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Vol.65
石の上にも、五年。
バスケットボールキャリアの大きな転換期とこれからの自分

渡邊雄太
プロバスケットボールプレーヤー

石の上にも、五年。 後編
2023/08/25

ブルックリン・ネッツで飛躍のシーズンを過ごし、今オフにNBA6年目にして初の完全保証付き複数年契約を勝ち取った渡邊雄太。後編はコンディショニングや日本バスケへの思い、そして10月に始まるNBAの新しいシーズンに向けた思いを語ってもらった。

コンディションをコントロールしながら迎える代表戦と開幕戦

昨季所属したブルックリン・ネッツでは過去最多となる58試合に出場し、16分出場、5.6得点、2.4リバウンドというアベレージスタッツを残した。シーズン中には何度かケガによる欠場があったものの、長期離脱せずにコートに立ち続けられたことは、昨シーズン渡邊が素晴らしい活躍を挙げた大きな要因の1つと言えるだろう。

206センチ98キロというNBAではかなりスレンダーな体型で、常に足を動かしてマークマンに張り付き、ブルドーザーのような勢いで突進してくる選手たちを、体を張って止める――。身体的消耗の大きさは計り知れない。

ましてや、ここ数年の渡邊は日本代表の大エースとして国際大会をフルスロットルで戦わなければならない立場であり、NBAに帰ってくればトレーニングキャンプの段階からベストパフォーマンスを見せ続けないと解雇される立場。いうなれば満足な休憩をとらずにマラソンしているような状態を何年も続けてきたのだ。

渡邊は、このようなハードな日々の伴走者としてサン・クロレラを挙げた。

「トロント・ラプターズでプレーしていた2020-21シーズンから専属のシェフと契約して、栄養管理には力を入れるようにしているんですが、シーズン中、特に遠征中は食事の選択肢が限られますし、栄養が偏りがちです。そういった状況でもサン・クロレラを持ち歩いていれば不足しがちな栄養を補える。すごく助けられていますね。サン・クロレラの製品は朝でも夜でも好きなタイミングで飲めるものですが、僕は夜寝る前にサン・クロレラAパウダーを水に溶かして飲むことをルーティンにしています」

今オフ、渡邊はサンズと2年契約を結び、10月から始まる2023-24シーズンの開幕のロスター入りがすでに保証されている。やると決めたことには手が抜けない性格の渡邊にとって、この契約はコンディション維持という点でも非常に大きな助けとなりそうだ。

「開幕時にチームに残るためには、まず9月末に行われるトレーニングキャンプにピークを持って行かないといけないですし、そこにピーク持っていくためにはもっと早い段階から準備をしなければいけません。そして開幕を迎えたあとも、そのピークをずっと維持した状態でシーズンを突っ走らないといけない。正直かなり大変でした。もちろん今年も、まったくコンディションができていない状況でキャンプに入るなんてことはないですけど、ある程度開幕に合わせたコントロールをしながら迎えられるんじゃないかと思います」

7月末からは日本代表に合流し、沖縄で開催される国際大会に向けた活動に参加しているが、ここでも本番までは無理はしないつもりでいる。一昨年、代表活動で負った故障のためプレシーズンゲームにほとんど出場できず、開幕後も約1か月にわたって戦線離脱した反省を活かす所存だ。

「僕の性格上、コートにいるのにセーブするということができないので、今年は本番前の親善試合の出場を制限させてもらうことにしました。大事なのは8月25日からの本番なので、そこでベストパフォーマンスを発揮させてもらえればと思っています。本番は会場に来られないというお客さんがいることは承知しているので申し訳ないとは思いますけど、他にも注目する選手がいっぱいいますからね(笑)」

ピーキングに少し余裕ができたとはいえ、多くの選手が休養をとりじっくりと体作りに取り組んでいる最中にハードな国際大会を戦うことは、コンディショニングという観点ではタフな挑戦になる。渡邊も「そこの兼ね合いは正直難しい」と話し、言葉を続けた。

「本来だったらシーズンに合わせて体重やコンディションを整えるものを、8月25日に合わせて一度上げることになります。なので、今年の夏はいかにいい体重をキープしながら戦うかがカギになると思いますね。僕は体重を増やすことがすべてだとは思っていなくて、体のキレや強さを含めたバランスが大事だと思っていますが、来シーズンはもう少し体重を増やしてもいいかなと考えているので。今年の日本は異常なくらい暑いですし、沖縄はさらに暑いと思うので、なるべく外に出ず涼しいところで過ごしながら、サン・クロレラAパウダーを飲んでコンディション維持につとめようと思います」

今夏の国際大会は、来年パリで開催される国際大会の出場権をかけた重要な大会となる。渡邊はメディアの取材に対して「連敗するようなことがあれば代表のユニフォームを脱ぐつもりでいる」という強い言葉を使い、リーダーとしてチームを高みへと連れて行く決意を述べた。

いつでも『好きだからバスケをやっている』という気持ちを軸に

7月の上旬に帰国してから、代表に合流するまでの3週間ほどの間に、渡邊はいくつかの社会貢献活動を行った。1つは自身が主催する高校生対象のクリニック。1つはNBAが主催する中学生対象のクリニックのゲスト出演。そして長期療養中のこどもたちの激励訪問だ。中でも「念願だった」という自身主催のクリニックについては、7時間にもおよぶ長丁場だったにもかかわらず報道陣に「まだ物足りない」とコメントしていた。

「シーズン中にもNBAやチームの規定でコミュニティに対する貢献活動をいくつか行うのですが、オフシーズンにチームの縛りがないところでそれを行うのは、自分にとっても大切なことというか、自分にしかできない経験だと思っています。今は日本人NBA選手が僕と塁(八村塁)しかいないですし、だからこそ自分しか伝えられないこともあると思います。何より日本の子どもたちには自分が日本にいる時にしかそういう機会を与えてあげられないので、時間が許す限り何かをしてあげたいと思っています」

ちなみにこのインタビューを行う直前には、サン・クロレラが取り組むバスケ選手の育成プログラム『GLO BALLERSプロジェクト』初の奨学生としてアメリカの高校に渡る新郷礼音と渡邊の対談が行われた。渡邊は初対面の新郷を「礼音」と気さくに呼び、故郷である香川の柔らかい言葉で一つひとつの質問にていねいに答えていた。

NBAでの激しい戦いぶりも、日本代表にかける強い思いも、子どもたちに向ける優しい眼差しも。我々は渡邊雄太の一挙手一投足に大きく引き付けられ、その背中により多くの期待や希望を乗せたくなるが、渡邊はそのような周囲の思いを重荷に感じることはないのだろうか。いつか、聞いてみたかったことだった。

「バスケに関しては『誰かのため』でなく『自分が好きだから』やっているというのが大前提です。もちろん、日本代表としてプレーしている以上は、しっかりと日本を背負わないといけないと思っていますし、応援してもらうこともうれしいですけど、自分が好きでバスケをやっているんだということを忘れないようにというのは一番考えています。それに、僕は実はまわりの声をあまり気にしないタイプなんです。期待を寄せられすぎてパフォーマンスが落ちるということはないと思うので、ぜひ、みなさんがお好きなように見てもらえればと思います」

渡邊はそう言って、さらりと笑った。

自分はまだまだ成長できる。

「まず一番大事なのはケガをしないこと。まずはケガなくこの1シーズン乗り越えることができたら、また自分もステップアップできると思うので。日本代表をパリに連れて行く、NBAで優勝するという大きな目標を考えながら戦う次のシーズンは本当に長い1年になると思うので、体調管理を徹底しながら戦いたいと思います」

夏からシーズンが開幕する10月までの青写真をこのように描く渡邊は、前編で本人が話したように”NBAプレーヤー”としてのスタートラインに立ったばかり。大きな手応えを得た昨シーズンも、ケビン・デュラントとカイリー・アービングがチームを去ったあとに痛感したことがあるという。

「やっぱりまだ自分はチームメイトに依存すると言いますか。それこそ、シーズン開始当初はKDやカイリーにディフェンスが集まったから自分が生きたところがあったんですけど、彼らがトレードされた後は出番も少なかったですし、出てもいい活躍ができない試合もありました。あのとき自分にもっと実力があれば、トレードが起きようが何が起きようが試合に出続けられたと思いましたし、どういう状況でも試合に出られるような力をつけたいと思いました」
6年目、7年目の契約が保証されているとは言え、それがプレータイムに直結するものではないということも理解している。

「サンズはこのオフでいい補強をしましたし、僕くらいのキャリアの選手をたくさんとっているので、ポジション争いやミニッツ争いはめちゃくちゃ熾烈になると思います。だから、まずはそこで負けないようにしないといけないと思います。自分はまだまだ成長できると思っていますし、もっともっと長い間NBAでやりたいので、今シーズンもまた成長した姿っていうのを見せれたらなと思います」

思えば、身長が伸びるのも、バスケの実力が認められるのも人より遅かった。開幕直前の10月13日に29歳を迎える”オールドルーキー”は、たくさんの伸びしろをはためかせながらさらなる境地へと進んでいく。