼自身どんな評価をしているのか?あらためて振り返ってもらった。

プロとしての自覚と、やれるという自信が芽生えたシーズン。

昨年度はジュニアカテゴリでの試合と4部リーグでの試合との掛け持ち出場というかたちだったが、2022-2023シーズンからは晴れてEBA4部リーグに専念。すぐさま主軸として活躍すると、プレータイムも14分から28分に、平均得点も4.5ptから10.8ptへと倍増した。
ガードとしてコーチをはじめチームからの信頼も厚く、ヨーロッパやアフリカ出身の身体の大きい年上の選手たちに囲まれながらも、臆することなく結果を出してきた。当然、これまでに比べて今年はコーチに求められることも、より高いレベルのものになっていった。

岡田大河「去年まではゲームメイクに関する注文が多かったんですけど、今年はゲームメイクに加えてチームを勝たせるプレーをはっきりと求められるようになりました。たとえばシュートやアシストなどダイレクトに得点に絡むプレー。なかでも勝負どころで確実に得点を決めきる役割をコーチからは求められています。そこが去年までと大きく変わったところですね。実際、去年までは残りあと3分といった勝負どころの場面ではなかなかコートに立たせてもらえていませんでした。でも今シーズンは毎試合そういうところでも任されるようになりました。勝負どころでチームを勝たせる、フィニッシュを決めきる、そういう場面が増えてきた。そこがいちばんの変化であり、成長した部分だと思います」

もちろんガードの選手としてコミュニケーションやコート内における戦う姿勢など、そうした得点に絡まないところでのチームへの貢献は当然のこととして要求される。しかし、それはもはや今年の岡田大河選手にとっては「やってあたりまえ」というところまで来ていると自身でも感じていたという。実際のところ、彼がチームに貢献できている試合や、彼がやりたかったプレーができた試合では、彼自身のスタッツも上がっており、チームもしっかりと勝利を収めていたことは数字として明らかになっているのだ。もちろんより高いレベルのリーグでそれができるかについては今後の課題だ。しかし少なくとも彼が以前から掲げ、今後も掲げ続けるであろう『自分がチームを勝たせる選手になる』という目標は、ある程度いまのチームでは達成できたと感じられたシーズンだったと振り返ってくれた。

心・技・体ともにバランス良く、そして飛躍的に進歩した。

では具体的な技術面で成長した点はどこにあるのか?彼自身の分析によれば、パスのバリエーションが大幅に増えたことだという。

岡田大河「ピック・アンド・ロールのパスは、かなり自分でもよくなったと感じています。また、自分のチームのヘッドコーチがスペイン代表のコーチをやっていることもあって、スペイン代表のバスケと同じシステムでやっているんですけど、対戦相手によってどういうパスが効果的かなど、ゲームごとに研究して変えていくわけです。だからぼく自身が試合のたびにいろんなパスの仕方を練習で覚え、それを実際の試合でもトライして表現するということをどんどん繰り返していくことで、この1年でパスのバリエーションがかなり増えたことも大きく成長した部分だと思います」

もちろん身体もさらに大きくなった。スペインに来た15歳のときは身長167cm、体重55kgだったが、現在は174cm、体重66kgとなった。とりわけ、まだ10代で成長期ということもあって身長がかなり伸びた。それと同時に、身体の厚みがかなり増した印象だ。以前から課題だと語っていたフィジカルだが、週5回の練習日には練習後に必ず1時間ほどのウェイトトレーニングを欠かさずおこない、1年間みっちりと鍛え上げてきた。その成果は試合でいかんなく発揮されている。ジュニアカテゴリから上がったばかりの岡田大河選手が、日本人に比べて圧倒的に身体の大きなヨーロッパのプロ選手を相手にしても、今年は去年のように競り合いの場面で身体を当てられても倒されることがなくなったというのだ。

それでもまだ18歳。身体もメンタルもかなりハードな1年であったことは間違いないだろう。しかし彼は「疲れた(スペイン語で“estoy cansado”」という言葉を決して口にはしないよう自らを律しているのだという。その理由は、周囲に疲れているという事実を悟られたくないこと、さらには自分自身「疲れている」ことを認めるのがイヤだからなのだとか。そこで彼はいつも「エネルギーをたくさん消費した」などと言い換えたりするのだそうだ。身体的な疲労感を言葉として発してしまうことで、疲れをより強く意識してしまい、メンタルにまで負の影響をもたらすことを避けたいという、彼なりのマインドセットなのだろう。
そんな岡田大河選手の体調管理を、サン・クロレラはサポートしてきた。ふだんは1日一回、パンや卵を中心とした朝ごはんと一緒に毎朝サン・クロレラ・パウダーAを牛乳に混ぜて飲んでいるそうだが、試合後などとくに「エネルギーをたくさん消費した」と感じたときには、夜にも飲むようにしているという。じつは今回の取材のために来社した際、かつて彼に食事に関するアドバイスをさせていただいた管理栄養士に、あらためて現在の食事や栄養摂取に関するアドバイスを積極的に求めるなど、トップアスリートにふさわしい意識の高さを窺わせるひと幕もあった。つねに貪欲にも彼を成功に導いた秘訣のひとつであるだろう。

さらなる高みを見据え、動き始めた10代最後のシーズン。

心・技・体、いずれも昨年までと比べて大きく成長を遂げた2022-2023シーズンの岡田大河選手ではあったが、さらなる高みをめざす彼にとってもちろん課題もたくさん見つかった。たとえば毎試合ずっと好調をキープして良いパフォーマンスを続けるというのはやはりむずかしいこと。たとえばシーズン中、チームが5連敗したことがあった。そのときの心境について彼はこのように回想する。

岡田大河「5連敗したゲームのうち4試合が接戦だったんですけど、自分があの場面で一本決めていたら勝てたという試合が何試合かありました。また、なぜあそこで自分がシュートに打たずに周りの選手に任せてしまったんだろうというプレーもありました。そういうメンタルの部分ですね。自分が打てると思ったシュートは躊躇せず打つこと。そして打ったシュートは必ず決め切るということ。そういうマインドの強さが足りなかったと思います。たとえ周囲の人にちょっと強引だったと思われたとしても、そのシュートをしっかり決めさえすれば自分で打つという選択は正解だったということになる。それがプロの世界です。だからこそ、これからのぼくにとっては、確実に決め切る力が必要になると思っています」

また、岡田大河選手が所属するチームZentro Basket Madrid(セントロ・バスケット・マドリード)は、彼をはじめ若い選手が中心のチームでベテラン勢が少ない。ゆえに勝負どころで若さが出たり、気持ちの切り替えがうまくいかず思わぬ連敗が続いたりということがあったそうだ。そういうチームがうまく行ってないときにも、彼は年上ばかりのチームメートに対しても臆せず積極的にコミュニケーションをとり、彼が求める水準のプレーを要求してきた。フランクかつポジティブに話し合い、イメージの共有につとめた。
そのいっぽうで彼は、自分ひとりで練習する時間の大切さにも気付かされたという。その理由について彼はこう話す。

岡田大河「ある日、チーム状態のことで悩んでいて父に相談したら『けっきょくは自分だろ』って返されたんです。そのとおりだったので気持ちはスーッとしました。だから自分ひとりで練習する時間を多くとることによって、自分を見つめることにしたんです。なにがいけなかったのか?どうすればよかったのか?ひとりでボールと向き合うことで課題を見つけ、改善策を探っていく作業に集中できるからです。そこから迷いはなくなりました」

自分の放つ一本のシュートや一本のパスでゲームの流れを引き寄せ、チームに勢いをもたらす。逆に若いチームなので勢いにさえ乗れば、一気にいい結果につながっていくこともシーズンを通じて実感できた。18歳の若さで自身のプレーがチームの勝敗を左右すること、そしてその責任を負うことまでも託された岡田大河選手。結果がすべてのプロにおいて「チームを勝たせるプレー」を求められ続けてきた今シーズン、彼自身は「まだまだ足りない部分があった」と反省するが、これだけの成長と飛躍を遂げたシーズンでさえ「足りない」と感じているという事実こそが、彼がその重責をきちんと果たしてきたことの証左であるといっていいのではないだろうか。