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Vol.88
「今までとは見える景色が違う」
常勝軍団サントリーサンバーズ大阪で主将就任、バレーボール界で「唯一無二」の存在を目指して

髙橋藍
バレーボールプレーヤー

常勝軍団サントリーサンバーズ大阪で主将就任、バレーボール界で「唯一無二」の存在を目指して 前編
2026/05/29

18歳で日本代表に初選出されて以後、現役大学生としてイタリアリーグ挑戦を果たし、東京、パリと二度の五輪で日本代表の主軸を担った髙橋藍。24歳になった今季は肉体改造に励み、より高いレベルのパフォーマンスを求め、約7カ月に及ぶSVリーグの試合を戦い続けてきた。“浮遊感”を求め、食事の徹底管理とトレーニング、身体の声に耳を傾け理想通りの肉体を手に入れた髙橋は「確実にパフォーマンスが上がった」と手応えを示す。前後編のインタビュー、前編では肉体改造のきっかけと具体的な方法、アスリートにおける栄養補給の大切さを自らの体験に重ねながら語ってくれた。

体重と体脂肪を落として「キレ」を求めたシーズン

SVリーグのレギュラーラウンドは44試合。チャンピオンシップのラスト、優勝を決めるファイナルまで含めれば50試合近くを10月から5月までの約7カ月という長い期間をかけて戦い続ける。心身ともにタフでなければ乗り切れない、実に過酷な日々を過ごしているのだが、間もなく終盤、連覇がかかるチャンピオンシップを目前に控えても、髙橋藍は疲労を滲ませることなく、むしろ「狙い通り」とばかりに、好調さをアピールした。

「今シーズンは結構自分の中できっちりと、食事やコンディショニングというところを意識しながら取り組んできました。その成果をかなり感じているし、まだまだ上がっていける手ごたえもある。今までと比べても、だいぶ、いい感じですね」

今季、髙橋藍は“肉体改造”に着手していた。これまでも身体に対する意識は十分高かったが、自身が求めるより高いパフォーマンスを発揮すべく、特に重視してきたのが「体脂肪」だという。きっかけは、昨シーズンの日本代表期間中に生じた違和感だった。

「薩摩川内合宿の時に、なんとなく自分のパフォーマンスにキレがないな、と。特にジャンプの浮遊感が感じられなくて、そのままネーションズリーグに入ってしまって、なかなか状態が上がらなかった。どうしたら改善できるのかトレーナーさんと話をした時に『体重と体脂肪を落として筋力をつけたらキレが出る』と言われたので、じゃあやってみよう、と思って。栄養士さんにもいろいろとアドバイスをしてもらいながら食事の管理をして、一番ベストな体脂肪を見つけて行こうというところからスタートしました」

食生活を支えた“せいろ蒸し”

その時点での体重は83~84kgで、体脂肪率は12%後半。バレーボール選手としてはむしろ理想的にも見えるが、連戦が続くとむしろ身体を大きくするどころか体重が減らないようにキープしなければならない。試合期には特に「痩せやすい」という髙橋は、食事の質には意識しながらもまずは食べて身体に蓄えることのほうを意識していた。体重を落とす、体脂肪を減らすと言っても落としすぎてガス欠になってしまっては意味がない。質の良さは保つだけでなくさらに向上して、体重と体脂肪を落とすために、摂取する食材も意識的に変えた。

「炭水化物とたんぱく質は今までも意識しながらかなりの量を摂ってきましたが、ただ摂っているだけでそこまで質にこだわっていなかった。お肉を食べる時も鶏、豚、牛、脂っぽい部位を摂ることもあったんですけど、食事を変えてからはほぼ鶏むね肉です。あとは魚ですね。肉よりも魚のほうが良質なたんぱく質が摂れると教えてもらったので、炭水化物の量を減らして、良質のたんぱく質を摂るようにしました。炭水化物といってもご飯やパンだけではなく、実はフルーツにも糖質が含まれているのでそこもちゃんと意識したし、米や麺類を減らす分豆類を増やしたり。かなり細かくやってきました」

身体のため、とはいえ食事制限はストレスにもなりかねない。一見すると大変なようにも感じられるが、自炊中心の生活を過ごす髙橋にとって強い味方となったのが、“せいろ”だ。

「せいろ蒸しにハマりました。鶏のむね肉やササミを入れて、いろんな野菜を入れて蒸す。それだけで食材もいろいろ摂れるし、何よりおいしい。しかもヘルシー。僕は基本的に好き嫌いもないので、いろんな種類のせいろ蒸しを試して食べました。これはアスリートだけじゃなく、ほんとにオススメですよ(笑)」

おいしくてヘルシー、かつ栄養も摂れて理想の身体に近づける。流行りのせいろ蒸しが、“藍効果”でさらに人気を呼び込みそうだ。

身体が変わり、最も変化が生じたのは「サーブ」

アスリートとして高みを求めるべく、徹底した食事管理の成果は身体の変化、そしてパフォーマンスの向上にもつながった。体重は79~80kg、体脂肪率は9.3~9.5まで落ち、本来の“浮遊感”を取り戻した、と髙橋は語る。

「明らかに跳べているな、と感じます。空中にいる時間が長いからブロックを見て打ち分けができるし、力の入り方、スピード感やインパクトも違う。一機に発揮する瞬発的な力の度合いも今までより増したのを実感しています」

感覚だけでなく、数字も証明している。SVリーグの選手別ランキングでは、スパイク決定率やサーブ効果率で上位ににつける。「安定感がありつつ、出力は高くすることが目標」というように、身軽でもパワーアップした身体で高く跳び、髙橋の言う“浮遊感”を得られることで攻撃時に見える景色も変わった。

「滞空時間が長くなれば、ブロックが完成する前に打てるし、逆にブロックを上で見てからどこに打とうかを考えることもできる。ジャンプだけでなく、身体がシャープになったのでスイングも速くなった感覚があって、スパイクヒットの瞬間、インパクトで伝わる力の感覚も違う。実際に数字でも示せていると思いますね」

すべてのプレーで高いレベルのパフォーマンスを発揮し続けているのが、髙橋本人が「一番わかりやすく効果が出ている」というのがサーブだ。相手からエースを奪う、レシーブを乱して自チームのチャンスにつなげる。髙橋のサーブが連続得点のきっかけとなる試合も多い。

「サーブのキレや安定感も違うし、攻めるところは攻められているので、ショートサーブも効果が生まれる。自分の中でもサーブは武器だと今は自信を持って言えます」

身体の変化に加え、実は髙橋のサーブ効果率アップに多大な貢献をしている選手もいる。日本代表でも共にプレーをするリベロの小川智大だ。サーブを打つ直前に小川がかける「声」がサーブの効果をあげる大きなポイントだと髙橋が明かす。

「今シーズンからルールが変わって、リベロがスイッチできるようになった。そういう時に小川さんが『スイッチした!』と言ってくれるんです。選手によっては、サーブに集中したいから打つ直前に声をかけないでほしいという人もいますけど、僕は言ってもらえたほうが助かる。リベロのスイッチだけじゃなく、オポジットが入ることも多いので、そういう時も小川さんから教えてもらう。この間の試合は宮浦(健人)さんもレセプションに入っていたので、遠慮なく狙ってサービスエースを取らせていただきました(笑)」

頼もしい味方。コート上に小川がいるように、髙橋を支える相棒とも言うべき存在が、サンクロレラだ。肉体改造に取り組んだ今季、意識して食材や調理法を選んで食事をする中で、不足する栄養素がないように、朝昼晩はサン・クロレラパウダーをヨーグルトに混ぜて食べるのが日常だったと語る。

「サン・クロレラパウダーをかけたヨーグルトにハチミツを入れたり、いろいろ工夫してアレンジするのも楽しいし、おいしく栄養が摂れるのは本当にありがたい。プロ選手として、さまざまな方々の応援やサポートにいつもありがたいな、と感謝していますが、サン・クロレラさんは僕が学生の、まだ何もない頃から支援して下さった。改めて、本当にありがたい存在だし、体脂肪を減らす、体重を減らしてパフォーマンスを上げると決めて取り組んできた今シーズンも、なくてはならないものでした」