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Vol.78
革新がもたらした「オールA」。
京都橘史上初の「オールAでの金賞」を成し遂げ、オレンジの悪魔を新しい領域へと導いた121期の挑戦。

京都橘高校吹奏楽部

京都橘史上初の「オールAでの金賞」を成し遂げ、オレンジの悪魔を新しい領域へと導いた121期の挑戦。後編
2025/03/17

新チーム開始以降、これまでにないさまざまな新しいチャレンジを果敢に続け、全国マーチングコンテスト4年連続金賞受賞はもちろん、京都橘高校史上初の「オールAでの金賞」という快挙を成し遂げた121期のメンバーたち。たしかな手応えを携えて、憧れ続けた夢の舞台・アメリカロサンゼルスでのローズパレードに7年ぶりの出演を果たした。
これまで日本では経験したことのなかったお客さんとのコミュニケーションや、音楽を通じた新たなインスピレーションによって、あらためて音楽の楽しさを経験して帰国の途についた彼女たち。

そこで後編では、ローズパレードで受けた驚きと感銘、121期として最後の演奏会となる3月の定期演奏会への意気込み、そして将来の夢などについて語ってもらった。

7年ぶりのローズパレードであらためて感じた音楽の素晴らしさ。

いまから13年前の2012年、アメリカ西海岸ロサンゼルスで行われているローズパレードに京都橘高校吹奏楽部が初めて出演。そのときの模様がYouTubeで話題となり、「オレンジの悪魔」の異名とともに京都橘高校吹奏楽部が世界的な有名バンドへと躍進することとなったきっかけが、このローズパレードでの演奏とマーチングだったといっても過言ではないだろう。2018年には2度目のローズパレード出演を果たし、今回は7年ぶり3度目の出演となった。

熊谷さん「まずお客さんの多さに圧倒されました。しかもお客さんとの距離もすごく近くて、わたしの立ち位置は列の端っこだったので、すぐ横にお客さんがいて、曲を吹いていないときはハイタッチができたりもする距離。これまでは自分たちがパフォーマンスを披露してお客さんは遠くでそれを見ているという感覚だったのですが、ローズパレードではお客さんと一緒に音楽をしている感覚があってそこがいちばん違うなと感じました」

藤原さん「日本とは違う楽しさがありました。わたしたちの演奏に合わせてみんなが一緒に歌ったり踊ったり、掛け声を掛け合ったりしていました。じつはパレードの前は、英語が喋れないので不安もあったんですけど、音楽を通して一緒に楽しむことができて、あらためて音楽っていいなって思えました」

高濱さん「ローズパレードは全体で9km、時間にして約2時間半の長丁場。これまで日本ではそんなに長い時間の演奏をやったことがなかったので、体力が持つかなあと心配していたのですが、お客さんの歓声がすごかったのと、みんながわたしたちの演奏を楽しんでくれているのが見ていてわかったので、わたしもすごく楽しくて、気づいたらあっという間に終わってしまっていました」

鎌田さん「わたしはドラムメジャーとして、パレードの先頭のしかもセンターを歩かせてもらいました。みんなが言うように、お客さん自身が盛り上がってくれているのがわかりました。だからあんなに演奏を楽しめたのは後にも先にも初めてだったと思います。今回はOG・OBとなんと7世代が揃って出演させていただいたのですけど、それも初めての経験ですごく楽しかったです。本当にこれまでの人生のなかでもトップレベルの幸せな時間でした」

大山さん「わたしは2018年のローズパレードをYouTubeなどの動画で見て、それに憧れて京都橘高校吹奏楽部に入りました。だから、まさか実際に自分がそのメンバーとして出られると思っていませんでしたし、そのぶんものすごく感激しました。事前に先生方とも『日本ではできないことをやろう』と話していたので、曲の間にハイタッチしたりして、ローズパレードならではの体験をいっぱいできてよかったです」

ハプニングもあった。演奏する曲順は決まっておらず、その時々でコーチがハンドサインで指示し、そのハンドサインを打楽器パートが見てイントロを演奏することで、みんなが次に演奏する曲を認識するというスタイルだった。ところがある曲の際に打楽器のメンバー間で認識にばらつきがあり、同時に2曲のイントロ演奏が始まってしまった。一瞬バンドは混乱したものの、すぐに打楽器が機転を効かし、イントロを統一させたことでことなきを得た。逆にそうしたミスを瞬時の判断で挽回するところも、このチームの良さだと部長の熊谷さんは語る。

映像で見ていた憧れのローズパレードに自分たちが出演し、日本だけではなく世界中にファンがいることをあらためて実感した121期のメンバーたち。うれしい気持ちと同時に、高い注目度と期待に応える演奏をしないといけないという責任も感じていたという。応援されているという気持ちが、より質の高いパフォーマンスをめざそうという意識にもつながっているのだ。

121期のラストステージと、122期の幕開けに向けた思い。

ローズパレードの余韻を噛み締めながらも、本番が多い京都橘高校吹奏楽部は、すでに次のステージの準備に取り掛かっていた。3年生の集大成であり121期の最後の演奏会となる3月の定期演奏会だ。彼女たちは口を揃えて「わざわざ足を運んで演奏を聴きに来てくださったすべての人に、歴代でもいちばんの演奏会だったと褒めていただけるような最高の演奏会にしたいと思っている」と語ってくれた。

鎌田さん「とにかく聴いてくださる人が楽しんでいただける演奏にしたいという思いで、プログラム構成も含めて、いま必死で取り組んでいます。と同時に、自分たちの引退演奏会でもあり、このメンバーでの最後の演奏になるので。笑顔で終われるようにがんばりたいです。会の最後はひとりひとり名前を呼ばれてホールから退場していくんですけど、その瞬間に誰よりも笑っていたいと思っています」

熊谷さん「今年はローズパレードをはじめ世界中の人々から注目されていることを肌で感じる一年でした。いっぽうでこの定期演奏会は、なによりわたしたちの演奏会。もともとわたしたちを知っていて、私たちの演奏だけを聴きにきてくださる方に向けて演奏するのでやっぱりこのバンドは特別だなと思ってもらえるような、多くの人に感動を届けられるような、そんな定期演奏会にしたいと思っています」

藤原さん「熊谷も話していたように、京都橘高校吹奏楽部の演奏だけを聴くために来ていただける演奏会でもあるので、やっぱり聴きに来てよかったなと思えるような演奏、プログラム構成を、いま幹部で考え、話し合っているところです。今年はたくさんの結果を残しているぶん、最後もしっかりいいものを作り上げて終わりたいです」

高濱さん「定期演奏会は一年の集大成であり3年生にとっては3年間の集大成。だからわたしたちの演奏を聴きにきてくれた人が、京都橘とか吹奏楽ということだけでなく、『音楽は素晴らしい』と思って帰ってもらえるような、そんな演奏ができたらいいなと思っています」

大山さん「わたしにとっては3年生の先輩方と演奏できる最後の舞台。それが近づいてくるのは寂しいですけど、先輩たちが笑顔で卒業できるよう、自分たちがしっかりした演奏をしないといけないし、先輩たちが後輩に任せて大丈夫だと安心してもらえるような演奏会にしないといけないと思っています」

すでにチームは次のステージへと動きはじめている。次なる122期の部長として大山さんが選出された。選出方式は例年とは違うやりかたを新たに採用した。幹部5人のうち学年指揮とドラムメジャーは顧問の教師による任命で、部長と副部長は全部員の投票で決められることになったという。こうした選出プロセスの変更も、彼女たち自身のアイデアであり、これも改革のひとつだった。

大山さん「ひとりずつ投票して、結果をみんなの前で開票する形式だったんですけど、票が増えていくたびに、部長になることの責任とプレッシャーをヒシヒシと感じはじめていました。部長に決まった直後にみんなの前で話す機会があって、みんなの顔を見たときに、これだけの人がわたしに票を投じてくれたのだから、来年度は自分がしっかりやっていかないといけないという自覚が湧きました。今年のチームが多くのチャレンジをして、それを先輩方が引っ張ってくれた。だから自分たちの学年も先輩に負けないくらいエネルギーを持って挑戦を続けていきたい。人数も多くて個性も強い学年なので、きっと大丈夫だと思っています(笑)」

熊谷さん「わたしから見た大山は、冷静に周りを俯瞰して見ることができる人物でした。すべてを伝えなくても瞬時に察知して、そのときどきに必要なことを理解して、自分から動ける。だからわたしのなかではかなり早い段階で、彼女が時期部長にふさわしいと感じていました」

鎌田さん「わたしは去年まで彼女とマーチングで同じクラリネット担当だったこともあって、1年生の時から一人ずば抜けてしっかりしていて、すでに部長のオーラを昔から感じていました」

大山さん「今年マーチングコンテストで4年連続金賞という結果を達成して、来年度は5年連続がかかっています。先輩方がこれまで作ってくれた記録を自分たちの代で途絶えさせてはならないという思いはやはり強く持っています。座奏でも昨年初めて関西大会に出場することができましたし、マーチングだけではない京都橘というのは自分が1年生の頃から先輩方がずっと掲げてこられたことでもあったので、どちらのパフォーマンスでも感動や勇気や笑顔を届けられるよう頑張っていきたいです」

今年度に取り組んだ挑戦をさらに高め、さらに新しいチャレンジにも意欲を示す新部長の大山さん。マーチングと座奏とで違う楽器を担当する異端な存在である彼女が部長を担うことは、ある意味で新チームにとって象徴的なことなのかもしれない。次なる122期が、きっとまた新しい時代への扉を開けてくれることだろう。

5人それぞれが描く夢と、未来の後輩たちへのメッセージ。

鎌田さん「わたしは去年キャビンアテンダントになりたいと答えていましたが、いまも英語を使った仕事をしたいという思いに変わりはなく、英語を学べる大学に進学することが決まっています。台湾やアメリカに行った経験から外国の人とのコミュニケーションをする機会が多く、英語を中心に学んで言葉でも他国の人とのコミュニケーションをして職業に活かせたらなと思っています」

熊谷さん「去年わたしは弁護士と答えていたと思うんですけど、じつは進学する大学が理系なので、学びたいことと将来の夢が一致していないのが悩みどころ。投資やマネジメントにも興味があるのですが、いずれにしても将来は人を助ける仕事をしたいと思っています」

藤原さん「自分は誰かを支える役割が向いていると思っていて、副部長といういわば部長をサポートする役割が自分には向いていたなと思っています。だから具体的な職種まではまだイメージできていないのですけど、人を支える仕事に就けたらいいなと思っています」

高濱さん「わたしは音楽教師になりたいと思っています。この3年間、音楽を通していろんな人に出会い、音楽の素晴らしさを学ぶ機会も多くありました。その出会いを通じて学んだことを自分のなかだけにとどめるのではなく、より多くの人に伝えていきたいと思っています」

大山さん「わたしも教師志望です。わたしは国語の先生です。部活で大会に行く際に先生方が遠征先へのバスの手配など、裏方の仕事でたくさんサポートしてくださったり、ふだんの授業をされている姿を見ていて、自分もああいう先生になりたいと思ったからです」

それぞれが、次なるステージへとその歩みを進めようとしている5人。彼女たちもまた、かつてはローズパレードやさまざまな演奏会での映像を見たり、実際に演奏を耳にしたことで憧れを抱き、この京都橘高校吹奏楽部にやってきた少女たちのひとりだった。そして同じようにいま、彼女たちの演奏に憧れ、いずれそのレガシーを受け継いでいくであろう、まだ見ぬ後輩たちに向けて、メッセージをお願いした。

ドラムメジャーの鎌田さんは「ここでしかできない経験がたくさんあって、本当に3年間、音楽を通して楽しい青春を過ごせた」といい、まだまだ卒業したくないとも語ってくれた。藤原さんは「多くの大会に出られることで、高校生活1日1日の密度や充実度、目的意識も高くなる」と部活の意義を語り、大学でも音楽を続ける高濱さんは「音楽の魅力を感じることができた3年間だった」と感慨深げに振り返った。次の部長となる大山さんは「全国あちこちに出かけていくので、人との関わりが多く、コミュニケーション能力を高めることにもつながっている」と期待に胸を膨らませていた。そして最後に部長の熊谷さんは「遠征が多く、毎日が修学旅行というかバンドのツアーみたいだった。世界からの注目度も高く、ふつうの高校生ではできない貴重な経験ができる場所」と京都橘高校吹奏楽部の魅力をひとことで語ってくれた。

ここ数年でもっとも人数が多く、とても個性の強い学年だと大山さん自身が語っていた新3年生が中心となる第122期は、すでにそのステージの幕を静かに上げている。挑戦を掲げ、さまざまな改革とあらたな取り組みでオールAでの金賞という史上初の快挙を成し遂げた京都橘高校吹奏楽部。来期はどんなチャレンジと、どんな史上初を見せてくれるのだろう。祝宴で奏でられるファンファーレのように、華やかで軽やかな彼女たちのパフォーマンスが、いまから待ち遠しい。